神奈川県畜産技術センター 技術情報 2006.04

掲載日:2016年4月1日

神奈川県畜産技術センター 技術情報 2006年4月

浄化槽をうまく管理するには日ごろの観察が大切です」

 都市化が進み、住宅区域が畜舎のすぐ側まで迫っている農場が多い神奈川では、都市と畜産経営との共存を図るため、浄化槽の設置に早くから取り組みました。浄化槽は、浄化機能を発揮する微生物が酸素を必要とするかしないかによって好気式及び嫌気式浄化槽に分けられたり、さらに好気式の場合、汚水の流入方法や運転方法によって回分式及び連続式浄化槽などに分けられます。このようなさまざまな処理方式の家畜用浄化槽が畜産農家に設置されています。
 農家に設置された浄化槽が、適正に維持・管理され、浄化処理ができるように、各市町等では、畜産農家により浄化槽維持管理研究会等が設立され、浄化槽設置農家を対象に維持管理共励会等を開催し、意識の向上と管理技術の向上が図られています。市町により異なりますが、定期的に共励会や巡回指導会が開催されています。
 畜産技術センター普及指導部では、その供励会や巡回指導に参加していますので、巡回している中で気がついたところを述べてみたいと思います。

1.夏と冬の管理方法
 浄化機能を有した微生物の集まりである活性汚泥は生き物ですので、外気温が低下する冬季の管理が難しく、全般的に処理能力が低下する傾向にあります。また、畜舎から排出される汚水量やBOD濃度(汚れ具合)も季節によって大きく変動するので、希釈水量の調整など活性汚泥の働きに対応した管理が必要となります。

2.機械等が故障した場合の対応
 振動篩やポンプ等の機械が故障した場合に、即座に対応する農家とそのまま放置する農家が見られます。活性汚泥は生き物ですので、そのまま放置すると浄化機能が低下します。特に振動篩は、汚水中の固形物を除去するとともにBODを除去する機能もありますので、篩の網が切れてしまっていたり、振動用のモーターが故障した場合には、速やかに交換しましょう。

3.管理意識の差が浄化機能に与える影響
 農家により維持管理技術や管理意識に差が見られます。日ごろの細かな観察が行き届いた浄化槽は、透明な処理水にまで浄化されています。また、沈砂槽や振動篩など浄化槽周辺の清掃が行き届いている農家も順調な運転ができている傾向があります。
 それに対して、機械まかせにしている農家では、活性汚泥の浄化機能が思うように発揮しておらず、十分な浄化処理できていない場合も多く見られます。

4.曝気槽の泡の観察
 曝気槽の発生する泡の観察も浄化槽の状況を知る方法の一つです。曝気槽では、空気を強制的に水の中に溶け込ませていますので、まさに泡を立てている状態です。
 この泡の発生は、活性汚泥の状態が良い場合には、すぐ消えてしまいますが、泡が多く発生し、なかなか消えない場合には、浄化処理がうまくいっていないことを示しています。(写真1)
 一般的には、浄化槽内に流入するBOD量が多すぎることと、汚水の希釈水量が不足していることが考えられます。また、畜舎内でふん尿分離が悪い場合も同様の症状が見られますので、畜舎内でのふん尿分離が十分にできているか確認する必要があります。

泡が発生している浄化槽の画像
写真1 泡が発生した例

5.活性汚泥の観察
 浄化槽の維持管理の基本は、日ごろの観察だと思います。(表)
 例えば、活性汚泥の量が多すぎると放流水とともに流れ出てしまいますし、曝気装置で曝気槽内に空気を送り込んでも、活性汚泥の活動に必要な酸素が供給できず酸素不足となり、浄化機能の低下につながります。逆に少なすぎると処理しなければならないBODに対し、浄化するために働く微生物の量が少なく、浄化機能が低下してしまいます。
 観察の一つの方法として、活性汚泥の量と状態を定期的に確認する方法があります。
 1リットルのメスシリンダーに曝気槽内の活性汚泥液を入れて30分間静置したときに底部に沈降する活性汚泥量が30から60%あれば、曝気槽内の活性汚泥量は適正範囲です。(写真2は30%)
 次に状態ですが、良い場合には、上澄み液に浮遊物が無く透明感があり、上澄み液と沈降した活性汚泥との境目がはっきりしていて平坦になります。逆に状態が悪い場合には、ふん尿臭を伴い、上澄み液が褐色となり、上澄み液と活性汚泥との境目が明瞭でなく底までの状態が均一になります。また、曝気不足で酸素が不足した状態になると汚泥の色が黒くなります。

活性汚泥の状態のめやす
項目良好な状態不良な状態
におい無臭ふん尿臭
腐敗臭
赤褐色ふん尿色(黄色)
白濁色
黒色
発生してもすぐに消え、堆積・残留しない発生した泡がすぐに消えないで、ばっ気槽表面に泡が残る
汚泥の状態味噌汁の味噌が、モヤモヤと凝集してゆく状態凝集状況が悪いため、沈殿しにくい状態
上澄み液透視度10cm以上汚泥の沈降が悪いため、ワタ状汚泥が混じる
主な原因・過負荷
(流入汚染物が多すぎる)
・酸素不足(ばっ気不足)
対策・ふん尿分離率の向上
・設計内の飼養頭数にする
・ばっ気装置の点検・修理
活性汚泥の凝集状況の推移の写真
              
              写真2

6.処理水の色
 活性汚泥の状態を観察する際の上澄み液や処理水の色も重要な管理ポイントとなります。汚水を曝気槽に投入する際、希釈水を用いてBOD濃度を1,500mg/リットル以下にさげますが、この時希釈水が少ない場合には、上澄み液や処理水が褐色に着色します。汚水投入時の希釈水は、活性汚泥では処理できない物質濃度を低減する働きもありますから、十分な量の希釈水で希釈することが重要となります。
 また、処理水の透明度を測定する透視度は、浄化機能を目で確認できる重要な方法です。
 一般に透視度が10cm以上であれば、BOD、COD、SSと言った水質汚濁防止法の許容限度をクリアーしています。
 以上のように日常の観察が浄化槽を上手に管理する最善の方法ですし、活性汚泥の状態の変化や機械の異常を早期に発見することができ、素早く対応することができますので、是非みなさんも活性汚泥の観察を行い、浄化槽の適正な維持管理に努めてください。
(普及指導部 二見雅夫)

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