神奈川県畜産技術センター 研究情報 2005.09

掲載日:2016年4月1日

神奈川県畜産技術センター 研究情報 2005年9月

「LCAを用いた環境影響評価の取り組みについて」

今年の三月三十一日、農林水産省は、農業者が環境保全に向けて最低限取り組むべきこととして「環境と調和のとれた農業生産活動規範」を策定しました。(この農業規範の概要は、今年の6月号に詳しく掲載されていますので参照下さい。)
 この規範には、家畜の飼養・生産農家に対しての基本的な取り組みの点検項目が示されており、その5番目の「エネルギーの節減」として、「温室効果ガスである二酸化炭素の排出抑制や資源の有効利用等に資するため、畜舎内の照明、温度管理など施設、機械等の導入に際して、不必要・非効率的なエネルギー消費がないよう努める。」と明記されています。
 しかしながら現状では、エネルギーの効率までを考えて、家畜を飼養したり、畜舎やふん尿処理施設を建設したりはしていません。
 例えばふん尿処理施設を建設する際、その施設の機械設備の性能、建設コスト、維持管理コストなど、主に金額を中心に検討し、選択をしていると思います。
 同じ堆肥を生産するにしても、施設建設の金額が同じであった場合、多量の化石エネルギーを使用する施設と、それほど化石エネルギーを使用しない施設があれば、後者を選択する方に気持ちが傾かないでしょうか?(図1・2)

堆肥化施設AとBの比較項目の図施設AとBのレーダーチャート比較の図

つまり、経済的にも化石エネルギー消費量の面から見ても有効な施設(=地球に優しい施設)を選択することは、単純な省エネよりも一歩進んだ「地球レベル」の環境に優しい機械・施設の導入につながることになるのです。
 このような施設を農家の方が導入し、エネルギーの節減に取り組むことが出来るよう、現在、LCAを用いた環境影響評価の取り組みを行っています。
 この環境影響評価を行うためのキーワードであるLCAとは、「ライフサイクルアセスメント」の略です。日本語にすると、「長期的・総合的環境影響評価」となります。 
 一般的には、ある製品の一生、原材料の採掘、加工、製造、物流、消費、再利用、リサイクル、廃棄処理の一連の過程、言わばゆりかごから墓場までの環境影響を評価する手法と言われています。
 例えば、この神奈川県畜産情報は、どのように作られているのか考えてみましょう。
(1)まず紙の原料となる木を切り出し、工場へ輸送します。(ここでは、のこぎりやトラックの使用があり、燃料は軽油を使用します。)
(2)次に工場へ搬入された原料から紙を製造します。(大量の水や薬品を使用し、機械を動かすために電気を使います。そして、汚れた水が副産物として生まれます。)
(3)さらに印刷をします。(印刷機使用の為に電気を使います。もしかしたら、印刷を失敗した紙もゴミとして出ているかもしれません。)
(4)読者へ送付し、畜産情報が読まれます。(輸送としてトラックを使用し、燃料が消費されます。)
(5)読まれた紙面は、いずれはゴミとなり、ごみ収集場へ運ばれ焼却処分されます。(燃料の使用と低温焼却であればダイオキシンの発生があります。)
 つまり、ひとつの製品の「原材料」からその製品が「廃棄」されるまでの流れの中で、化石エネルギー(軽油、灯油など)をどれぐらい使っているのか、またどんな汚染物質がでているのかを評価する手法です。(図3)
ライフサイクルアセスメントの略図

 今年度から当センターでは、ふん尿処理技術の評価にLCA手法を応用した研究を始めました。
 施設・機械の評価をしても、それを利用して作った堆肥の行方まで考えなければ、持続的で環境に優しい畜産業とは言えません。
 そこで、最終的には、耕畜連携を見据えた堆肥の循環もLCAで評価していきます。 将来的には、図4に示したような大きな循環の絵が描けるような提案が出来るよう、研究を進めていきます。
 私は、神奈川県歴1年という新人で、神奈川の農業を勉強中ですが、逆に外部から神奈川の農業を客観的に見ることができる視点を大事にして、農業の持続的な発展のためにがんばって行きたいと思います。
 研究の過程で、皆様の農場にも伺うことがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、今後の研究成果に関しましても、機会があればこの紙面をお借りして報告させて頂きます
(企画経営部 加藤博美)
持続型都市農業のイメージ図

神奈川県

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