神奈川県畜産技術センター 研究情報 2004.10

掲載日:2016年4月1日

神奈川県畜産研究所 研究情報 2004年10月

「家畜ふんの簡易堆肥化技術実証試験について」 

1、はじめに
 平成16年11月からの「家畜排せつ物法」に基づく管理基準の適用にむけて、家畜ふん尿の適正な処理を行うための環境対策が進められてきました。
 神奈川県では環境農政部畜産課が中心となり平成13年度、「県畜産経営環境保全総合対策協議会」において、地区行政センター、地区農政事務所、地域農業改良普及センターの担当が自己資金等での環境対策を想定した、『簡易堆肥化施設』の検討を行いました。そして、その集大成として「家畜ふん尿処理方法の例と各種アイデア」を平成14年12月に発行しました。

2、簡易堆肥化施設とは?
 畜産経営と言っても、その状況は様々なので、環境対策を行うにあたり一様に同じ施設を設置することはないでしょう。
 例えば、飼養頭数が多く、今後も長期間経営を存続するという場合は、恒久的なふん尿処理施設の設置が推奨されます。一方、飼養頭数が少ない場合は、シート等を利用した簡易施設の利用など、工夫をすることで、対応を進めることが出来るでしょう。
 簡易堆肥化施設とは、後者のような !)@「家畜排せつ物法」に対応した !)A比較的安価で !)B設置が比較的容易(自家施工も可能)な施設であると言えるでしょう。 

3、堆肥生産のキーワード 
 簡易堆肥化に限らず堆肥生産に重要な要素は次のとおりです。
◆「前処理」
 堆肥化施設で堆肥化するときには、原料の生ふんをそのまま堆積しないで、乾燥したり副資材を混合して「前処理」をします(水分68%、仮比重0.5程度、5リットルバケツの重量で2.5kg程度)
 では、なぜ生ふんは「前処理」する必要があるのでしょうか。生ふんは水分が多く、そのままでは流れ出し、堆積する際に山にすることが出来ません。また、水分が多いと、仮比重も高く、空気が入り込めないので、嫌気状態になり、堆肥化が進まなくなります。また、ふん尿混合物は、そのまま堆積すると、約15%の廃汁が出ると言われており、その処理が大変となります。
 生ふんのままで堆肥化がスタートすれば楽ですが、労力がかからないかわりに、堆肥化が進まず廃汁処理に困るという結果になりかねません。ひと手間掛け、水分調整することで、順調に堆肥化が進行すると同時に、面積に限りのある堆肥盤を効率よく利用できます。
◆「通気性」
 また、前処理し水分、仮比重を調整することにより「通気性」が確保されます。それにより、好気性微生物の活動に必要な、酸素が供給されます。
◆「切り返し」
 しかし、好気性微生物の活動が活発になると、表面の通気性だけでは、必要な酸素は足りません。好気性微生物を活発に活動させ、有機物の分解を促進するためには「切り返し」による酸素供給が必要です。

4、簡易堆肥化技術実証試験の概要
 当所では、これらをふまえ、平成十五年度から簡易堆肥化施設実証試験を行っています。
 堆肥盤に原料のふん尿混合物で3つの山を作り、雨を防ぐため、ブルーシートと二種の通気性シートで、それぞれ覆いました。また、対照区として雨のかからない堆肥舎内にふん尿混合物の山を、被覆シートなしで作りました。さらに同じ原料を用いて堆肥舎内で「堆肥バック」による堆肥化を試みました(図1)。原料は、フリーストールから排出されたふん尿混合物(水分88%)を、乾燥ハウスで水分68%、仮比重0.5に調整して用いました。使用したふん尿混合物の量は、15頭の乳牛の21日分のふん尿に相当します。試験期間中は1ヶ月に1度切り返しを行い、3ヶ月間堆積しました。
その結果は
 試験期間中、各堆積物中の発酵温度を連続して測定しました(図2)。詳しく見ると、ブルーシートで被覆した山と堆肥バックは発酵温度が上昇しないまま推移しています。最高温度が60度以上に上昇しているのは、被覆シート無し、各通気性シートです。この、60度という温度は、堆肥化の過程で、病原菌、寄生虫、雑草の種子が死滅するのに必要な温度です。
 また、水分の変化をみると、通気性の無いブルーシートで水分が低下しませんでした(図3)。有機物の分解率は各通気性シートで高いという結果でした(図4)。

5、資材は目的別に使い分けましょう

 今回用いた各種被覆シートや堆肥バックは、価格も違えば、効果も違います(表1)。それぞれ特徴を活用して、目的別に使うことをお勧めします。
 例えば、ブルーシートは、安価で、通気性が無く、水も通さず、酸素の供給の必要が無い堆肥化の終了した製品を、屋根の無い堆肥盤などで貯蔵するのに、被覆して利用できます。
 また、通気性シートは、比較的高価ですが、通気性があるが、水を通しません。そこで屋根の無い堆肥盤などで、水分、仮比重を調整したふんを堆肥化する際の被覆に最適です。雨水の浸透を防ぐとともに、ブルーシートとは違い、堆積物表面から堆肥化時に必要な酸素が供給されます。
 堆肥バックも高価ですが、通気性があり、水分を落とすことができ、水分が落ちて扱いやすくなった堆肥化物をバックに詰めたまま流通するのに利用できます。有機物の分解率は、堆肥盤で通気性シートを被覆し、切り返して堆肥化をした物に比べると低く、流通、利用する際には注意が必要です。また遮水性はないので、屋根のある堆肥舎内などに置く必要があります。またバックは2段に積むことが出来ないので、処理には広い面積が必要です。
 通気性シートを被覆して堆肥化を行う際、堆肥盤表面から雨水が浸入してしまえば、水分の低下の妨げになります。雨水侵入を防ぐために、被覆シートは、堆肥盤より広く被覆しましょう。
 また、試験では使用しませんでしたが、通気性シートとして販売されているものの中には、穴あきのものがあるので、気をつけましょう。

6、最後に・・・
 簡易堆肥化の実証試験をすることにより様々なことがわかりました。また、簡易対応の事例はこれだけに限りません。皆さんの経営に合ったものを良く検討し、最適な方法を選択していただければと思います。その際に、この試験の結果が、多少なりとも検討の一助となれば、幸いです。平成16年度は簡易堆肥化試験で、さらに省力的に堆肥化を進めるために、切り返し作業の軽減技術について検討しています。堆積物に暗渠管を埋設し、ブロワーで短期通気することで、嫌気的になりやすい堆積物の中心部に酸素を供給することを試みています。その結果についても、今後結果がまとまり次第、順次紹介していきたいと思います。

簡易堆肥化試験の試験区の画像      図1 試験区堆積物中の温度変化のグラフ

図2 堆積物中の温度変化
堆積物の水分率の変化のグラフ    図3 水分率の変化堆積物の有機物の分解率のグラフ

図4 有機物の分解率
各資材の価格などのグラフ表1 各資材について

(企画経営部 斉藤直美)

神奈川県

このページの所管所属は 畜産技術センター です。