植物ウイルス病診断法の現状

掲載日:2018年3月6日

病気の発生は農作物の収穫に大きく影響しますが、なかでもカビや細菌が土壌中にあって病気を起こすものやウイルスが原因のものは、病気が発生してから使って効果のある農薬がほとんどありません。そこでこれらの病気は、診断をしてその後の対応を検討しないと大きな被害となる可能性があり,病原体の診断同定が重要となります。

今回は植物の病原体の中でも特殊であるウイルス病の診断方法の現状をご紹介いたします。

検定植物を用いる診断法(写真-1)

最もオーソドックスな方法で罹病した植物から、検定植物(各種ウイルスの感染による症状がわかっている)に病気を移して診断します。現在、12種類の検定植物を常時用意して対応しています。欠点としては時間がかかること(特に早急な対応を求められている場合などは適さない)、またウイルスによっては人為的に病気を移せないものがあることなどです。

免疫学的手法を用いた診断法(写真-2)

脊椎動物の免疫を利用した方法で、一般的にはウサギに植物ウイルスの抗体を作らせてその抗体を使ってウイルスの種類を判定します。抗体の使い方にもいくつかの方法がありますが、植物ウイルス病の診断法として一般的なものはELISA(エライザ)法と呼ばれるものです。具体的には抗体に指標となる酵素(アルカリフォスファターゼなど)を結合させて、その酵素反応が有るか無いかで診断します。ウイルス1種に対応し1種類の抗体が必要になります。現在、当所ではキュウリモザイクウイルス、トマト黄化えそウイルス、カブモザイクウイルス、カボチャモザイクウイルス、ズッキーニモザイクウイルスなどのウイルス病診断が可能です。しかし欠点や不便なことも多くあり、万能な方法ではありません。

遺伝子増幅技術を用いた診断法(RT-PCR法によるウイルス病診断、写真-3)

最近、医学の分野でも注目され、実際に多くの場面で用いられ始めた技術で、目的となる遺伝子(DNA)が有るか無いか、その遺伝子を増幅する方法(polymerasechainreactionmethod;PCRmethod)を用いて人間の目で確かめられるようにして判定するものです。植物ウイルスは遺伝子がRNAであるものがほとんどなので、一旦、逆転写反応(reversetranscription;RT)によりRNAをDNAに変えて、DNAを増幅して目的のウイルスの遺伝子が植物の中に有るか無いかを調べ、ウイルス病に感染しているかどうか判断します(RT-PCR法)。実用にはまだいくつかの問題がありますが、実験室のレベルにおいては非常に優れた診断方法であることが確認されました。今後は上記しました一般的な診断方法に加えて、それぞれの欠点や不便な点を補いウイルス病の診断に用いていく考えです。


ウイルスに感染したトマトの汁液をアカザ葉に接種して出現したえそ斑点症状

写真-1:キュウリモザイクウイルスに感染したトマトの汁液をアカザ葉に接種して出現したえそ斑点症状

キュウリモザイクウイルス:多くの植物に感染しモザイク葉や奇形葉などの症状を示すウイルス。


ELISA法に用いる96穴プレート

写真-2:ELISA法に用いる96穴プレートの写真。

96穴のそれぞれに抗体を処理し、感染の疑われる植物汁液を入れ、標識抗体処理後、酵素反応基質を入れる。黄色に発色しているところがウイルス感染の認められるもの。


寒天ゲル電気泳動写真

写真-3:寒天ゲル電気泳動により増幅されたウイルス遺伝子の解析。

予想された場所にバンド(白色)が表れるとウイルスがあることがわかる。キュウリモザイクウイルス(CMV)、カブモザイクウイルス(TuMV)の混合感染か単独感染かを調べ、1~5と8はTuMVの単独感染、6と7と9と10は2種類のウイルスが混合感染していることがわかる。

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