神奈川県畜産技術センター 研究情報 2005.01

掲載日:2016年4月1日
神奈川県畜産研究所 技術情報 2005年1月

「細断型ロールベーラを用いたトウモロコシサイレージの調製技術」 

  夏の暑い時、トウモロコシの収穫、サイレージの調製作業が、「もっと楽にならないかなあ。」と、経験された人であれば誰でも感じると思います。また、折角調製したサイレージが二次発酵による品質の低下で、時には捨ててしまわなければならないこともあるかと思います。この様な理由で、トウモロコシの作付けを敬遠する人もいるのではないでしょうか?
 牧草では、すでにロールベールサイレージ体系が普及し、収穫・調製の省力化が図られています。そこで、トウモロコシでもロールベールサイレージ体系への期待が高まり、機械の開発が行われていました。平成15年に、ようやく細断型ロールベーラとしてトウモロコシなど長大作物に対応したロールベーラが完成し、平成16年、(株)タカキタ及びスター農機(株)から同時に市販されました。
 そこで、畜産研究所では、その作業性や経済性について検証し、県内農家で導入する際の検討材料を提供することを目的として、細断型ロールベーラを導入し、平成16年から18年の3年間実証試験を行います。今回は、平成16年度の中間成績について報告します。

○トウモロコシのロールベールサイレージ体系の概要
 
当所で行っている細断型ロールベーラを用いたトウモロコシサイレージの収穫・調製体系を図1に示しました。トウモロコシの収穫・調製はワンマン作業で行います。コーンハーベスターで細断され吹き上げられた材料は、ロールベーラのホッパ部で受け、ホッパ底部の供給コンベアで成形室に送られ、成形室でφ85cm×85cmの円柱形に高密度で成形され、ネットで外周を結束して、放出されます(収穫・調製)。放出されたロールベールは、対応したラップマシーンでラッピング(密封)し完成です。ロールベールサイレージは、都合に合わせてほ場から保管場所に運び(運搬)、給与するまで置いておきます(保管・貯蔵)。この様に、細断型ロールベールサイレージは、ほ場や牛舎周辺の空いている土地にそのまま置いて保管できるので、従来のサイロは必要ありません。
 
この体系を実施するにあたって当所で導入した農機具を表1に示しました。汎用トレーラーは、自走式ラップマシーン及び完成したロールベールサイレージの運搬に使用しました。ベールグラブは、トラクターに付けているフロントローダーのバケット部分のみ交換するタイプのものです。完成したロールベールサイレージの積み下ろしなどに使用しました。なお、この他にトラクター、コーンハーベスターは既存のものを使用しました。

○作業効率の評価
 細断型ロールベールサイレージ体系(以下ロールベール体系)と従来体系との作業効率を比較した結果を表2に示しました。従来体系は、一条刈りコーンハーベスターを装着したトラクターにトレーラーを牽引したワンマン作業で収穫し、幅2.5m奥行き3.0m深さ4.0mの地下式サイロに投入し、人力で踏圧した後、ビニールで密封しました。
 
Aほ場及びBほ場はロールベール体系、Cほ場は従来体系で作業しました。作業時間に影響を及ぼす要因に違いはありますが、10a当たりの作業時間は、従来体系では1時間2分なのに対し、ロールベール体系は45から50分と短縮されました。従来体系の収穫作業時間は、ほ場からサイロへの移動時間105分を除くと、53分で、ロールベール体系とほぼ同じでしたが、ほ場とサイロの移動時間が収穫・調製当日の作業時間として必要です。一方これに対してロールベール体系では、完成したロールベールサイレージを都合に合わせて後日運搬できるので、ほ場とサイロの距離が長くなるほど当日の作業効率は良くなります。
 
また、作業人数は、ロールベール体系では3人でしたが、実質的にはトラクター1名、ラップマシーン1名の2人です。従来型では、トラクターのオペレーターの他、踏圧作業は2から5人で行いました。ロールベール体系は、すべて作業が機械化されているため、従来体系に比べ労力が軽減されていました。
 当所のコーンハーベスターは一条刈りのため、トラクターが周回する際、放出されたロールベールトラクターの通り道をふさいでしまうため、ラップマシーンのオペレーターと2人同時に作業する必要がありました。

○消耗品のランニングコスト
 ロールベール体系で使用する消耗品は、表3に示した通りで、成形したロールベールを結束するネット及び密封するラップフィルムが必要です。これら消耗品は、他社製の製品にも対応していますが、今回は!)潟^カキタの製品を使用しました。
ラップフィルムはラップマシーンに2本同時に装着し、通常6層巻きですが、今回の試験では、長期保存性を検討するため、8層巻きとしました。8層巻きした場合、2本で約55個のロールベールサイレージが密封できます。また、ネットは1本で約150個のロールベールサイレージが結束できます。これら消耗品の経費を、定価で試算すると、ロールベールサイレージ1個当たり約800円となり、ロールベールサイレージの1個当たりの重量を350kg、乾物率及び現物中TDN含量をそれぞれ27.2%及び18.4%とすると、乾物1kg当たり約8円、TDN1kg当たり約12円程度となります。この他に、トラクターやラップマシーンの燃料が必要です。

○トウモロコシのロールベールサイレージの発酵品質
 
調製方法の違いによるトウモロコシサイレージの発酵品質の違いを表4に示しました。ロールベールは、ロールベール体系で調製したもので、地下式サイロは、従来体系でいずれも当所で調製しました。ロールベールは開封時に、地下式サイロは、開封時(上段)、中段及び下段からサンプリングしたものについて分析しました。ロールベール、地下式サイロともにV-scoreは80以上で良好な発酵をしていることがわかりました。現在のところ、ロールベールと地下式サイロとの間に発酵品質の差は認められませんでした。今後、夏場や長期保存した場合の品質について検討します。

○トウモロコシのロールベールサイレージの可能性
 細断型ロールベーラを用いた、トウモロコシサイレージの調製技術は、他の機関等で得られたデータを含めて検討すると、トウモロコシの収穫・調製省力化やサイレージの高品質に、有効な技術であると考えられます。
 細断型ロールベーラは、決して小さな機械ではないので、ほ場の面積やトラクターの馬力等を考慮し、30a以上のほ場では、ワンマン方式の他、コーンハーベスターと細断型ロールベーラを別々のトラクターに付けて作業する併走方式、また、それより小さいほ場では細断型ロールベーラの位置を固定し、収穫したトウモロコシを運び入れる定置方式など、ほ場や所有している農機具などの状況にあわせた利用が可能です。
 また、コーンハーベスターが一条刈りでは、同時に2名が作業しなければ作業効率が非常に悪くなりますが、二条刈りの場合は、放出されたロールベールは周回するトラクターの通り道からずれるため、まず収穫を終わらせて、次にラッピングをすれば1人で収穫・調製作業が可能になります。ロールベール作成24時間後にラッピングしても、サイレージの発酵品質には問題ないという他県でのデータもあります。
 トウモロコシのロールベールサイレージ体系は、導入にあたって事前に実際に機械を見て、試して自分の経営に有効かどうか見極めることが重要だと考えます。来年もできる限りデモンストレーションを行っていきたいと考えますので、ご参加いただき判断材料としていただければと思います。また、機械は、畜産研究所にありますので、興味がある方は一度ご覧ください。
細断型ロールベールによりトウモロコシを収穫・調製している画像矢印
収穫・調製(トラクターと細断型ロールベーラ)
自走式ラップマシーンでロールベールを密封している画像矢印
密封
(自走式ラップマシーン)


ロールベールを輸送している画像
運搬矢印
ロールベールの貯蔵風景の画像
貯蔵・保管
図1 細断型ロールベーラを用いたトウモロコシサイレージの収穫・調製体系

表1 畜産研究所で導入した農機具
種  類定価
(税込:千円)
備考
細断型ロールベーラ3,622(株)タカキタ
自走式ラップマシーン2,772(株)タカキタ
汎用トレーラー703スター農機(株)
ベールグラブ533(株)丸久製作所、グラブ部分のみ
合  計7,630    

表2 細断型ロールベールサイレージ体系と従来体系との作業効率の比較
体  系ロールベール体系従来体系
ほ  場ABC
面   積 (a)504070
収 穫 日平成16年8月12日平成16年9月2日平成16年9月6日、8日
品   種36B08SH0800NS99A
収穫量(kg/a)448402.5514.3
乾物率(%)31.725.526.5
乾物収量(kg/a)142102.6136.3
ロール個数(個)6446   
ロール重量(kg/個)350350   
総作業時間(時:分)3:463:217:15注1
10a当たり作業時間(時:分)0:450:501:02
作業人数(人)333から6注2
注1)Cほ場とサイロ間の1回の移動時間は約7分で、合計で105分程度であった
注2)Cほ場の作業人数は、作業中変動した

表3 ロールベール体系で使用する消耗品の価格
種  類定価(税込:円)備 考
ラップフィルム注115,750(株)タカキタ 50cm幅
ネット注234,650(株)タカキタ 100cm幅
注1)ラップフィルムは、8層巻きの場合2本でロール約55個作成
注2)ネットは、1本でロール約150個作成

表4 トウモロコシのロールベールサイレージの発酵品質の違い
  サイロ形式   有機酸含有量(FM%) pH   VBN/TN
  注1(%)   
V-score
注2   
乳酸酢酸プロピオン酸酪酸
ロールベール1.550.470.000.003.637.1893.6
地下式サイロ1.900.410.000.003.589.3989.6
注1)TN(全窒素)に対するVBN(アンモニア等の揮発性塩基態窒素)の割合、酪酸発酵することにより増加する
注2)V-score(Vスコア)、サイレージの評点、80以上は良、80から60は可、60以下は不良

(畜産工学部 折原健太郎)

神奈川県

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