神奈川県畜産技術センター 研究情報 2004.11

掲載日:2016年4月1日

神奈川県畜産研究所 研究情報 2004年11月

「高品質肉牛の低コスト生産を目指して

1、稲わら代替粗飼料について
●はじめに
 我が国では大多数の肥育牛農家が稲わらを使用しており、粗飼料として欠かせないものとなっています。 しかし平成12年の中国産稲わらによる口蹄疫の発生に始まり、平成14年には古畳を原料としたわらにおける残留農薬の問題、平成15年には飼料用稲わら中の指導基準値を超えるヒ素の検出等の問題が発生しており、近年稲わらの使用に関して様々な制限が生じています。
 このため県内肥育牛農家の方々から「稲わらに替わる粗飼料の試験研究を早急に実施して欲しい」との要望が強く、これを受けて当所では、平成15年度より「稲わら代替粗飼料に関する試験」を実施しています。 
●試験内容および中間成績
 代替粗飼料の候補として、稲わらの成分・性状に近いストロー類のうち、入手が容易なイタリアンライグラスストローおよびトールフェスクストローを試験材料とし、稲わらとの比較を行いました。(以下ストローをSと表記します)
★栄養成分を比べると・・・
 イタリアンライグラスS、トールフェスクSおよび稲わらの栄養成分分析値を表1に示しました。この結果から、実際の給与に際して問題となるような大きな差は見られませんでした。
★嗜好性を比べると・・・
 試験材料と稲わらの計3草種から総当たりの組み合わせで2草種を選び、黒毛和種4頭に給与して嗜好性を比較しました。
比較方法は、2草種の合計採食量に対するおのおのの草種の採食比率を算出し、5点法により評点をつけます。これをすべての2草種の組み合わせに対して実施し、草種ごとの評点を合計しました。
結果は表1に示すとおりで、稲わらに比べ試験材料2草種の嗜好性が高いことがわかりました。なお、これはあくまでも比較した結果であり、例えば稲わらを単独で給与した場合、採食状況はごく普通であり悪いわけではありません。
★物理性(繊維のかたさ)を比べると・・・
 牛は反芻動物なので、給与粗飼料の繊維の「質」は反芻胃の状態や牛の成長・生産に大きく影響します。
そこで、アメリカの研究者Sudweeksらの方法を参考にして、粗飼料の反芻時間と採食量との比であるRVI(Roughage Value Index:粗飼料の物理性に関する指標)を3草種それぞれについて調査し比較しました。
 反芻状況を記録するため、牛の口の動きに合わせて「ON・OFF」するテープ型のスイッチを頭絡の口にあたる部分に取り付けました。反芻は非常に規則正しく行われるので特徴ある波形が記録され、採食・飲水などと明確に区別できます。これを黒毛和種4頭に実施し、1草種につき3日間、口の動きを記録し解析しました。
 結果は表1に示すとおりで、稲わらの値が他に比べやや高かったものの統計的に有意な差は見られませんでした。
★給与試験について
 試験区としてイタリアンライグラスS給与区、トールフェスクS給与区および稲わら給与区の3区を設け、各区黒毛和牛2頭を試験牛として肥育仕上げ期にあたる26から32ヶ月齢の間給与試験を実施しています。給与量は粗飼料を1.5kg/日、濃厚飼料は26ヶ月齢時点での試験牛ごとの飽食量(おおよそ12kg前後)とし、選び食いを避けるために粗飼料と濃厚飼料を十分に混合して給与しています。
 なお、この時期は血中ビタミンAが欠乏しがちで、試験牛についても26ヶ月齢時点でおおよそ20から30IU/dlと低い値であったため、給与試験期間中、1日当たり5,000IUのビタミンAを飼料に添加しています。
 イタリアンライグラスSおよびトールフェスクSについてはすでに給与試験が終了し、枝肉成績も出ています(表2)。稲わら給与区については現在も試験を実施中ですが、これまでの結果から考察すると、増体成績は問題なく、枝肉成績も良好で、少なくとも肥育仕上げ期に関してはイタリアンライグラスSおよびトールフェスクSは稲わらの代替粗飼料として十分活用できるのではないかと思われます。
 なお、経済性については試験期間中のイタリアンライグラスS、トールフェスクSおよび稲わらの価格が1kg当たりそれぞれ32.8円、32.9円、58.8円であり、肥育仕上げ期の6ヶ月間にかかる粗飼料の経費は、給与量を1.5kg/日・頭とした場合、1頭当たり税込でそれぞれ約9,300円、9,330円、16,670円となります。よって稲わらと今回使用した代替粗飼料を比較した場合、おおよそ7,000円程度の差になると試算されます。
 以上中間成績ではありますが、稲わら給与区については今年度中に給与試験を終了し、またすべての試験牛の肉質についても成分分析を実施するので、今後はそれらの結果がまとまり次第お伝えしていく予定です。

2、おからを利用した自家配合飼料について
 当所では現在、肥育牛に対して自家配合飼料を給与しており、今回紹介した試験においても濃厚飼料としてこの配合飼料を給与しています。
 調製方法は、原物重量で生のおからを5割、残りはふすま、皮付圧扁大麦、圧扁とうもろこし、ビートパルプおよび市販の肥育後期用配合飼料の5種類をそれぞれ1割ずつ配合します。攪拌機を用いて5から10分程度よく混合した後、パワードラム(サイレージ調製用のプラスチック容器、220リットル)に密封します。常在乳酸菌により乳酸発酵し、10日ほどすると飼料が完成します(開封して甘い香りがすれば大丈夫です)。
栄養成分は、表4のとおりです。肥育の前期においてはこのままを濃厚飼料として、後期においては大麦や市販配合飼料を給与量の2から3割加えてTDNを55%程度(原物割合)に調製して給与します。参考までに、このおから配合飼料を使用し始めてからの当所出荷牛の肥育成績を表3に示しました。
 このおから配合飼料は調製に手間がかかるのが難点ですが、嗜好性は抜群で、調製後密封した状態だと夏でも1ヶ月以上は保存が可能です。材料費も1kg当たり約18.3円(人件費、光熱費は除く)と非常に低コストながら、高品質な肉牛生産が十分可能な、大変優れた飼料です。興味のある方は是非試してみて下さい!

表1 栄養成分、嗜好性、物理性および経済性の比較
試験区TDNCP粗繊維嗜好性評点RVI価格
(乾物%)(乾物%)(乾物%)(分/kg)(円/kg)
イタリアンライグラスS47.19.329.9+12193.232.8
トールフェスクS47.76.440.5+4227.032.9
稲わら40.15.932.2-16267.658.8

表2 増体成績および枝肉成績
試 験 区性別体重(kg)DG枝肉枝肉重量ロース芯面積バラ厚B.M.S.B.C.S.
試験開始時試験終了時(kg/日)格付(kg)(cm2)(cm)No.No.
イタリアン5366440.64A3411557.754
ライグラスS5946820.52A5434518.183
トールフェスクS4765700.56A5367487.484
6948260.74A5542688.7103

表3 当所におけるおから配合飼料給与牛の肥育成績
出荷交配性別出荷枝肉枝肉重量ロース芯面積バラ厚B.M.S.
年度雄名月齢格付(kg)(cm2)(cm)No.
H16北仁32.0A5542688.710
紋次郎31.8A5434518.18
紋次郎31.8A5367487.48
金鶴32.2A3411557.75
H15金鶴31.6A5447647.48
照藤33.0A5426577.29
金鶴32.6A539452810
H14金鶴30.4A5429498.38
美津福29.3A5355466.29
福富30.7A4435528.16
美津福30.2A4409617.18
金鶴30.3A3432588.35
数重波29.0A3429488.64
美津福29.9A3372537.44
金鶴31.7A3319466.54

表4 おから配合飼料の栄養成分
栄養成分(原物%)
TDN45.5
CP15.6
粗脂肪5.6
粗繊維8.7
水分46.5

(畜産工学部 水宅清二)

神奈川県

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