技術情報2013年5月

掲載日:2016年4月1日

採卵鶏の育成期からの飼料用籾米給与による産卵性等への影響 

 世界的に穀物需給がひっ迫している昨今、トウモロコシ等の輸入飼料を国産米で代替することは飼料自給率の向上につながることから、全国的に飼料用米の生産への取り組みが急速に拡大しています。また、これに伴って飼料用米の家畜への給与技術に関する試験も数多く実施されています。
 特に、鶏は牛や豚と異なり筋胃を保有し籾米のまま消化吸収できることから、保管流通、籾すりのコスト等の給与面でのメリットが実証されています。
 しかし、既存の報告では採卵鶏の成鶏期の試験成績がほとんどで、育成期からの利用性についてはあまり検討されていません。
もし、育成期から籾米を給与することにより、鶏の筋胃が発達し栄養分の消化能力が高まれば、産卵性等の生産性も向上する可能性があるかも知れません。
 そこで、当所では東京農業大学と共同で、採卵鶏の育成期から籾米の給与試験を実施し、籾米の配合割合、給与時期の違いによる産卵性等への影響を調査しましたので、ご紹介させていただきます。
 なお、試験飼料中のトウモロコシの代替として籾米を配合すると、粗タンパク質等の栄養分が低くなりますが、環境中への窒素排泄量の低減、コストの低減にもつながることから、試験飼料の栄養補正はほとんど行いませんでした(表1、2)。 
 飼養期間は平成二十二年九月から平成二十四年三月までで、褐色鶏(ボリスブラウン)を供試しました。試験区の設定は、表3の1から7のとおりで、初生から四週齢は四八三羽、四週齢以降は三三六羽としました。
 なお、籾米の配合割合の検討では、表3の1から3、7を試験区とし、籾米の給与開始時期の検討では、表3の2、4から7を試験区として、それぞれ産卵性等を比較しました。
表123

籾米の配合割合の検討(表4)

 飼料中の主原料であるトウモロコシについて、籾米の配合割合を十%、三十%および六十%とした試験飼料を、育成期から長期間給与すると、育成率が対照区より有意に高く、また成鶏期の生存率も高い傾向にありました。籾米給与によって鶏の健康状態が改善され、生存率が高くなった可能性が考えられました。また、産卵性については、籾米給与による負の影響は認められませんでした。解剖検査では、初生期から給与開始した籾米三十%区、六十%区で筋胃重量が有意に重く、籾米六十%区では筋胃内pHが低くなりました(表5)。この結果から、籾米給与により筋胃が大きくなり胃酸がより多く分泌され、消化能力が高まっていたことが考えられました。なお、卵黄色は籾米の配合割合が高いほど薄くなりました。これは籾米にはトウモロコシに多く含まれるキサントフィルがほとんど含まれていないことによるものです。籾米給与に際して、卵黄色を濃くする場合には、卵黄着色用飼料を添加する必要があります。

籾米の給与開始時期の検討(表4)

 初生期から成鶏期まで給与開始時期を違えて籾米三十%を配合した飼料を給与すると、育成中期から給与開始した区では対照区より産卵率が低い値でした(図1)。この原因については、特定できませんでした。育成中期は後期と比べて栄養要求量が多く、籾米給与による飼料内容の急変が何らかのストレスとなったとも考えられ、籾米を育成中期からの給与開始する場合には注意が必要と思われます。
 今回の試験では、採卵鶏の育成期から成鶏期まで、栄養補正をほとんど行わずに、籾米をトウモロコシの代替にできました。また、初生から籾米を給与すると、育成率が高かったことから、健康増進面での可能性も示唆されました。
今後、飼料用米は、全国的に飼料としての利用の増加が見込まれるとともに、脂肪酸のオレイン酸が多くリノール酸が少ないなどトウモロコシと異なる特徴のある脂肪酸組成から新たなブランド鶏卵として有利販売につながっていく可能性も見込まれます。
 当所では、食品残さ等の本県の特徴を活かした未利用資源と飼料用米との併用による鶏卵の高付加価値化を目指した試験にも取り組んでおりますので、今後、成績がまとまり次第、ご報告させていただく予定です。
 
 農業技術センター畜産技術所企画研究課
 平原敏史
表45図1
神奈川県

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