神奈川県畜産技術センター 研究情報 2005.03

掲載日:2016年4月1日

神奈川県畜産研究所 研究情報 2005年3月

「活性汚泥浄化槽を活用した畜舎排水と臭気の同時処理システムの開発」 

  県畜産課の集計では、県内の畜産経営に係る苦情の7割以上が悪臭関連の苦情です。畜産環境問題の解決には、家畜のふんや尿汚水の適正処理に加え、臭気対策が重要となっています。
これまでは堆肥化技術、汚水浄化技術、脱臭技術が別々に開発されてきました。畜産農家は堆肥化施設、浄化施設、脱臭施設をそれぞれ設置する必要があり、畜産経営にとって大きな負担になっています。そのため、優先順位が低い脱臭施設の導入を控えたり、不十分な技術を導入したりすることが多く、これが悪臭の苦情がなかなか減らない結果を招いています。
そこで、脱臭に係る施設経費を削減して臭気対策を進めるため、畜産研究所では活性汚泥浄化槽を使用し畜舎排水の浄化と臭気の脱臭を同時に行う処理システムの開発に取り組んでいます。

★畜舎排水と臭気の同時処理システム
このシステムは、次の3種類の技術から構成されています(図)。
1)堆肥化施設からの排気のシャワーリング脱臭に関する技術
2)浄化処理水を用いた畜舎内臭気の発生抑制に関する技術
3)高窒素負荷における活性汚泥浄化槽の浄化機能維持に関する技術
この研究では、それぞれの技術的課題の解決を図るとともに、3種類の技術が一体化した同時処理システムの開発を目標としています。
活性汚泥浄化槽を活用した畜舎排水と臭気の同時処理システムの図

              図 活性汚泥浄化槽を活用した畜舎排水と臭気の同時処理システム

★共同研究グループによる研究の推進
当所では、今までに自動運転による回分式家畜用活性汚泥浄化槽を開発し、県内外に普及させてきました。また、臭気対策として微生物脱臭装置や光触媒を用いた脱臭技術の開発を行っています。
しかし、同時処理システムの開発には、前述した3種類の技術的課題を解決しなければなりません。
そこで、当所に加えて畜舎排水の浄化や畜産臭気の脱臭に関する技術や知見の蓄積がある(独)畜産草地研究所と日本獣医畜産大学の3者による共同研究グループで研究を進めています。なお、この研究は、農林水産省の提案公募型研究である「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」に応募し、平成15年度に採択されました。

★研究内容
それでは、研究内容を以下に紹介します。
1)堆肥化施設からの排気のシャワーリング脱臭に関する技術
密閉型強制発酵機の排気には、高濃度のアンモニアが含まれています。この排気に活性汚泥浄化槽の浄化処理水をシャワーして水溶性であるアンモニアを捕捉し、排気の脱臭を行います。アンモニアが溶け込んだ脱臭廃液は、最終的に浄化槽で処理します。
1)の研究では、浄化処理水による排気の効率的な脱臭方法を確立するとともに、シャワー後の脱臭廃液中に含まれるアンモニアの処理技術を検討しています。
当所でのシャワーリング脱臭試験では、豚ふんを処理する密閉型強制発酵機の排気中のアンモニアを534ppmから9ppmに、低減することができました。
2)浄化処理水を用いた畜舎内臭気の発生抑制に関する技術
これまで、畜舎床面の水洗や除塵のための噴霧をおこなった研究報告はありますが、浄化処理水を用いて詳細な検討を行った例はありません。
2)の研究では、まず畜舎での臭気の発生ポイントを特定するとともに、管理作業と臭気の発生との関連を調査しています。
さらに、浄化処理水を畜舎に噴霧したり、洗浄水に使用することで畜舎臭気の発生を抑制する技術を検討しています。
なお、この2)の研究は(独)畜産草地研究所の畜舎で実施しています。
3)高窒素負荷における活性汚泥浄化槽の浄化機能維持に関する技術
一般に、活性汚泥浄化槽では畜舎尿汚水中の有機物(汚れ)を微生物により浄化処理しています。
一方、シャワーリング脱臭廃液や浄化処理水による畜舎洗浄水にはアンモニアや硝酸などの無機態の窒素が多く含まれます。これらを浄化槽に投入すると、窒素の負荷が高くなります。
3)の研究では、畜舎尿汚水に加えて、畜舎洗浄水や脱臭廃液を活性汚泥浄化槽で処理する際に、高窒素負荷の状態が活性汚泥の微生物に与える影響を実験により解析します。
さらに、活性汚泥の浄化能力を低下させない条件の検討も行います。
今までの試験から、脱臭廃液を直接浄化槽に投入するよりも、一旦脱臭廃液に含まれる微生物によりアンモニアを分解してから浄化槽に投入する方が、活性汚泥の微生物に与える影響が少ないことがわかってきました。

★同時処理システムの実証
3種類の技術を一体化させた同時処理システムを構築し実証するために、当所に肥育豚120頭規模の実証プラントを設置しました。
実証プラントでは、すでに豚舎尿汚水の処理を開始しました。各研究から得た知見を基に、来年度からは脱臭廃液の処理も開始し実用化に向けたデータの集積を開始します。

★悪臭苦情の解決に向けて
家畜排せつ物の適正な管理・処理については、いわゆる家畜排せつ物法が昨年11月から完全施行されました。待ったなしの畜産環境問題、次の大きな課題は臭気対策です。
本研究の最終目的は悪臭苦情の解消です。研究の成果により畜産経営が抱え共通の問題となっている悪臭への対策が進むよう、技術開発を進めています。
(企画経営部 田邊 眞)

神奈川県

このページの所管所属は 畜産技術センター です。