窒素安定同位体自然存在比(δ15N値)による水質中の硝酸態窒素の起源の推定

掲載日:2018年3月6日

水質の硝酸態窒素が環境基準に格上げされ、常時監視、結果の公表、排水基準値の設定等が行われます。農耕地からも肥料や堆きゅう肥等の有機質資材の施用に由来する地下水の硝酸汚染が懸念されており、環境負荷を軽減するための施肥技術が必要とされています。

農業環境部では、ライシメーターを用いて肥料の種類(高度化成、被覆尿素)、有機物の連用並びに有機物の施用法と窒素(N)の溶脱について試験をしています。ここでは、農林水産省の農業研究センターと共同で窒素安定同位体自然存在比(δ15N値)の手法により、施肥と浸透水の硝酸態Nとの関係を調査した結果を報告します。

δ15N値とは

次式に示すように、標準物質中(Nは空気中)の重窒素(15N)の存在比と試料中の重窒素(15N)の存在比の差を標準物質の存在比を分母とした千分率(‰、パーミル)で表示されます。δ値が(+)の場合は試料の同位体存在比が標準物質より高く、(-)の場合は低いことを示しています。

δ15N値の式

水質のδ15N値

雨水のδ15N値は-を示し、河川の上流域では低いδ15N値であるが、中、下流域では+となり、生活排水や畜舎排水が流入すると+10‰以上となります。

δ15N値の変化の要因

土壌中でのN反応過程で、(1)アンモニアの硝化、(2)アンモニアのガス揮散、(3)硝酸、亜硝酸の脱窒等で同位体分別が生じる結果、δ15N値が変化します。

ライシメーター試験における事例

当所の1区4.8平方メートルのライシメーターにより、施肥Nと浸透水中の硝酸態N濃度及びそのδ15N値との関係を調査した結果の一部を表に示します。使用した肥料のδ15N値は高度化成やLP(被覆尿素)は0に近く、牛ふん堆肥や菜種油粕は高い値を示しています。一方、浸透水のδ15N値は淡色黒ボク土では施肥Nの影響はほとんどありませんが、灰色低地土では施肥Nのδ15N値とよく対応しています。ここに示した淡色黒ボク土は土層全体を野菜畑の表層で充填したことから、浸透水で溶脱したNは土壌Nに由来するものと考えられます。一方、灰色低地土は20年近く同一肥料(高度化成とLPは高度化成の連用)を連用した畑土壌を層位ごとに充填したものでありますが、保肥力が小さいことから溶脱Nは施肥Nに由来するものと考えられます。

今後は地下水等水質のN汚染が生じた場合にはその起源が問題となりますが、その際には今回検討したδ15N値を用いた手法の適用が可能といえます。しかし、土壌の種類や来歴により必ずしも明確な回答が得られないこともあり、さらにデータの蓄積が必要とされます。


ライシメーター土壌浸透水の硝酸態窒素およびδ15N値
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