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更新日:2022年11月18日

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S等不当労働行為救済申立事件の命令について

2021年08月26日
記者発表資料

(注釈)本件は、中央労働委員会が和解認定したことにより失効したため、申立人及び被申立人を匿名化しています。
神奈川県労働委員会(会長 浜村彰)は、標記の事件について、本日、申立人の不当労働行為救済申立ての一部を救済する命令を交付しましたので、お知らせします。概要は次のとおりです。

1 当事者

申立人 X1

同 X2


被申立人 Y1

同 Y2

同 Y3

2 事件の概要

本件は、【1】申立人らが、令和元年10月11日、10月29日、11月22日及び12月12日、令和元年度夏季・冬季賞与、リネン業務の労働環境改善、退職強要、セクハラ等を交渉事項とする団体交渉を申入れたところ、被申立人らが正当な理由なく団体交渉を拒否したこと、【2】団体交渉申入れ後、期間の定めのない雇用であった組合員に対し、有期雇用契約書に署名押印するよう要求したこと、【3】令和元年8月20日の団体交渉で合意した同年8月末までの夏季賞与の支給について、被申立人らが同月23日に支払時期の変更を一方的に通知したことが、【1】は労働組合法第7条第2号に、【2】は同条第1号及び第3号に、【3】は同条第2号及び第3号に該当する不当労働行為として救済申立てのあった事件である。

3 命令の概要

(1) 主文

ア Y1は、令和元年9月10日、10月11日、10月29日、11月22日及び12月12日申入れの議題に関する団体交渉に、誠実に応じなければならない。

イ Y1は、団体交渉における発言を、その直後に翻すなどして、組合の運営に対する支配介入を行ってはならない。

ウ Y1は、本命令受領後、速やかに陳謝文を掲示しなければならない。

エ Y2は、令和元年10月29日、11月22日及び12月12日申入れの議題に関する団体交渉に、誠実に応じなければならない。

オ Y2は、本命令受領後、速やかに陳謝文を掲示しなければならない。

カ Y3とは、令和元年12月12日申入れの議題に関する団体交渉に、誠実に応じなければならない。

キ Y3とは、本命令受領後、速やかに陳謝文を掲示しなければならない。

ク その余の申立てを棄却する。

(2) 本件の主な争点及び判断の要旨

(争点1)

Y1が、元組合員A(以下「A」という。)に対し、雇用期間を平成31年4月16日から1年間とする契約書(以下「有期雇用契約書」という。)を送付して署名押印するよう求めたことは、組合員であることを理由とした不利益な取扱いに当たるか否か。また、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)

Y1が、Aに対して有期雇用契約書を送付したことには不利益性が認められるものの、組合員であるAのみに同契約書を送付したとの事実は認められないため、不当労働行為意思の存在は認められず、組合員であることを理由とした不利益取り扱いには該当せず、支配介入にも該当しない。

(争点2)

Y1が、令和元年度の夏季賞与について、令和元年8月20日に行われた団体交渉において説明した方針と異なる支給方法を採る旨告知したことは、不誠実な対応に当たるか否か。また、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)

Y1が、団体交渉の3日後に、令和元年度の夏季賞与について、支給時期が遅れる理由を説明することなく、団体交渉における回答を翻したことは、団体交渉における組合との交渉過程を蔑ろにし、ひいては組合員の組合に対する信頼の失墜、交渉力に対する疑念を招くものであり、組合の運営に対する支配介入に当たる。

また、職員に夏季賞与が遅れる旨告知したことについては、団体交渉における交渉態度ではないので、不誠実な対応には当たらない。

(争点3-1)

令和元年度夏季賞与以後の賞与の支給の有無、額及び支給時期に関る事項、在宅訪問介護事業廃止及びそれに伴う組合員の配置転換等に関する事項、リネン業務に就労する組合員の安全衛生等就労関係を交渉事項とする団体交渉におけるY1の対応は、不誠実な対応に当たるか否か。

(判断の要旨)

常勤者及びパート従業員の賃金等の交渉に当たり、実態を正確に反映した組合員名簿まで提出する必要性は認められないこと、夏季賞与について、具体的な回答をしておらず、十分に対応してきたとはいえないこと、在宅訪問介護事業の廃止によって同事業に従事する組合員の労働条件が変わりうるため義務的団体交渉事項に当たること、リネン業務に就労する者の労働環境に係る回答に際して何の論拠も示しておらず、また具体的な資料を示すこともしていないことから、Y1の対応は不誠実な対応に当たる。

(争点3-2)

X執行委員長に対する平成29年度処遇改善手当の不支給に関する事項を交渉事項とするY1の対応は、不誠実な対応に当たるか否か。

(判断の要旨)

X執行委員長の平成29年度処遇改善手当の不支給について、Y1は、これまでの団体交渉の中で、処遇改善加算金訴訟が継続していること、行政の調査が今後予定されていることを理由に説明を拒んでいるが、訴訟、行政による調査と団体交渉とは、それぞれ目的や機能を異にするものであるから、Y1が訴訟の係属や行政の調査が行われる予定を理由に説明を拒否することは、誠実交渉義務違反に当たる。

処遇改善加算金について、判決では、個々の従業員が事業者に対して具体的な金銭的請求権を有するものではないと判断されているが、交付された処遇改善加算金を用いて具体的にいかなる処遇改善を行うかは、各介護事業者の裁量に委ねられており、組合との交渉の余地があるといえるので、Y1には団体交渉に応ずる義務が生じる。

X執行委員長との訴訟の和解条項の清算条項には、在職中の同人の処遇改善加算金については含まれていないと解されるから、この条項が団体交渉自体を拒否する理由にはならない。

前記のとおり、X執行委員長に対する平成29年度処遇改善手当の不支給を巡るY1の対応は、不誠実な対応に当たる。

(争点3-3)

Y1が、組合員Yに対する退職強要をしたこと、介護業務の強要したこと及び同人の総務業務への復帰について並びに元組合員Bに対するセクハラ及びセクハラ防止について並びに元組合員Cに対する退職強要について交渉議題とする令和元年10月29日付け団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。

(判断の要旨)

Y1は、申入書に記載された3名について、組合員名簿を提示していない以上、この3名が組合員であるとの前提に立つことはできず、団体交渉に応じないことには、正当な理由があると主張するが、組合らは、組合員Yら3名が組合員であることを明示して、Y1らに通知しているのであるから、Y1の主張には理由がない。

組合らが求めた交渉事項は、退職強要及びセクハラ防止に関する事項等であり、いずれも組合員の労働条件に関する事項であるから、これに対し、組合員名簿の未提出を理由に団体交渉を拒否したことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

(争点3-4)

Y1が、令和元年度冬季賞与に関する事項、就業規則及び賃金規程のうち賞与の支給日在籍要件に関する事項、令和元年6月給与からの皆勤手当廃止に関する事項、残業単価に処遇改善分を含めない取扱いに関する事項、平成27年度処遇改善加算の清算金に関する事項を議題とする令和元年12月12日付け団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。

(判断の要旨)

組合員名簿については、実態を正確に反映した組合員名簿まで提出する必要は認められず、処遇改善加算金については、Y1が十分に対応してきたという主張には理由がないため、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

(争点4)

令和元年度夏季賞与以後の賞与の支給の有無、額及び支給時期に関する事項を巡るY2の対応は、不誠実な対応に当たるか否か。

(判断の要旨)

令和元年度夏季賞与以後の賞与の支給の有無、額及び支給時期に関する事項は、労働者の労働条件に関する事項であるから、義務的団体交渉事項に当たることは明らかであるが、Y2は文書による回答のみを行い、団体交渉に応じていない。

この件に関して具体的な回答をしなかったY1の対応は不誠実なものであり、同様の回答で団体交渉を拒否しているY2の対応もまた、誠実であったとはいえない。

(争点5)

Y2が、組合員Yに対する退職強要、介護業務の強要及び同人の総務業務への復帰に関する事項を議題とする令和元年10月29日付け団体交渉申入れ及び令和元年度冬季賞与に関する事項、就業規則・賃金規程のうち賞与の支給日在籍要件に関する事項、令和元年6月給与からの皆勤手当廃止に関する事項、残業単価に処遇改善分を含めない取扱いに関する事項、平成27年度処遇改善加算の清算金に関する事項を議題とする令和元年12月12日付け団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。

(判断の要旨)

組合員名簿については、実態を正確に反映した組合員名簿が提出されないことをもって、団体交渉拒否の正当な理由と認めることはできず、処遇改善加算金については、Y2が十分に対応してきたという主張には理由がないため、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

(争点6)

令和元年度夏季賞与以後の賞与の支給の有無、額及び支給時期に関する事項を巡るY3の対応は、不誠実な対応に当たるか否か。

(判断の要旨)

令和元年度夏季賞与以後の賞与の支給の有無、額及び支給時期に関する事項は、労働者の労働条件に関する事項であるから、義務的団体交渉事項に当たることは明らかであるが、Y3は文書による回答のみを行い、団体交渉に応じていない。

この件に関して具体的な回答をしなかったY1の対応は不誠実なものであり、同様の主張で団体交渉を拒否しているY3の対応もまた、不誠実な対応に当たる。

(争点7)

Y3が、令和元年度冬季賞与に関する事項、就業規則及び賃金規程のうち賞与の支給日在籍要件に関する事項、令和元年6月給与からの皆勤手当廃止に関する事項、残業単価に処遇改善分を含めない取扱いに関する事項、平成27年度処遇改善加算の清算金に関する事項を議題とする令和元年12月12日付け団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。

(判断の要旨)

組合員名簿については、実態を正確に反映した組合員名簿が提出されないことをもって、団体交渉拒否の正当な理由と認めることはできず、処遇改善加算金については、Y3が十分に対応してきたという主張には理由がないため、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

(注記)不当労働行為

使用者は、労働組合法第7条により、次のような行為が禁止されている。

不利益取扱い(同条1号):組合員であることや労働組合の正当な行為をしたことを理由に、労働者に対して解雇などの不利益な取扱いをすること。

団体交渉拒否(同条2号):正当な理由なく団体交渉を拒否したり、不誠実な団体交渉をすること。

支配介入(同条3号):労働者による労働組合の結成やその運営を支配したり、これらに介入すること。

報復的不利益取扱い(同条4号):労働委員会に申立てなどをしたことを理由に、労働者に対して不利益な取扱いをすること。

問合せ先

神奈川県労働委員会事務局審査調整課

労働関係調整担当課長 菅居 電話 045-633-5445

審査調整グループ 後藤 電話 045-633-5447

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