研究情報 2011年11月

掲載日:2016年4月1日

トウフ粕を利用した黒毛和種肥育の経済性について

はじめに

 トウフ粕は食品製造残さの一種ですが、高蛋白・高エネルギーであるため肥育牛の飼料に適しており、かつ安定的に入手可能で安価です。このトウフ粕を肥育牛に給与する事例は従来より県内で多く見受けられますが、給与量や配合割合は各農家によりさまざまです。このため、肉用牛農家からトウフ粕をどの程度給与するのが適当なのか、またどの程度まで給与可能なのか数字で示してほしいという要望がありました。
 これを受けて当所では、平成十八年度より黒毛和種肥育牛にトウフ粕を給与する場合の配合割合や飼料化処理に関する検討を行っています。

●試験の概要

 この試験は、1.トウフ粕を濃厚飼料に対して50%配合し、生の状態で給与する50%生区、2.同70%生区、さらに3.50%生区と同じ配合の飼料を乳酸発酵処理した50%発酵区、4.同70%発酵区、の4つの試験区を設けて実施しました。
 当所では慣行的に肥育牛に対してトウフ粕を50%の割合で配合しているので、この50%を配合割合の1事例として設定しました。また70%配合については、トウフ粕の多量給与の事例として設定しました。
 各試験区とも3頭ずつの黒毛和種去勢牛を用い、16ヶ月齢より32ヶ月齢まで給与して飼料摂取状況、発育状況、枝肉成績等を調査しました。

●給与飼料について

 試験で用いた飼料の配合割合及び栄養成分を表1に示しました。トウフ粕は給与する当日又は前日に豆腐工場より排出されたものを使用しました。1.及び2.の生区については、毎日午前中にトウフ粕を搬入して他の原料と均一に混合し、正午及び夕方4時の2回に分けて給与しました。3.及び4.の発酵区については、1ヶ月毎に1ヶ月分の飼料をまとめて混合して220リットルのプラスチック容器に密封し、1週間以上乳酸発酵処理したのち給与しました。
 なお飼料給与プログラムは、8ヶ月齢から15ヶ月齢まで全試験牛50%の配合割合で給与し、70%生区及び70%発酵区については16ヶ月以降に50%から70%配合割合に切り替えました(表2)。

表1及び表2

●試験結果について

図飼料摂取量表3枝肉成績表4経済性

一.飼料摂取状況(図)
 自由採食に切り替えた16ヶ月齢以降の飼料摂取量をトウフ粕の配合割合で比較すると、70%配合した試験区(2、4)は50%配合した試験区(1、3)に比べて、原物の飼料摂取量は生区、発酵区とも多くなりました。しかし70%配合では50%配合に比べて水分割合が10%以上高いため、TDN摂取量で比較すると配合割合による差は見られませんでした。
 また、発酵区(3、4)は生区(1、2)より飼料の嗜好性が高まり、50%配合、70%配合とも発酵区の方が飼料摂取量が多くなりました。
二.枝肉成績(表3)
 平均枝肉重量についてトウフ粕の配合割合で比較すると、50%生区の467kgに対して70%生区が427kg、また50%発酵区の502kgに対して70%発酵区が476kgとなり、生区、発酵区とも50%配合が70%配合を上回る結果となりました。
 枝肉格付に関しては50%生区、50%発酵区及び70%発酵区がいずれも全頭A5となり、ロース芯面積やバラ厚、BMS No.等についても3試験区の間で大きな差は見られませんでした。一方、70%生区はこれら3試験区より低い成績となりました。
三.経済性(表4)
 売上金額については、50%生区が110万円、70%生区が67万7千円、50%発酵区が113万6千円、70%発酵区が94万1千円となり、トウフ粕の配合割合で比較すると、生区、発酵区とも50%配合が70%配合を上回る結果となりました。
 また、肥育素牛の一般的な導入時期である10ヶ月齢から出荷の32ヶ月齢までの合計飼料費と、売上金額との差額を算出して比較すると、50%生区が92万円、70%生区が51万1千円、50%発酵区が93万9千円、70%発酵区が75万9千円となり、これについても生区、発酵区とも50%配合が70%配合を上回る結果となりました。
四.健康状態
 健康状態の指標として、血液中のビタミンAや生化学成分、及びルーメン液のpHや揮発性脂肪酸を3ヶ月毎に検査しましたが、全試験牛について特に異状は認められませんでした。

 

●まとめ

一.配合割合について
 経済性に関して検討すると、支出項目である合計飼料費に関しては生区、発酵区いずれについても50%配合が70%配合を上回りました。しかし、同時に収入項目である売上金額についても生区、発酵区とも50%配合が70%配合を上回り、結果的に売上金額と飼料費の差額も50%配合が70%配合を上回りました。
 今回の試験では、給与飼料以外の飼養管理条件は全試験牛同一であり、飼料費以外の支出経費について試験区間に大きな差がないと仮定すれば、生区、発酵区という飼料化処理の違いに関係なく、トウフ粕を50%配合した場合が、70%配合した場合に比べて利益が大きくなる可能性が示唆されました。
二.乳酸発酵処理について
 50%配合については、生区と発酵区の間で経済性に関して大きな差は見られませんでした。
70%配合については、発酵区が生区の経済性を大きく上回りましたが、70%発酵区と50%生区を比較した場合、経済性は70%発酵区が下回ると考えられました。
 よって今回の試験では、乳酸発酵処理による経済的なメリットは特に見られませんでした。
しかしながら、70%発酵区においては枝肉格付が全頭A5となり、またBMS No.も平均で9.3と4試験区中最高値となるなど枝肉成績が大幅に向上したことから、乳酸発酵処理により肉質が向上する可能性が示唆されました。

●おわりに

 今回は肥育牛に対するトウフ粕の給与について経済性を中心に考察しましたが、近年注目されている肉の食味性、いわゆる「おいしさ」に関する要素も経営上重要な項目の1つとなってきています。
 今後当所では肉の食味性や栄養成分などの肉質に関しても研究を進めていく予定です。
(企画研究課 水宅清二)
神奈川県

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