更新日:2023年12月26日

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科学技術関連コラム・バックナンバー(吉本委員)

科学技術関連コラム・バックナンバー(吉本委員)

科学技術関連コラム(第8回:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社経済政策部主席研究員 吉本 陽子 先生(神奈川県科学技術会議委員))

掲載日:2022年9月

 このたび、新たに、科学技術にかかわるコラムを神奈川県科学技術会議の委員の皆様にご執筆いただくことにしました。
 コラムは随時更新予定です。第8回目は、吉本委員です。

科学技術の社会実装は県民意識の高まりから
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社経済政策部主席研究員 吉本陽子

吉本陽子委員画像 日本は科学技術立国として発展してきたにもかかわらず、日本人は欧米諸国と比べて「科学技術へのリテラシーが低い」という指摘を耳にすることが多い。リテラシーとは「読み書き能力」という意味であり、日本人は科学技術に関する教養・理解に乏しく、科学技術への関心も低い、という指摘になる。様々な原因が指摘されているが、研究者や技術者と国民との対話不足もあるのではないだろうか。

 神奈川県環境科学センターでは、相模湾におけるマイクロプラスチックの汚染実態を明らかにするために、学術系のクラウドファンディングサイトを使って研究費を集めるというユニークな試みを実施した。クラウドファンディングで資金を集めるには、自らの研究の意義や必要性を広く一般の人々にも理解してもらえるように訴える必要がある。そのサイトを拝見した際、恥ずかしながら気づかされたことがあった。自分自身はゴミの分別・リサイクルはしっかりと行っているので、海洋のマイクロプラスチック問題にはかかわっていないと思っていた。しかし、それはとんでもない誤解で、台所や洗濯排水からもマイクロプラスチックが発生していることを知り、発生原因が日常生活の中に潜んでいることを痛感した。とても明確でわかりやすい説明がなされており、このプロジェクトは1か月ちょっとで目標金額の100万円の資金調達に成功し、研究成果のレポートも興味深く、反響は大きかったと聞いている。

 生命倫理を扱うバイオテクノロジーやライフスタイルの転換を迫る脱炭素社会の実現に向けては、総論賛成・各論反対に陥りやすく、科学技術の社会実装が進みにくいところがある。神奈川県が試みたマイクロプラスチック汚染問題のように、研究の意義や必要性をきちんと「見える化」し、自分事として考えてもらうコミュニケーション能力がこれからの科学技術の社会実装には極めて重要となる。神奈川県には多くの大学や企業研究所が立地している。研究者や技術者と県民との対話を深め、県民の科学技術リテラシーの向上、ひいては先端技術の社会実装を展開しやすい地域の実現を期待したい。 

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