技術情報2013年7月

掲載日:2016年4月1日

畜産経営の「消費電力の可視化」について

はじめに

 畜産経営では作業省力化のために様々な機械が導入されており、電力は欠かせないものとなっています。東日本大震災以降、電力供給が不安定な時期を経験し、電力需要期には電力のピークシフトやピークカットなどの節電に対する取組みが行われてきました。
 そこで畜産経営においても経営内の「消費電力の可視化」を行い電力消費の効率化が図れるかについて検討しました。

消費電力の可視化って?

 電気を使用する場合、電力会社との契約方法は主に電灯と動力の2種類があります。電灯の中には、照明用電気機器のほか、テレビ、冷蔵庫などの小型機器が含まれます。動力は、「電灯」及び「小型機器」を除く、モーター等が含まれます。
 例えば、給餌機やバーンクリーナーなどのモーターが動力に該当します。畜産経営内で消費する電力量は、電灯より動力が圧倒的に大きいので、動力による電力量を減らすことが電気代節約のポイントとなります。
 「畜舎内の作業別にどの機械をどの位の時間使っているのか?」を調査すると経営内の推計消費電力量や電力消費の傾向が把握できます。これが、「消費電力の可視化」です。

畜産経営内の「消費電力の可視化」

 当所が県内で搾乳牛36頭、育成牛14頭を飼養する酪農場で実施した「消費電力の可視化」の事例を紹介します。なお、この調査事例では、ふん尿処理施設は敷地外にあるため、本調査の対象外としました。

作業の洗い出し

 「畜舎内の作業別にどの機械をどの位の時間使っているのか?」作業内容や使用機械を洗い出すことから始めます。牛舎内の全ての電気機器について、1機械区分2機械名を洗い出します(表1)。
 その際、季節により使用する送風機や集乳車の集乳時間なども併せて書き出すことが重要です。
 次に3電源の種類4電気容量5台数を確認します。一時間あたりの消費電力量(Kwh)は、4電気容量(kw)×5台数で算出します。
 機械ごとの稼働時間帯及び稼働時間を調べ6稼働スケジュールの枠に算出した一時間あたりの消費電力量を記入します。これで洗い出し作業が終了です。
 最後に、理解しやすいようにグラフ化して可視化が完成です。

電力量調査表の記載例

「可視化」で見えたもの

 可視化により、搾乳時間帯となる7から11時と18から22時には、TMRミキサーやバーンクリーナーなどその他の動力を動かさないように作業工程を組んでいることが分かります。また、給餌作業は、搾乳作業前に行い、除ふん作業は、1日に4回実施しています。その一方で冷却器やバルク攪拌機は、搾乳開始時間から集乳時間(0時)まで稼働し続けています。
 送風機は、1台あたりの容量は0.4kWと小さいものの、牛舎内に8台が設置され、稼働時間も24時間となることから夏季の消費電力量の大部分を占めていることが分かります。
 図1から搾乳時間帯に消費電力のピークを迎えることが推察でき、夏季は、契約電力量の11kWに達する一方、夏季以外では8kWに達すると推計しました。また扇風機以外の動力が停止する1から5時に消費電力が最小になると推計できました。
図1牛舎内の飼養管理に伴う推計及び実測消費電力量

推計データの信頼性

 「消費電力の可視化」によって得られた推計値の精度を検証するため、電力監視システム計測器((株)戸上電機製作所社製の電源電力アナライザー:型式MEP-B)により、牛舎内の消費電力量を平成23年8月から12月までの5ヶ月間実測しました(図の折れ線グラフ)。
 搾乳時間帯の実測消費電力量は、搾乳開始直後が大きくなり、その後減少していく傾向が確認されました。この原因として搾乳開始直後は、生乳の冷却のため消費電力量が多く必要となり、冷却が進むにつれ機械への負荷が低下し、消費電力量が減少するものと推察されました。
 夏季以外の場合、推計消費電力量(棒グラフ)は、実測した消費電力量(折れ線グラフ)より高くなる傾向が確認されました。これは、外気温が低いためバルククーラーで生乳を冷却させるのに必要な電力量が少なくなることが理由として推察されました。
 一方、夏季の場合、扇風機のみが稼働している1から5時は、推計消費電力量に比べて、実測消費電力量が高くなる傾向が見られました。この原因は判明していませんが、羽根が埃などで汚れていたため扇風機のモーターへの負荷が大きくなり消費電力量が大きくなることが推察されました。
 以上のように推計値と実測値とに一部で差が見られるものの、可視化により得た推計データは農場での消費電力の傾向を表しており、経営内の各作業に伴う消費電力の傾向を示すのに十分な精度を持つデータであることが明らかとなりました。

電力量計による実測値

 今回は、電源電力アナライザーを用いて消費電力量を実測しましたが、この装置が無くても時間毎の消費電力量をご自分で確認することができます。商用電力は、電柱から畜舎内に取り込まれ主開閉器(契約ブレーカーとも呼ばれる)を通って各畜舎等に分電されますが、この主開閉器の前に電力量計が必ず設置されているのでこのメーターの数字を一時間毎に調べることで、今回お示ししたような消費電力量のデータが得られます。 
 ご興味がある方は是非計測してみることをお勧めします。

可視化のメリット

 今回調査した動力は、低圧電力と呼ばれ、電気料金は、基本料金、電力量料金、その他の項目から構成されます(図2)。
 消費電力の実測値から牛舎の事例では、図1に示すとおり、契約電力量11kWに対し、ほぼ契約量いっぱいの消費電力量であったため、契約量を下げることはできません。しかし、豚舎及びふん尿処理施設を調査した養豚場の事例では、図3に示すとおり、農場の契約電力量は26kWですが、時間最大消費電力の実測値は18kWで約8kWの差が見られました。このことから契約電力量を最小で18kWまで下げられる可能性があります。この養豚場では電力契約の見直しにより電気代が約10万円/年節約することができました。
図2電気料金
図3豚舎及びふん尿処理施設の時間最大消費電力量の推移

まとめ

 「消費電力の可視化」により、作業別の消費電力量が把握できるほか、日常作業を効率化したり無駄な電気代を削減できる可能性があります。これは、電気を使う場所であれば適用できるので、経営の「消費電力の可視化」に取り組んで下さい。
 最後に「消費電力の可視化」が、電気と上手なおつきあいをするきっかけとなり、電気代削減のヒントになれば幸いです。

(企画研究課 川村 英輔)
神奈川県

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