ウメの新品種「十郎小町」

掲載日:2020年6月19日
十郎小町の木十郎小町の実

 

育成経過と特性

背景と目的

神奈川県のウメ栽培は500年以上の古い歴史があり、現在は小田原市から足柄上地域が主産地となっており、‘十郎’‘白加賀’‘南高’等の品種が市場出荷を中心として生産・販売されています。しかし、近年は和歌山県産の‘南高’が6月上旬から大量に出荷されるようになったことから、6月中下旬に収穫される神奈川県産のウメの価格は急落し、県内生産者は厳しい経営状況が続いています。
そこで、和歌山県の‘南高’が市場に出回る前の5月下旬から収穫できる極早生品種を育成するため、小田原市梅研究会と共同で育成系統の選抜を行い、目標に合致した新品種‘十郎小町’を育成しました。

 

育成経過

‘十郎小町’は平成11年(1999年)に農業技術センターで‘玉織姫’に、‘十郎’を交雑し、小田原市梅研究会と共同で選抜を実施しました。平成18年(2006年)に初結実し、極早生・中粒で梅干し加工後の品質に優れていたため有望と判定しました。
平成23年(2011年)6月に種苗法に基づく品種登録を小田原市梅研究会と共同で出願し、同年10月7日に出願公表されました(出願番号26083号)。

 

樹・花の特性

樹姿は枝がやや斜め上方に開いた形をしており、樹勢は中程度です。開花期は早く、‘十郎’とほぼ同時期に開花します(第1表)

 

第1表 ‘十郎小町’の生育特性(2009年)

品種名 樹姿 樹勢 満開日 収穫期
十郎小町 斜上から開帳 2月1日 5月25日
玉織姫 斜上から開帳 2月9日 6月1日から6月15日
十郎 斜上から開帳 やや強 2月12日 6月12日から6月18日
南高 開帳 2月14日 6月15日から6月21日

 

 

果実の特性

収穫期は早く、小田原市上曽我において5月下旬から6月上旬に収穫される極早生品種です(第1表)。
果実は15から20g程度の中粒で、核重率は9から10%程度で中粒品種としては核(種)が小さい特徴があります。
また、ヤニ果の発生は極めて少なく、結実性は良好です(第2表)。梅干し加工後の果実表面の果皮が、高品質とされている‘十郎’より更に柔らかく、色調は‘十郎’と同様に赤みが少ない特徴があります。


十郎小町の生果実十郎小町の梅干し

 

第2表 ‘十郎小町’の果実特性(2009年)

品種名 果実重(g) 核重率(%) ヤニ果率(%)
十郎小町 16.4 9.1 1.4
玉織姫 26.9 8.4 9.3
十郎 37.8 9.6 9.0
南高 59.5 8.1 4.2

 

 

今後の普及

この品種は、県内ウメ産地の活性化を図るため、県内に限定して普及していくことを計画しています。
和歌山県産‘南高’より早く市場に出すことができ、梅干しの品質も優れていることから有利販売できると期待されます。また、小田原市特産の‘十郎’の姉妹ブランド品種としても普及が見込まれます。