(仮称)三浦市三戸地区発生土処分場建設事業に係る環境影響評価審査書

掲載日:2020年4月3日

1 総括事項

(仮称)三浦市三戸地区発生土処分場建設事業(以下「本件事業」という。)は、京浜急行電鉄株式会社が、三浦市初声町三戸40番外の面積約25ヘクタールの土地(以下「実施区域」という。)に、県東部地域の建設発生土を7年半にわたり約220万立方メートル受け入れる処分場を建設するものである。

実施区域は三浦市西部にあって、京浜急行電鉄三崎口駅から南に約500メートルの場所に位置し、第一種低層住居専用地域に指定されている。北側及び東側はおおむね農地であり、東側の幹線道路沿いには住宅が建ち並んでいる。西側では農地造成事業が行われ、南側には「小網代の森」が広がる。

実施区域を含む周辺地域では昭和40年代前半から住宅地などの開発が計画されてきた。そのなかで「小網代の森」は、関東地方では唯一、森林、湿地、干潟及び海から成る集水域が自然な状態で残り、多様で豊かな生態系が形成されていることから、NPOなどを中心とした保全に向けた取組みが行われてきた。こうした背景から、平成4年以降、県は三浦市及び地権者と土地利用についての調整を図り、その結果「小網代の森」については保全する区域とされ、後に近郊緑地保全区域として指定された。

一方、実施区域は、「小網代の森」のように海に接していないものの、自然が残された谷戸地形で、斜面は主に二次林で覆われ、底部には小川(北川)が流れ、ハンゲショウやアズマヒキガエルなどの貴重な植物や動物が生育及び生息する豊かな生態系が形成されている。

本件事業は、このような実施区域において発生土処分場を建設するものであり、樹木の伐採や谷戸の埋立てにより、この豊かな生態系の大部分を喪失することとなるため、実施区域のみならず「小網代の森」を含めた周辺地域の植物や動物の生育及び生息環境などに影響を及ぼすことが懸念される。

このため、本件事業によるこれらの環境影響について適切に予測及び評価を行った上で、環境保全対策を確実に実施する必要がある。

その際、本件事業完了後には土地区画整理事業による街づくりが予定されていることから、実施区域縁辺部の樹林地については、こうした将来の街づくりに活かすことも考慮に入れながら、その保全策を検討する必要がある。

また、実施区域外の蟹田沢で行うとしているビオトープ整備を中心とする環境保全対策については、後述する多くの課題があることから、その計画を再検討するとともに、実施に当たっては事後調査により効果を検証しながら適宜生育及び生息環境の改善措置をとり、豊かな生態系を確実に創出することが出来るよう最大限の努力をする必要がある。

したがって、事業者は、環境影響予測評価書の作成に当たっては、これらの点も踏まえ、以下のとおり適切な対応を図る必要がある。

 

2 個別事項

1 事業計画

本件事業の特性から、谷戸環境の保全を通して注目すべき植物、動物、水生生物への影響を回避又は低減することは困難であるとし、実施区域外での代償措置を行うこととしたと結論づけているが、そのような事業計画に至った経緯を詳細に示すこと。

2 植物・動物・生態系

(1) 予測及び評価について

ア 注目すべき植物種及び植物群落

エビネやハンゲショウなどの注目すべき植物種及びヤブコウジ-スダジイ群集などの注目すべき植物群落に与える影響についての予測及び評価手法が示されていないため、詳細に示すこと。

イ 注目すべき動物種及び個体群

注目すべき動物種及び個体群は、「小網代の森」など実施区域外に自ら移動することなどからこれらに与える影響は小さい、と予測及び評価を行っているが、

これらの動物が移動できた場合でも、周辺地域にはその場所特有の生態系が既に機能しており、環境収容力に限りがあるため、実施区域のみならず周辺地域に生息する動物個体及び個体群にも影響が及ぶこと

もとより、本件事業によりイタチなどの上位種も含め、多くの注目すべき動物種の生息地が消失すること

などの理由から、影響が小さいとはいえないため、これらを考慮しながら予測及び評価を行うこと。

ウ 生態系

生態系の予測結果は、事業実施による植生の消失割合の変化のみによって示されているが、事業実施の進捗に伴って変わる具体的な面積や内容を明らかにすること。

(2) 環境保全対策について

ア 実施区域における環境保全対策

実施区域縁辺部にある樹林地については、総括事項において述べた観点に加え、周辺地域の樹林地に連なる貴重な緑地であること、さらに、この樹林地内には「神奈川県レッドデータ生物報告書2006」において注目すべき植物群落と報告されているヤブコウジ-スダジイ群集及びイノデ-タブノキ群集が散在していることから、できるだけ一体的かつ連担して保全できるよう検討すること。

なお、これら保全する樹林と事業の実施後に一部残るとしているクサヨシ-ハンノキ群落が工事中に損傷されることのないよう、建設機械の稼働などにおいては細心の注意を払うこと。

イ 蟹田沢における環境保全対策

谷戸(北川)の自然の代償措置として、蟹田沢において自然を再生することを目指しているが、以下の理由により生物相全ての生育及び生息環境を再生することは難しいと言わざるを得ない。

蟹田沢と谷戸(北川)は、流域面積、流量、水勾配等の水環境、日照条件等の光環境、植生等の自然環境など、環境特性が異なっている部分がある。

水辺環境に生育及び生息している生物は、流量、水質等の変化に敏感でその影響を受けやすいが、蟹田沢は流量が北川に比べて少なく、また、その集水域内の土地における今後の開発行為のあり方によっては、現状の水量ですら必ずしも確保できないとみられる。

そこで、自然再生の場として蟹田沢を選定することとした理由を示すとともに、代償措置として自然の再生を図るに当たっては、専門家の意見や環境特性が類似した状況下での成功事例を十分に踏まえた上で、蟹田沢を特徴づける現況の自然環境との共存が図れるようビオトープ整備の計画を再検討し、実施すること。

なお、再検討、実施に当たっては、以下の点に留意すること。

  • 再生を目指す自然環境の目標像を明確にするとともに、その中で優先的に保全する種は、谷戸(北川)に特徴的に生育及び生息している種とすること
  • 保全する種が適切に生育及び生息し続けるため、目標像に適合した日照条件、水温、流量確保等に留意した整備を行うこと
  • アズマヒキガエルの移殖に当たっては、産卵可能な水溜まりの湿地環境を、またシュレーゲルアオガエルでは、産卵可能な棚田状の湿地環境の確保を行うこと
  • 湿地環境等を保全するため、周辺の樹林地や草地を含め定期的な維持管理を行うこと
  • 自然環境の再生の成果が上がらないときは、他の適地における実施可能性の検討も含め、柔軟に環境保全対策の見直しを図ること

(3) 事後調査について

環境保全対策の効果には不確実性が伴うことから、水質、流速、流量とそこに生育及び生息する生物相の種類や数、並びに蟹田沢の谷戸の斜面地に連続した樹林の創出を行うため植栽された農地造成法面の樹木の生育状況について、専門家の意見を踏まえながら、詳細かつ継続的に事後調査を実施すること。

特に蟹田沢における事後調査については、自然環境の再生という目標に対して成果が上がっているかという視点で実施し、必要な対応を図ること。

3 景観

実施区域の谷戸の景観は周辺の住民にとって身近なものと考えられるので、身近な景観として、その価値や配慮すべき内容を明らかにした上で予測及び評価を行うこと。

なお、配慮すべき内容の検討に当たっては、本件事業終了後に土地区画整理事業による街づくりが予定されていることも考慮すること。

4 安全(交通)

市道17号における可能交通容量は、供用時の土砂運搬車両の増加に対しても十分大きいことから現況交通に著しい影響を及ぼさないとしているが、交通量の少ない路線に、一時間当たり36台の土砂運搬車両が通過することになるため、沿道住民の安全に配慮すること。

5 その他 

(1) 蟹田沢の維持管理について

蟹田沢で整備する自然環境を維持していくため、事業完了後も永続的に一定の管理をしていく必要があることから、その手法や管理主体について検討していくこと。

(2) 予測評価書の作成について

予測評価書の作成に当たっては、住民とのコミュニケーションの促進の観点から、専門的な用語に解説を付ける、平易な文章にするなど分かり易い表現に努めること。

本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
  • 神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」
  • ともに生きる社会かながわ憲章
  • SDGs未来都市 神奈川県 SDGs FutureCity Kanagawa