中央新幹線(東京都・名古屋市間)に係る環境影響評価方法書に対する知事意見

掲載日:2020年4月3日

中央新幹線(東京都・名古屋市間)(以下「本件事業」という。)は、(1)三大都市圏(東京圏、名古屋圏及び大阪圏)間を高速かつ安定的に結ぶ幹線鉄道路線の充実、(2)三大都市圏以外の沿線地域に与える効果、(3)東海道新幹線の輸送形態の転換と沿線都市群の再発展、(4)三大都市圏を短時間で直結する意義、(5)世界をリードする先進的な鉄道技術の確立及び他の産業への波及効果を目的とした、東京都・大阪市間を最高設計速度が時速505キロメートルの超伝導磁気浮上方式による新幹線鉄道の計画のうち、東京都港区を起点とし、愛知県名古屋市を終点とする複線、延長約286キロメートルの新幹線鉄道の新設について先行して行うものである。

 事業者は、全国新幹線鉄道整備法に基づいて、国土交通大臣より営業主体及び建設主体に指名された東海旅客鉄道株式会社である。

 このうち、県内の路線延長は約40キロメートルであり、今後、幅3キロメートルの中から用地幅約22メートルの路線、相模原市内に面積約3.5ヘクタールの地下駅及び面積約50ヘクタールの車両基地を設置する計画であり、対象事業実施区域(以下「実施区域」という。)を含む市町村は、川崎市中原区、高津区、宮前区、多摩区、麻生区、横浜市青葉区、相模原市中央区、緑区、愛川町及び清川村である。

 また、県内の計画路線の多くはトンネル構造であり、川崎市中原区から相模川までは、ほとんどが大深度地下トンネルで通過する計画としており、トンネルの施工や給排気に利用する複数の立坑が設置される。また、相模川を橋梁で渡河した後、主に山岳トンネルで通過し、山梨リニア実験線に接続するとしている。

多摩川から相模川に至るまでは、市街化が進んだ地域であるが川崎市域を中心に多くの特別緑地保全地区が、相模川の河岸段丘には近郊緑地保全区域が指定されている。また、相模川より西側には豊かな自然が残り、多くの地域が丹沢大山国定公園をはじめとした自然公園等に指定されている。特に旧藤野町の石砂山は、日本固有のギフチョウが生息していることから、自然環境保全条例に基づく自然環境保全地域の特別地区として指定されている。

本件事業は、超伝導リニアという最先端の技術を採用した、東京都、本県、山梨県、静岡県、長野県、岐阜県、愛知県の1都6県を通過する大規模事業であることから、環境に与える影響を適切に予測及び評価するためには、しっかりとした調査検討が不可欠である。

しかしながら、本環境影響評価方法書(以下「方法書」という。)では、路線、車両基地をはじめとした施設の位置及び規模が確定されていないことなどにより、環境影響が及ぶ対象や地域が不確定であり、また、調査項目、調査手法及び調査地点の考え方が不明瞭であることから、方法書の段階で審議すべき事項について、十分な検討が出来ていないことが神奈川県環境影響評価審査会の答申の中で指摘されている。

したがって、今後、事業者は、適切な調査項目、調査手法及び調査地点を選定し、その予測及び評価について十分に検討した環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)を作成するとともに、準備書に対する知事意見において、追加すべき調査内容や検討事項について指摘された場合は、速やかに対応すること。

また、本件事業に係る路線や車両基地をはじめとした施設の位置及び規模の決定に当たっては、本意見において指摘されている事項に十分配慮し、環境影響を可能な限り回避、低減するよう検討すること。特に動物・植物・生態系及び水資源に与える影響については、十分な検討が必要である。

なお、準備書の作成に当たっては、一般の方にも理解できるよう、丁寧かつわかりやすい内容とするとともに、次の審査結果を十分に踏まえて、適切な対応を図ること。

1 調査、予測及び評価の手法について

(1) 事業計画

ア 方法書の段階で審査を適切に行うために必要で的確かつ具体的な内容が示されていないため、事業位置の確定に伴い、調査項目、調査内容や調査地点等に影響を与える新たな事項が明らかになった場合は、調査の追加や修正の必要性について検討を行い、その結果に基づいて適切な措置を講ずるとともに、準備書にその経緯を記載すること。さらに、準備書に対する知事意見において、追加すべき調査内容や検討事項について指摘された場合は、速やかに対応すること。

イ 市街地での駅設置については、周辺の環境に大きな影響を与えると想定される。特に駅施設と駅前広場等の整備工事の重複による交通混雑が想定されるため、駅前広場等の整備を行う者と十分な情報共有を図ること。

(2) 大気質

ア 大気質の予測のための気象調査の方法について、その考え方及び判断基準が明確に説明されておらず、四季ごと連続1週間の調査では、十分な気象データが得られないため、安全側に配慮し、原則として通年観測を実施すること。

イ 大気質の影響は広範囲に及ぶこと、また事業が山岳部など汚染の程度が小さい場所で行われることも想定されることから、予測に当たっては、事業実施による寄与濃度が環境基準に比べて十分に小さい場合でも、現況と比較して影響が大きいと想定される場所においては、保全対象や地形等を十分に考慮した精度の高い予測を行い評価すること。

(3) 騒音

ア 立坑や斜坑の換気経路は列車走行音の伝搬経路になることから、換気設備による騒音の他に列車の走行音についても評価項目に追加し、消音設備や多孔板の騒音低減効果を明らかにした上で、予測及び評価すること。

イ 高架構造や換気施設等で開口部(音源位置)が地上よりも高く、周囲に保全すべき中高層の住宅等がある場合には、高さ方向に配慮した騒音も予測及び評価すること。

(4) 振動

短い車両編成による山梨リニア実験線のデータから営業時の長大編成による影響を予測する際は、振動波形パターンの繰り返し方法を詳しく説明する必要がある。そのため、準備書においては、そのモデル化について山梨リニア実験線の事例との整合及び振動波形の合成方法を明らかにすること。

(5) 微気圧波

ア 模型試験は、立坑間隔が最大となるトンネル長さ及び実際の立坑深さに対応した試験を行い、微気圧波による影響を予測及び評価すること。

イ 微気圧波の対策について、模型試験の結果により微気圧波が約2分の1に低減されることを確認するだけでは不十分であり、準備書では多孔板構造の内容とその対策による低減効果を明確にすること。なお、基準値案との整合については、分かりやすく説明すること。

ウ 民家近傍の予測において、換気施設の開口部が地上よりも高く、周囲に保全すべき中高層の住宅等がある場合には、高さ方向に配慮した微気圧波も予測及び評価すること。

エ 微気圧波の基準値案は、生活の中でどのような影響の程度であるのかを分かりやすく準備書に示すこと。

オ 微気圧波発生のメカニズム及び発生状況は、列車の走行区間で発生が想定されるものを整理し、準備書において明らかにすること。

(6) 地下水

路線の大部分が地下構造物を建設する事業であることから、地下水への影響について、適切に予測及び評価を行うこと。特に川崎市の実施区域には地下水を汲み上げて上水道、工業用水道に利用されている地域があり、地下水の利用については自治体等に確認するなど十分な調査をすること。

(7) 水資源

ア トンネルが地下水層を横切ることによって周辺地域における水資源や河川環境に変化が生じる可能性があることから、相模原台地、相模川の特性について可能な限り幅広く情報を収集したうえで適切に調査地点を選定すること。

イ 相模川以西の実施区域は神奈川県全体の水源地としても非常に重要な地域であり、水源環境の保全の面から工事中を含めて水源に対する影響についての十分な調査を行い、予測及び評価すること。

(8) 磁界

ア 磁界の影響については、方法書に書かれている内容だけでは磁界の求め方や影響について理解することは非常に難しい。山梨リニア実験線での磁界の計測結果等も含め、一般の方が理解できるように分かりやすく準備書に記載すること。

イ 医療用機器への磁界の影響に対する一般の方の関心は高いと考えられることから、準備書では、医療用機器に影響が出ない対策や数値レベルについて、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドライン等の内容も含めて丁寧に説明すること。

(9) 動物・植物・生態系

ア 地域特性に関する情報の把握が不十分であることから、県や市町村が発行した最新の動植物に係る調査報告書をはじめ、地域の自然環境に関する学術調査報告書や学術論文等の情報を可能な限り幅広く収集すること。

イ 調査の手法、調査の範囲及び地点の検討に当たっては、以下の点に留意して適切に設定すること。

重要な動物種については、地形、水系、植生及び土地利用等、行動や分布を規定する環境要素を十分に考慮すること。

工事施工ヤードや工事用道路は自然豊かな山岳部にも建設され、工事段階での自然環境に与える負荷が大きくなる可能性があることを十分に考慮して、適切な調査範囲を検討すること。

山岳トンネル区間における植物種の調査に当たっては、地下水が地表に現れる沢等の周辺で、その枯渇や汚染による影響を受けやすい流水依存型の貴重な植物種が多く生育している可能性があること。

丘陵地の湧水環境に生息するホトケドジョウについては、その生活史を考慮して産卵場所、稚魚の着底場所を調査地点とすること。

ウ 路線や車両基地等の付帯施設の位置等の検討に当たっては、重要種の生息、生育地及び自然環境保全の活動地域等に関する最新の情報を幅広く収集するとともに、以下の点に留意して影響の回避、低減に努めること。

相模川以西の実施区域には多くの自然環境保全地域が指定されており、重要種が生息、生育する生物多様性の高い地域であること。

希少猛禽類の環境保全措置の検討に当たっては、生息環境の保全など長期的視点が重要であることから、生息情報に加えてポテンシャルマップ(生息適地図)を利用すること。

県内では、水田環境が小さなエリアに分断されて存在しており、水田性の生物がわずかなインパクトでも大きな影響を受ける可能性があること。特に、相模原市緑区にはトウキョウダルマガエルの生息地があること。

カジカガエルは、渓流域で産卵をして幼生から変態して森林に移動する特性があり、工事施工ヤードや工事用道路等によってその移動経路が分断される可能性があること。

県の天然記念物に指定されているギフチョウの生息が確認されている石砂山の周辺は自然環境保全地域の特別地域に指定されており、自然環境の保全が県内でも厳格に求められている場所であること。

相模原市は「相模原市ホタル舞う水辺環境の保全等の促進に関する条例」を制定しており、身近な水辺環境の保全や再生等に向けた市民等の活動の促進に努めている地域であること。

川崎市域には、特定植物群落が存在し、樹林環境の維持を目的として特別緑地保全地区が指定されていること。

エ 調査、予測及び評価の手法並びに環境保全措置の検討に当たっては、専門家の助言を受けるとともに、準備書においてその助言内容並びに専門家の専門分野を明らかにすること。

オ 希少猛禽類の現地調査に当たっては、調査圧により繁殖場所での繁殖の継続が妨害されることのないよう慎重に実施すること。

カ 土壌、落葉の堆積中には、昆虫類をはじめとする節足動物や陸産貝類等の多様な土壌動物が生息し、分解者として生態系の保持を担っていることから、種組成等を確認するために陸生貝類及びクモ類等の土壌動物を調査対象に追加すること。

キ 水環境の変化に敏感な蘚苔類及び地衣類を調査対象に追加すること。

(10) 景観

 県内の計画路線は大深度地下、山岳トンネルで通過するとしているが、換気施設、車両基地及び橋梁等が景観に影響を与える可能性があることから、計画路線の位置や施設の構造、形状及び色彩等の検討に当たっては、景観の特性を十分に把握し、可能な限り景観への影響の回避、低減に努めること。また、その検討に当たっては以下の点に留意して行うとともに日常的に見える山並み等の主要で身近な視点も考慮すること。

小倉橋周辺は「かながわの景勝50選」に選定されている優れた眺望景観であること。

相模川の左岸は近郊緑地特別保全地区に指定されており、河岸段丘の斜面緑地も重要な景観資源であること。

多摩川沿いには、都市の中の風致を維持するために川崎市風致地区条例による風致地区が指定されていること。

(11) 人と自然の触れ合いの活動の場

 工事期間が長期にわたることから工事ヤード及び工事用道路の設置に伴い人と自然との触れ合いの活動の場に影響を与える可能性があるため、その影響要因について評価項目に選定し調査、予測及び評価をすること。

(12) 廃棄物等

ア 建設発生土及び建設汚泥の発生量は工法によって違うことから、出来る限り発生量を抑える工法を選定するとともに、その経緯を準備書において明らかにすること。また、発生抑制と再利用の方法を具体的に示した上で、再利用の目標値を設定すること。

イ 地質によっては、地表に出ることにより、砒素やクロム等の溶出や排水の水素イオン濃度が変化する等従来の残土の扱いで対応できない事態も想定されることから、それらの事態にも留意して事前調査を行うこと。

ウ 当該事業は建設発生土が大量に発生することから、準備書においては施設ごとに建設発生土の量を算定し、周辺地域における公共事業や既存の発生土処分場等での受入容量を調査した上で、新たな発生土処分場の必要性について明らかにすること。

(13) 温室効果ガス

ア 列車の走行による年間の二酸化炭素排出量が38万トンというのは一つの事業としてはかなり大きい量であり、加えて、評価項目に選定しない合理的な理由は無いことから、列車の走行による温室効果ガスの排出は評価項目に選定すること。さらに、本件事業の二酸化炭素排出量を低減する具体的な取り組みについて十分検討し、準備書において明らかにすること。

イ 温室効果ガスの環境影響要因として列車の走行を評価するに当たっては、使用する電力等の排出原単位や前提とする条件には変動要因があることから、国が示す将来の電源構成等、最新の情報や知見を踏まえて、的確な予測をすること。

ウ 工事中及び鉄道施設の供用による温室効果ガスの予測に当たっては、定量的に予測すること。

(14) 地域分断

車両基地については、建設する場所によって、各評価項目の重要性が異なり、地域社会に及ぼす影響も異なるので、地域に応じた計画の検討を十分に行うこと。

(15) 安全(危険物等)

 車両に液体ヘリウムを搭載することから、車両の走行についても安全(危険物等)を評価項目に選定し、予測及び評価すること。

2 その他

準備書を作成する際は、評価項目について、神奈川県環境影響評価技術指針に配慮した検討を行い、調査、予測及び評価すること。

このページの先頭へもどる

このページに関するご質問は、環境計画課にお問い合わせください。

Copyright(C)-2012 Kanagawa Prefectural Government. All rights reserved.

本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
  • 神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」
  • ともに生きる社会かながわ憲章
  • SDGs未来都市 神奈川県 SDGs FutureCity Kanagawa