植物の病気と防除

掲載日:2018年2月28日

病気というのは健康の対語ですが、農業における作物の病害とは一般的に経済的に被害の出る植物の障害を指しています。障害についても大きく伝染性の障害と非伝染性の障害に分けられます。伝染性の障害の原因は他種生物(ほとんどが微生物)の寄生によって起こります。非伝染性の障害は植物を取り巻く物理化学的な環境条件(養分欠乏、大気汚染、土壌理化学性の不適、農薬の薬害など)によって起こる生理障害です。ここで説明し対象とする植物の病気は伝染性の病原微生物が原因となるものです。

病原微生物の寄生によって起こるといっても、植物に病原体(主因)がつけば必ず病気になるとは限りません、植物のもともとの素性や状態(素因)と気象その他の環境条件(誘因)がそろってはじめて成立します。

主因、素因、誘因の3つがそろって病気は起こり、これらの相互作用によって病気の程度も決まってきます。病気を防ぐためには、逆にこの3つの事柄がそろわない努力をすればよいことになります。

ここでは植物の病気について、上記の3つの要因とその相互関係などを解説する概論と当センター生産環境部の「病害虫研究課」で取り組んでいる病気の防除試験や研究について紹介します。


植物病原体の種類

ア)ウイルス・ウイロイド

核酸とそれを取りまく外皮蛋白質よりなる単純な構造をしている(ウイロイドはさらに単純で小さな核酸だけからなる)生きた細胞の中でしか増殖できない。症状としては葉のモザイク、全体の萎縮、壊死、黄化など。重要な病害も多く、直接有効な農薬がないので予防が重要である。

病害:キュウリモザイク病(CMV)・トマト黄化えそ病(TSWV)など

トマト黄化えそ病によるえそ果実

イ)ファイトプラズマ

細菌より小型で植物の維管束などで繁殖する。症状は一般的には萎縮叢生症状を呈する。病害の種類は多くなく、すべて虫によって媒介される。

病害:クワ萎縮病・マメ類てんぐ巣病など

ウ)細菌(バクテリア)

一般に1個の細胞からなる単細胞微生物、植物病原菌はほとんどが桿菌に属する、植物の水孔、気孔、傷などから侵入する。症状は萎凋、軟腐、斑点、肥大・奇形など。

病害:キュウリ斑点細菌病・トマト青枯病・ダイコン軟腐病・バラ根頭がんしゅ病など

エ)菌類(変形菌・真菌類=糸状菌)

俗にかびと呼ばれる生物で、細菌やウイルスで起こる病気より圧倒的に多い、植物病害の約七~八割が糸状菌病である。大きく変形菌類と真菌類に分けられる。病原菌のほとんどは真菌類に属し、真菌類は鞭毛菌類、接合菌類、子のう菌類、担子菌類、不完全菌などに分類される。症状は多岐にわたり、苗立枯、萎凋、徒長、斑点、落葉、壊死など。また、病原体自身が認められるものもあり、植物を覆うように菌糸・菌糸束が見られたり、菌糸が絡みあって塊状になった菌核や胞子が密生している部分は粉状物のように認められる。

病害:イネいもち病・イネ紋枯病・ネギさび病・キュウリうどんこ病・イチゴ炭疸病・ハクサイべと病・トマト灰色かび病など多数


診断・同定と発生予察

ア)診断・同定

発生し問題となる病害を防除するためにはその原因を解明する必要があります。原因となる病気の診断と病原の同定を迅速・正確に行い、その発生生態を明らかにすることにより、効果的な防除が可能になります。

当班では県内に発生し問題となる、その原因病原のはっきりしない病気や突発的に発生した新病害などを診断・同定し、適切な防除対策についてアドバイスしています。

トマト青枯病の診断、茎を切って水につけるとバアクテリアにより白く濁る

イ)発生予察

野外で病害の発生状況を定期的に調査することにより、対象とする病害の発生時期・発生量を予察できます。それには作物の調査株、さらに調査枝・葉を特定して病害の発生データを記録など、基礎データの集蓄が不可欠です。これに気象データや過去の事例、病害各種の発生生態と発生に関与するプラスあるいはマイナス要因などを総合的に検討することで、これが可能になるのです。

該当病害虫が、どのくらい発生したら防除が必要か(それ以下の発生量なら作物の質と収穫量に影響を及ぼさない?)これを「要防除水準」あるいは「経済的被害許容水準」といいますが、これを策定することで効率的な防除が可能になり、農薬の過剰使用も回避できます。

定期的には病害と虫害の発生予察を病害虫防除所が主に行っており情報を皆さんに提供しています。また、新たな予察法の開発や改善、新病害に対する予察技術の開発などを行っています。


病気の発生要因
植物病原体の伝染方法

ア)風媒伝染

多くの地上部の病害(特に真菌類病)の伝染方法である。糸状菌の伝染源は胞子であり風により飛散する。

防除対策としては現在化学農薬の散布による防除が主に行われている。病気にかかりづらい環境や病気に強い作物をつくることなどの対策が必要。(ナシ赤星病、キュウリうどんこ病、イネいもち病など)

イ)種子伝染

種子が病気を保毒していて、病気を起こす場合。防除対策としては種子消毒があるが、廃液処理などの問題もあり温湯消毒などの方法が必要。(イネばか苗病、インゲンモザイク病など)

ウ)虫媒伝染

ウイルス病の多くはアブラムシ類、ヨコバイ類、アザミウマ類などの昆虫が媒介する。

ウイルス病は直接効果のある農薬がないので媒介する虫を駆除することで防除対策が行われている。(トマト黄化えそウイルス、イネ萎縮ウイルスなど)

トマト黄化えそ病を媒介するミカンキイロアザミウマ

エ)水媒伝染

水を媒体として伝染する場合。鞭毛菌類や細菌類が多い。鞭毛菌類は遊走子のより自力で水中を移動する。風雨などで傷つき水をかいして伝染する病害が多い。(トマト疫病、イネ紋枯病、シバピシウム病など)

オ)土壌伝染

土壌中にある病原体で病気がおこる場合。(トマト萎ちょう病、ナス青枯病、果樹類紋羽病など)


植物病原体の発生環境

ア)温度

病気の発生を大きく左右する。温度要因は病原菌の活動温度と宿主植物の抵抗力に影響するため両者の兼ね合いで病害発生の適温が決定する。(イネいもち病は生育適温は28~30℃であるが病気の発生適温はイネのいもち病に対する抵抗力が低下する25℃以下である)

イ)湿度

湿度は植物の抵抗力に影響が少ないが、病原菌は湿度に大きく影響受けるものが多くほとんどの病害は高湿度で発病しやすい。

ウ)日照

一般的には日照が多い条件下では植物は健全に育ち、病気に罹りにくいが、日照不足は植物体が軟弱になり病気への抵抗力が衰える。

エ)土壌条件

土壌の温度、湿度、pH、肥料などは土壌病害の発生に関わっている。土壌条件を管理することで土壌病害の発生を抑えることが可能な病害もある。

オ)雨・風・雪

雨は高湿度をもたらし、水媒伝染性の病害の感染に影響する。強風は植物を傷つけるため病原菌の侵入を容易にし、植物の抵抗力を低下させる。


病気の防除
防除方法のいろいろ

ア)化学的防除

病害防除のうち、全般的に最も的確な方法で、化学薬剤を用いて病害を防除を行う。使用方法や薬剤の種類・作用なども様々であらゆる場面で病害防除に用いられ、種子消毒、土壌消毒、土壌施用、散布、水面施用などがある。現在の防除法の主力であるが、近年環境への影響が懸念され、また、過度の使用による耐性菌の発生を招いている。

イ)物理的防除

太陽熱、蒸気消毒、温湯消毒防除できる病害が限定されるが環境への影響が少ない。この他、ウイルス媒介昆虫の忌避のためのシルバーマルチ、糸状菌の胞子形成を抑える紫外線カットフィルムなどがある。

ウ)耕種的防除

抵抗性品種や抵抗性台木の利用、輪作の導入、施肥法による病害の回避、ほ場環境の衛生など多岐にわたる。病害に対して抵抗性のある作物を栽培したり栽培管理などにより病害を防除する。この方法で防除できる病害は限られるが非常に有効な手段である。

エ)生物的防除

拮抗微生物の利用、弱毒ウイルスによるウイルス病防除など、生物農薬(登録の必要)を用いた防除法。環境への影響が少なく、生物農薬の登録も進んでいる(ボトキラー水和剤、バイオキーパー水和剤)。しかし、化学農薬よりも効果が低く、安定した効果を発揮するには条件付きであるが、環境への影響が少なく耐性菌の発生もほとんどない。


試験研究
試験研究は環境にやさしく化学農薬の使用を減らすことを目的として行っています。
上記した防除法を組み合わせて総合的な防除技術を開発するためそれぞれの防除法に関して様々な検討を行っています。

ア)化学的防除にかかわる技術研究

これまでの化学農薬の使い方を検討してなるべくその使用を減らした方法を試験しています。たとえば、トマトの灰色かび病防除のためにそれまで全体に散布したいる農薬を花房だけに散布する方法の開発(農薬使用量が1/20以下になります)やメロンうどんこ病に対する防除効果をあげるために農薬に一緒の混ぜて使う展着剤を検討して、散布回数を減らす技術などに取り組んでいます。

イ)物理的防除にかかわる技術研究

太陽熱を利用したウリ科野菜ホモプシス根腐病防除のための方法や施設栽培の土壌病害に熱水を利用した防除方法などの技術開発に取り組んでいます。

ウ)耕種的にかかわる技術研究

トマト褐色根腐病や半身萎凋病に強いトマトの台木の選別や育種を行っています。また、トマト黄化えそウイルスやウリ科野菜黄化ウイルスの伝染源である圃場周辺雑草や媒介昆虫の発生生態などを調査して防除に役立つ技術を検討しています。

エ)生物的防除にかかわる技術研究

生物農薬として期待できる拮抗微生物を用いて防除試験を行っています。具体的にはトマト灰色かび病、メロンうどんこ病、シクラメン萎凋病に対する防除効果を検討しています。

本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
  • ラグビーワールドカップ2019
  • 神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」
  • ともに生きる社会かながわ憲章
  • SDGs未来都市 神奈川県 SDGs FutureCity Kanagawa