神奈川県畜産技術センター 研究情報 2006.03

掲載日:2016年4月1日

神奈川県畜産技術センター 研究情報 2006年3月

植物と鹿沼土を用いた家畜用浄化槽処理水中の窒素・リンの低減

1.はじめに
 私たち人間は、生活環境から排出される生活雑排水によって周辺の河川や湖(例えば琵琶湖や霞ヶ浦)の水環境を悪化させてしまいました。これは、生活排水中にリンなどの水環境負荷物質が大量に含まれているため、これが流入した湖等が富栄養化して汚染が進んでしまったものです。
 しかし、現在では水質を浄化する様々な試みが行われ、その効果で水質が改善しています。その試みの一つとして、植物を使った水質の浄化を目にしたことはありませんか?湖岸や川岸の植物や土の中の微生物は、水環境を浄化する能力を持っているので、これは自然の自浄能力を最大限利用した浄化方法と言えるでしょう。

2.家畜用浄化槽では
 私たちが用いている家畜用浄化槽から排出する処理水中には、窒素やリンのような水環境負荷物質が含まれていますが、浄化槽の運転方法を工夫することで窒素が低減することは平成15年9月号でお話ししました。
 一方リンの除去については、運転方法の工夫だけでは大きな低減化が図れませんでしたので、さらなる浄化を試みる必要があります。
 そこで当センターでは、前述のような植物の浄化機能と鹿沼土への吸着能を組み合わせたバイオジオフィルター(BGF)水路を設置し、家畜用浄化槽の処理水中の窒素・リンの低減を試みました。(写真1)。

バイオジオフィルター水路の画像
写真1 BGF水路全景
鹿沼土をいれたカゴ(水路に沈める)の写真
写真2 鹿沼土を充てんしたカゴ

3.試験施設の概要
 BGF水路は、長さ2.7m×幅30cm×深さ30cmの水槽を4つつなぎ合わせて、約11mの長さの水路としました。水槽の中には写真2のようにカゴの中に鹿沼土を敷き詰めたものを配置し、鹿沼土に植物を植えた植物-鹿沼土区と、植物を植えない鹿沼土区の2列を用意しました。水路内では、底面から約15cmの水位で水が流れる構造としました。水路で用いた鹿沼土は、1列につき180kgを充填し、試験期間中は交換を行いませんでした。
 当センターの回分式浄化槽で1時間曝気+1時間停止の間欠運転により、約22時間かけて豚舎汚水を浄化処理した処理水をBGF水路に1日約450リットル流しました。
 またBGF水路全体をハウスで覆い雨などが入り込まない構造としました。
4.試験結果の概要
 BGF水路での浄化能力は、植物-鹿沼土区と鹿沼土区両区ともに窒素で40%、リンで60%の除去率を示しました。また窒素・リンの除去以外の副次的な効果として処理水の着色程度を見る色度について50%の低減が見られるとともに、BODやCODと言った水質についても改善効果が見られました。
 BGF水路に流入及び排出される窒素とリン収支から鹿沼土と植物への吸着及び吸収量を算出しました。植物への窒素及びリンの吸収量は小さく鹿沼土への吸着量が主であり、その1日あたりの除去量は、窒素が2.8g、リンが0.4gでした(図1)。

BGF水路内の窒素とリンの収支説明図
            図1 BGF水路内の窒素・リン収支

 このようにBGF水路では、家畜用浄化槽処理水中の環境負荷物質である窒素及びリンの低減効果を示しましたが、試験後半に除去率が低下する傾向が見られました(図2)。これは鹿沼土へ固形物が目詰まりしたためと考えられ、固形物対策を講じる必要があることが解りました。
 また、BGF水路で様々な植物の栽培を試みたところ、中でもミニトマトやシシトウは、生育も良好で収穫量も確保でき、BGF水路に適した植物でした(写真3)。

植物-鹿沼土水路のリン収支のグラフBGF水路内で育てたミニトマトの画像

写真3 BGF水路内で育てたミニトマト

5.最後に
 試験で用いたBGF水路の終末には、ここで処理した水のみでメダカやヌマエビを飼育する水槽があります。
 全国から集まる見学者に見てもらい、汚水処理技術だけでなく「水の浄化度合い」や「安全性」をアピールする環境教育の場として活用しています。
 周辺住民に対するPR効果がとても大きいと考えられますので、取り組んでみたいとお考えの方は、是非見にいらしてください。
 (企画営部 川村英輔)

神奈川県

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