技術情報 2013年11月

掲載日:2016年4月1日

堆肥に残留した除草剤による生育障害について

 今年の夏、横浜及び藤沢市内の花壇苗生産農家で、堆肥に残留する除草剤が原因と思われる生育障害が発生しました。この農家で使用していた堆肥及び培土を用い、農業技術センターで生物検定を行ったところ、クロピラリドに起因すると思われる生育障害が確認されました。

はじめに

 被害が大きかった花壇苗農家では県内の酪農家から入手した良質の堆肥を規定より多く使用しており、この堆肥に残留していたと思われる「ホルモン型除草剤:クロピラリド」の特徴的な被害である、生育時に葉がカップ状に変形してしまうなど生育障害が発生しました。障害の強弱はありましたが結果的に数万鉢の出荷を断念したという状況でした。
 こうした牛ふん堆肥を原因とした生育障害は平成16年以降、本県も含め、長野県や東京都等全国的に散発していますが、今年神奈川県でも被害があったため、畜産農家のみなさまにあらためて情報提供することといたします。

1.クロピラリドとは?

図1クロピラリトの流れ

 クロピラリドはホルモン型除草剤としてアメリカ、カナダ、オーストラリア等で牧草、トウモロコシ、麦類等で使われています。日本では農薬として登録されていないため、日本で生産された牧草類に含まれることはほとんど考えられません。
 クロピラリドは日本国内では使用できないので、クロピラリド残留の原因は、それを使用している外国から入ってくる飼料です。
 クロピラリドを含む除草剤が散布された畑で栽培された乾草や穀物は、クロピラリドを残留する可能性が高く、それを食べた家畜のふん尿から検出されることがあります。なお、牛乳へは移行しないこともわかっています。クロピラリドは他の除草剤と異なり、堆肥化での分解が非常に遅いという特徴があり、このため堆肥に残留し易い傾向があります。そして、クロピラリドが残留した堆肥を感受性の高い植物に施肥することにより植物の生育障害が起こります(図1)。

2.クロピラリドによる生育障害ってどのようなもの?

 写真1から8クロピラリドに感受性ある植物

 クロピラリドは感受性の高い植物の場合、非常に低い濃度で生育障害が起こります。典型的なものに、トマトやサヤエンドウの葉の異常(写真1、2)、キクの頂芽の変形や摘心部の肥大、ニンジンやヒメヒマワリの葉の異常、マリーゴールドの縮葉症状などがあります(写真3から8)。障害の程度には差がありますが、強く発現した場合には株そのものが枯死する場合もあり、収穫の遅延、品質や生産量の低下等による経済的な損失につながる被害となります。

3.畜産農家としての予防策

表

 輸入粗飼料を購入する際に、クロピラリド使用の有無を販売業者に確認しましょう。
 使用していないことが確認できない場合、堆肥による生育障害が発生する可能性があるため堆肥の譲渡時、十分に注意するよう次のとおり利用者に伝えましょう。
 堆肥の施肥量に注意、特に耐性(表1を参照)の弱い品目については、圃場で2t/10a程度、培養土は容積比で20%程度。また、より慎重を期するなら、残留量の測定や生物検定を行いましょう。残留量の測定は専門の検査機関に依頼して行います(※1)。サヤエンドウ等を利用した生物検定については生産者自ら行う事ができます。結果がでるまで3週間以上かかりますので、販売する1ヶ月前には生物検定を開始する必要があります。詳しくは畜産技術所普及指導課までご相談ください。
 (※1)参考までにクロピラリドについて科学分析を行える民間の分析機関を紹介します。
  ■(一財)日本食品分析センター東京本部
   
TEL:03(3469)7131(代)
  ■(株)つくば分析センター
   
TEL:029(858)3100

4.耕種農家で可能な対策

○未然に防ぐためには キク科、ナス科、マメ科など感受性の高い作物を栽培する場合は、使用する堆肥についてサヤエンドウ等を利用した生物検定により、残留がないことが確認できます。堆肥の施用量は、圃場で2t/10a程度、培養土は容積比で20%程度までにとどめましょう。○被害が発生したら 堆肥の利用者から、クロピラリドによる生育障害が疑う情報があった場合は農業技術センターの普及指導部門に相談してください
 被害の拡散を防ぐために、障害の出た同じロットの堆肥や培土の使用は中止します。クロピラリドは水溶性で潅水により溶脱するので、花壇苗などで被害が出た場合には多めに潅水します。その後の対応については、普及指導員等の適切な指導を受けて下さい。

5.最後に

 今回、生育障害の原因となったと疑われる堆肥について、生産した酪農家のご協力を得て、過去の粗飼料給与の状況や残留の可能性について検討しましたが、明確な原因を特定することはできませんでした。しかし、その後生物検定を実施し、8月以降の生産堆肥についてはクロピラリドの残留に対する安全性が確認されています。今回の事案は一過性のものかも知れませんが、いったん失った信頼を取り戻すことはたいへんなことです。今回のような被害を未然に防止し、畜産農家と耕種農家が情報を共有し、安心して農業生産が行われるよう願ってやみません。
 この情報・写真・資料の出典は神奈川県で発生した記載事例を除き「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」(独)農業・食品産業技術研究機構、平成21年3月発行からのものです。
生物検定法や植物ごとの被害状況などより詳しい情報はこのマニュアルをダウンロードし確認することができます
*URL http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/clopyralid.pdf

(普及指導課 竹本 佳正)

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神奈川県

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