高圧ガス事故のトレンド

掲載日:2018年3月23日

1 高圧ガス事故の推移(昭和40年から平成22年まで)

ここでは、昭和40年から平成22年までに全国で発生した高圧ガス事故と神奈川県内で発生した高圧ガス事故並びに容器の盗難・喪失等を除いた災害事故について、件数の推移を表しています。

(1) 高圧ガス事故件数の推移

全国の高圧ガス事故の発生件数は平成12年から増加に転じて以降、急激に増加しており、平成22年は916件(前年比92件増)と過去最多を記録しました。事故区分による内訳では消費先の事故が614件(同44件増)、製造事業所の事故が263件(同39件増)となっており、この二つで発生件数の多くを占めています。(図1.1「高圧ガス関係事故年報 高圧ガス保安協会」より引用)

図1.1 高圧ガス事故件数の推移【全国】(昭和40年から平成22年)

神奈川県内の高圧ガス事故の発生件数も全国と同様に増加傾向にあり、平成22年は46件(前年比20件増)と過去最多を記録しました。事故区分による内訳では製造事業所の事故が25件(同10件増)、消費先の事故が19件(同12件増)となっており、この二つで発生件数のほとんどを占めています。(図1.2)

図1.2 高圧ガス事故件数の推移【神奈川県】(昭和40年から平成22年)

(2) 災害事故件数の推移

次に、神奈川県内で発生した高圧ガス事故のうち、容器の盗難・喪失等を除いた災害事故の推移を事故区分別に図1.3に示します。災害事故の発生件数も増加傾向にあり、平成22年には32件(前年比10件増)と過去最多を記録しました。このうち、製造事業所の災害事故が25件で全体の80%近くを占めています。

図1.3 災害事故件数の推移【神奈川県】(昭和40年から平成22年)

災害事故の多くを占める製造事業所について、法区分による発生件数の推移を図1.4に示します。最近4、5年ではコンビナート則適用事業所に加えて、一般則や冷凍則適用事業所での事故が急増しています。

図1.4 製造事業所の災害事故件数の推移【神奈川県】(昭和40年から平成22年)

2 平成22年の高圧ガス事故について

既に触れたとおり、平成22年には神奈川県内で過去最多となる46件の高圧ガス事故が発生しました。このうち、容器の盗難・喪失等が14件(30%)で、それ以外の災害事故が32件(70%)となっています。ここでは、災害事故と人的被害についてのトレンドを考察します。

(1) 災害事故のトレンド

平成22年に発生した災害事故32件を事故区分別及び事象別に分類して示したものが図2.1になります。事故区分別では製造事業所が25件(78%)と全体の3月4日以上を占めており、次いで消費先が5件(15%)、移動中が2件(6%)となっています。事象別では漏えい等が26件(81%)とその大部分を占めており、破損等が4件(13%)及び火災が2件(6%)となっています。

図2.1 災害事故の事故区分別割合(左)と事象別割合(右)(平成22年)

次に、災害事故32件(うち1件は調査中)について事象別を含めて原因別に分類したものを図2.2に示します。原因の大分類では、設備に起因する災害事故が最も多く18件(57%)、次いでシステムが3件(10%)、人が3件(10%)、及びその他が7件(23%)という内訳になっています。なお、設備に起因する災害事故は全て製造事業所で発生しています。

原因の中分類で最も多いのが劣化・腐食等管理不良による災害事故の9件で、事象は全てが漏えい等となっています。これは設備の高経年化についての管理が課題であることをうかがわせます。また、設計・構造不良と製作不良による災害事故を合わせると8件に上り、メーカまたは事業所における設備の製作及び施工時の品質管理が重要であると考えられます。

なお、事故区分別では、移動中の災害事故が交通事故による漏えい等の2件、消費先の災害事故が情報提供の不備による漏えい等の1件と誤操作による火災の1件及びその他による破損の2件と漏えい等の1件を合わせた5件であり、残りの25件は製造事業所における災害事故となっています。

図2.2 災害事故の原因別分類(平成22年)

設備に起因する漏えい等の災害事故16件について、漏えい等の分類、設備区分、機器及び部位別に分類したものを図2.3に示します。漏えい等の分類では疲労が11件と事故の多くを占めており、腐食が3件、その他が2件となっています。

設備区分で多いのが冷凍設備の8件と配管・継手・弁の6件です。配管・継手・弁のうち2件はCE(コールド・エバポレータ)設備であり、ここ数年は冷凍及びCE設備からの漏えいが多く報告されており、一般則及び冷凍則適用事業所における災害事故件数の増加の要因となっています。

分類の組み合わせで最も多いのが”疲労による冷凍設備の配管ろう付部からの漏えい”で、平成22年では3件発生しています。冷凍設備では、圧縮機の振動や間欠運転の熱サイクルによる応力が配管とバルブ等のろう付部に加わり、疲労により亀裂が入って冷媒ガス等が漏えいする事例がトレンドとなっています。

また、腐食では保温材等の被覆配管の継ぎ目から水分が入り込み、運転時の温度変化により蒸発と結露を繰り返すことにより炭素鋼配管の外面が腐食され、局部的な減肉が進行して漏えいに至る事例等が報告されています。

図2.3 設備に起因する漏えい等事故の詳細内訳(平成22年)

次に設備に起因する漏えい等の災害事故16件について、漏えい等の分類及び原因を設備の設置経過年数で表したものを図2.4に示します。設備の種類や規模及び形態により一概に論じることなどはできませんが、劣化・腐食等管理不良に起因する漏えい等の事故は設置後20年を過ぎた辺りで非常に多くなっています。その一方で、設計・構造不良や製作不良に起因する漏えい等の事故は、設置後の比較的早い時期に発生していることが分かります。

図2.4 設備に起因する漏えい等事故の設置経過年数(平成22年)

ここまでのトレンドを踏まえて、災害事故の未然または再発防止について考察します。設備の疲労については設計や施工段階で応力を緩和する措置が重要であり、設置後は応力のかかる部位を把握して日常や定期点検時のポイントに加え、経過年数を考慮して非破壊検査等の計画的な点検を実施し、評価を行った上で補修や設備の更新に活かすことが有効であると考えられます。

また、被覆配管下の外面腐食については設計・施工段階では防食材料の選定や、保温材のシール施工を確実に行うことが重要であり、設置後は経過年数により保温材を解体する、あるいは適切な非破壊検査等を実施すること等が有効であると考えられます。

神奈川県では配管の外面腐食対策について、「高圧ガス配管外面腐食検査に係る技術資料」を提供しているので、関係事業所の設備管理の参考にしてください。

ダウンロード
高圧ガス配管外面腐食検査に係る技術資料[PDFファイル/543KB]

(2) 人的被害のトレンド

高圧ガス保安法は、高圧ガスによる災害を防止することが目的であり、労働安全の観点からも人身事故を起こさない、起こさせないことは関係事業所の責務と言えます。そこで人的被害のトレンドについて、最近5年間(平成18年から平成22年)に発生した人身事故を基に考察します。

最近5年間の人身事故件数と人的被害の推移及び事故区分別割合を図3.1に示します。平成21年こそ人身事故は0件でしたが、それ以外は毎年3件から5件発生しており、この間の被害は件数で14件、死者1名、負傷者21名に上ります。

事故区分別では、消費先が8件(57%)と最も多く全体の半数以上を占め、製造事業所が4件(29%)、移動中が2件(14%)という割合になっています。消費先での人身事故が多いのが特徴です。

図3.1 人身事故の推移(左)と区分別割合(平成18年から平成22年)

次に、人身事故14件について事象別と合わせて原因別に分類したものを図3.2に示します。原因の大分類では、システムと人に起因する事故がそれぞれ6件(43%)ずつで、運転操作等に係るミスにより発生した事例が多くを占めているのが特徴です。

原因の中分類で最も多いのが操作基準の不備と誤操作による事故でそれぞれ5件ずつ、計10件発生しています。これは作業要領や手順書が不備のために必要な確認や操作が抜けてしまったり、そもそも高圧ガスの取扱いに関する意識が低いことによる誤操作等により発生しているものです。また、爆発や火災等の深刻な事象に至る事例が多いのも特徴です。

図3.2 人身事故の原因別分類(平成18年から平成22年)

さらに、人身事故14件について設備別と取扱いガス別に分類したものを図3.3に示します。設備別では容器における事故が8件(57%)と全体の半数以上を占めており、配管・継手・弁が1件(7%)、溶断・溶接設備が2件(14%)及びその他が3件(21%)という構成になっています。人身事故では容器の取扱いに関する事例が多いのが特徴です。

取扱いガス別では最も多いのが液化石油ガスの事故で5件(36%)、次いで炭酸ガスが3件(21%)、窒素が2件(14%)と続いています。特に可燃性ガスであるアセチレンや液化石油ガスでは容器の取扱いを誤り、火災等により火傷に至る事例が散見されます。平成22年には、掘削溝内での作業中にLPガス容器の取扱いを誤って、4名が重傷(火傷)を負う事故が発生しています。

ダウンロード
H22-24 掘削溝内におけるLPガスの漏えいによる火災[PDFファイル/288KB]
図3.3 人身事故の設備区分(左)と取扱いガス(右)(平成18年から平成22年)

関係事業所では、作業員などに対して容器の取扱いに関する保安教育の徹底はもちろんのこと、必要な作業要領や手順書の作成と周知、及び作業前ミーティングの実施と作業段階での安全確認等の作業管理がとても重要です。

一たび人身事故が発生すると本人や関係者はもちろん、事業に及ぼす影響も大きなものになります。関係事業所では安全を最優先に高圧ガスを取扱うことの危険性を再認識していただき、自主保安活動を推進して事故の未然防止に努めてください。

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