神奈川県畜産技術センター 研究情報 2006.02

掲載日:2016年4月1日

神奈川県畜産技術センター 研究情報 2005年2月

細断型ロールベーラを用いたトウモロコシサイレージの調製技術

 牧草ではすでに確立した収穫・調製技術としてロールベールサイレージが広く普及していますが、トウモロコシ等の長大作物を対象にしたロールベールサイレージ体系として細断型ロールベーラが近年開発されました。
 畜産技術センターでは、平成16年に細断型ロールベーラを導入し、その性能について実証試験を実施しています。
 細断型ロールベーラの特徴として、(1)トウモロコシの収穫調製作業が少人数でできる、(2)高品質のサイレージが調製できる、(3)2次発酵が少ない等が宣伝されており、興味を持つ人も多いかと思います。
 そこで、今回は昨年に引き続き畜産技術センターで実施している試験の状況についてお知らせします。

二条刈りコーンハーベスタとロールベーラでのトウモロコシ収穫の画像
 写真1 二条刈りコーンハーベスタを用いた
      ロールベール体系による
      トウモロコシの収穫作業 
ほ場のロールをラッピングマシーンでラップするようす
写真2 収穫後にまとめてラッピング

省力化の検討
 細断型ロールベーラと一条刈りコーンハーベスタを用いて収穫作業した場合は、成形し放出したロールベールがトラクタの進路をふさぐため、速やかにどけることが必要で、作業効率を考えると、2人で作業する必要がありました。しかし、二条刈りコーンハーベスタを用いた場合、成形したロールベールがトラクタの進路をふさぐことがなくなり、ロールベールをどけなくても連続して走行が可能でした(写真1)。このため、全てのトウモロコシを収穫後、ラッピングマシーンにより密封を行うことができ、1人で全ての作業をすることができました(写真2)。この時の10a当たりの作業時間は53分でした。(表1)

表1 ロールベール体系と従来体系の作業効率の比較
ロールベール体系従来体系
作業機械細断型ロールベーラ
 +2条ハーベスタ
 +90psトラクタ
自走式ラップマシーン
細断型ロールベーラ
 +1条ハーベスタ
 +90psトラクタ
自走式ラップマシーン
1条ハーベスタ
 +90psトラクタ
ワゴン
 +84psトラクタ
収穫量(t/10a)3.824.534.57
10a当たり作業時間(分)534530
作業人数(人)123から6
10a当たり総労働時間(分)注15390120 注2
注1)10a当たり作業時間×作業人数   注2)作業人数は4人で計算した

 一条刈りコーンハーベスタを用いた作業では、10a当たりの作業時間は45分で、作業人数は2人でした。
 一方、従来体系(ハーベスタとトレーラが併走し、地下サイロに投入する体系)では、10a当たりの作業時間は30分で、作業人数は3から6人でした。
 そこで、作業人員を考慮した10a当たりの総労働時間(作業時間×人数)で比較すると、ロールベール体系で、二条刈りコーンハーベスタ利用では53分、一条刈りコーンハーベスタ利用では90分であり、従来体系の120分と比べて短縮されたことになります。このことから、ロールベール体系の導入により、少人数化・省力化が可能であると考えられました。
 また、従来体系の場合、今回の試験では、畜産技術センター内のほ場を使用したため、ほ場とサイロの移動距離は短く約7分程度でしたが、ほ場とサイロの距離や交通状況などで移動時間が長くなるほど作業時間が延長され、よりロールベール体系との差が大きくなると考えられます。

2次発酵なしの高品質サイレージ
 細断型ロールベールサイレージは、機械で約350kgのトウモロコシを高密度に梱包しており、給与時に開封していくため、高品質で、開封後の2次発酵の可能性も非常に少なくなるとされています。
 そこで、地下サイロで調製したサイレージとロールベールサイレージの発酵品質を比較するため、各サイロの概要を表2に示しました。

表2 サイロ概要
サイロ形式ロールベール地下サイロ
円柱形立方形
大きさ φ85cm×85cm2.5m×3.0m×4.0m
容積(m3)0.4830
詰め込み重量(kg)35018,000
詰め込み密度(kg/m3)730600

 詰め込み密度は、ロールベールは730kg/m3で、地下サイロは600kg/m3でした。詰め込み密度は、高い方がよい発酵をするとされていますが、ロールベールは地下式サイロ以上の密度があり、十分な詰め込み密度であると考えられました。
 これらサイロを使って調製したサイレージの品質評価のためのサンプリングは、使用時を想定し、ロールベールは開封直後に、地下サイロは1基から開封直後の上段と、中段まで使用した時、下段まで使用した時と、3カ所ずつ採取しました。地下サイロは、10月から5月まで使用し、1基は開封から1ヶ月程度で使い切りました。

表3 トウモロコシサイレージの発酵品質
サイロ形式有機酸含有量(FM%)pHV-score注1
乳酸酢酸プロピオン酸酪酸
ロールベール1.43±0.260.37±0.21n.d.n.d.3.70±0.0994.4±3.43
地下サイロ1.43±0.520.61±0.290.02±0.08n.d.3.76±0.2483.0±15.51
注1)V-score(Vスコア):サイレージの評点、80以上は良、80から60は可、60以下は不良

 発酵品質を表3に示しました。ロールベール、地下サイロともに、酪酸の生成はなく、よく乳酸発酵し、pHも十分低く、発酵品質の目安となるVスコア(V-score)の平均も80以上であり、良質な発酵をしていましたが、地下サイロの方には品質のバラツキがやや多いことが分かりました。
 そこで、調製後月数と発酵品質の関係を見ると、ロールベールは調製後12ヶ月までVスコアは全て80以上でしたが、地下サイロは調製後7ヶ月を過ぎるとVスコアが低くなるものが多くなりました(図1)。
 また、開封時期と発酵品質の関係を詳細に見ると、ロールベール(図2)は、開封時期にかかわらず、常にVスコアは80以上でした。
 一方、地下サイロ(図3)は、10月から2月までの気温の低い時期に開封したものは開封後日数が発酵品質に影響しませんでしたが、3月以降暖かくなってくると、開封直後の上段は良好だったものが、中段、下段と開封後日数が経つにつれ発酵品質の低下(Vスコアの低下)が見られ、2次発酵が認められました。
トウモロコシサイレージV-score分布グラフ
                 図1 トウモロコシサイレージのV-scoreの分布
サイロ開封時期と発酵品質の関係グラフ(ロールベール)
          図2 サイロ開封時期と発酵品質の関係(ロールベール)
サイロ開封時期と発酵品質の関係グラフ(地下サイロ)
           図2 サイロ開封時期と発酵品質の関係(地下サイロ)

 この様に、細断型ロールベーラの特徴は、畜産技術センターでの実証試験により確認できました。
 今後は、ほ場の大きさや作業方法に加え給与時の作業性等について調査する予定です。
 機械は、畜産技術センターにありますので興味のある方は是非ご覧下さい。
(畜産工学部 折原健太郎)

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