技術情報2013年3月

掲載日:2016年4月1日

高品質な自給飼料生産で飼料自給率をアップ

はじめに

 昨今の穀物、飼料価格の高騰などにより、畜産経営にかかる経費は増加しています。そこで自給飼料生産に取り組み、購入飼料依存率を引き下げることも経営の安定を図るための一つの方法です。
 県内でも夏作の飼料作物として、飼料用トウモロコシやソルガムが作付けられています。当所普及指導課では、県内酪農家の自給飼料ほ場で収量調査等を行い、作付けに関するアドバイスを行っています。
 また、自給飼料生産の多い地域では、毎年サイレージ共励会が行われています。それ以外の各地域で生産されたサイレージについてもサイロ開封後、発酵品質を化学分析で確認するとともに、成分分析を当所企画研究課で実施して、その成分分析結果から適切な給与方法ついてアドバイスを行っています。

1.県内で生産された自給飼料の品質と成分

・栄養価
 県内で生産された飼料用トウモロコシサイレージの成分分析の結果(図1,図2、表1)から、乾物率、TDN、CP含量ともばらつきがあることがわかります。
 また、飼料用トウモロコシの収量調査を実施したところ、登熟期により乾物率、雌穂割合に違いがありました(表2)。
 飼料作物は、その年の気候や収穫時期などにより、乾物率や子実の割合に違いがあります。子実の割合いが高ければ、デンプン含量も多くなり、栄養価値も高まります。このように同じトウモロコシサイレージでも栄養成分値にもばらつきがありますので、同量を給与しても、摂取する栄養成分量は変わってきます。そこで、自給飼料の成分分析を行い、品質や成分を把握して、給与量を調整することが大切です。図1,2飼料用トウモロコシサイレージの成分分析

トウモロコシサイレージの分析結果登熟期による乾物率と雌穂割合の違い

図3サイロの型式とペーハー

・pH
 また、サイレージはpHが4.2以下になると酪酸発酵やその他不良発酵が抑えられます。サイロの型式によるサイレージのpHを図3に示しました。全体ではpHが4.2を超えたものは、少なかったです。それぞれのサイロ型式で、ばらつきはありますが、ロールベールは比較的pHが低い傾向でした。いずれのサイロの型式でも、踏圧、密閉をしっかりと行えば、乳酸発酵によりpHが低下した良質なサイレージが出来ます。

・硝酸態窒素
 さらに自給飼料の品質として、硝酸態窒素の含有量も分析しています。家畜が過剰に硝酸態窒素を摂取すると、硝酸塩中毒になる可能性があります。予防のためには、飼料作物に硝酸態窒素が過剰に蓄積しないようにすることが重要です。土壌への過剰な窒素の投入が、植物中の硝酸態窒素蓄積の主要な原因です。
 自給飼料中の硝酸態窒素濃度が高くなってしまった場合、影響の出方は、牛によって大きく異なり、慢性的な影響についても明確な結論は出ていません。このようなことから、飼料中の硝酸態窒素の正確な危険水準を決めることは難しいですが、これまでの知見をもとにしたガイドラインが種々の機関から提案されており、硝酸塩中毒予防の目安として利用されています(表3)。
 植物は、土壌中に存在する硝酸態窒素を吸収します。光合成によって作られた糖、リン酸により、吸収した硝酸態窒素からタンパク質へと合成され、成長していきますが、家畜の生ふん尿や、窒素肥料等を過剰に施用すると、合成で使われなかった硝酸態窒素が植物体内に蓄積されます。
 草種によって硝酸態窒素の含有量に違いがあります。植物には硝酸態窒素が蓄積しやすい草種と、そうでない草種があり、飼料用トウモロコシやスーダングラスのようなイネ科牧草は比較的蓄積しやすい草種です。
 しかしサイレージに関しては、貯蔵・発酵中に一酸化窒素(NO2)や酸化窒素(NO)ガスとなり植物体中の硝酸含量は低下します。分析した結果からもガイドラインの「妊娠牛には給与しない」とされる乾物中0.2%(2,000ppm)を超えるようなものは少ないですが、乾物率の低いサイレージほど硝酸態窒素含量は高めの傾向でした(図4)。水分の高いサイレージは、若刈りのものと思われます。硝酸態窒素を吸収し、旺盛に生育している時期に刈り取られたため、硝酸態窒素含量も高くなったと思われます。
 さらに青刈り給与では、貯蔵・発酵中の硝酸態窒素含量の低下が見込めないため、より注意が必要です。
 実際に県内で栽培されている若刈りのスーダングラスや、畑作のエンバク、イタリアンライグラスなどの中には、硝酸態窒素含量の高いものも一部見られます。
 高い収量を得るだけではなく、硝酸態窒素含量を低下させるためにも、適切な施肥と、適期に収穫することは、とても大切です。適切な施肥に関しては、数年に一度、土壌分析を実施し、土壌の状態を確認することもおすすめします。

表3ガイドラインと図4硝酸態窒素含量

2.今年の夏作トウモロコシの作付けに向けて

図5飼料畑

 飼料用トウモロコシの場合、一般的に乾物収量(TDN収量)が最大になるのは黄熟期です。栽培のポイントとしては1.播種時期と播種密度、2.雑草防除などが上げられます。1.栽植密度を高めることにより、雌穂の数や一穂あたりの子実数が少なくなりますが、単位面積あたりの子実収量は増加します。しかし、1穂あたりの子実数減少により、ある栽植密度以上になると、その有用性は相殺されます。最適な播種密度は、品種、栽培する地域および、播種時期によって決定します。品種は播種時期によって適切なものを選びましょう。第620号に掲載された県飼料作物奨励品種も参考にして下さい。
 また、プランターの播種板と種子のサイズを完全に合わせ、確実な1粒点播が安定収量の決め手です。また土壌害虫の防除、鳥害対策で欠株の防止をおこないましょう。2.飼料畑では雑草が繁茂することにより、害虫の発生、収穫作業性の低下だけでなく収量やサイレージの品質の低下にもつながります(図5)。除草剤の散布は土壌処理+茎葉処理の体系を基本に、発生雑草に合った防除が基本となります。
 適用作物、使用量・希釈倍率、使用時期、使用総回数等を内容とする「農薬使用基準」を遵守するとともに、農薬を使用したら必ず「生乳生産管理チェックシート」等に記録しましょう。

3.おわりに

 今年も夏作飼料作物の作付けの時期が近づいてきました。少なからず労力や経費がかかる自給飼料栽培ですが、栄養性が高く、安心して家畜に給与できる良品質の自給飼料を生産することは、経営向上につながるでしょう。
 飼料作物の作付け体系や、肥培管理、雑草防除に関することや、自給飼料を組み合わせた適切な飼料給与に関して、改善したいと思われることがある方は、お気軽に当所普及指導課までご相談ください。

(普及指導課 齋藤直美)

神奈川県

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