神奈川県畜産技術センター 研究情報 2006.06

掲載日:2016年4月1日

神奈川県畜産技術センター 研究情報 2006年6月

活性汚泥浄化槽による微生物脱臭装置の脱臭廃液処理」

 畜産技術センターでは、家畜ふんの堆肥化をする密閉型強制発酵装置から発生する高濃度の臭気を脱臭する微生物脱臭装置を平成12年度までに開発しています。この装置は、浄化槽処理水を脱臭液に利用した簡単な構造の装置ですが、臭気成分であるアンモニアが溶け込んで窒素成分を高濃度に含んだ脱臭廃液が発生します。そのため、装置の普及にあたっては環境負荷をかけない低コストでの脱臭廃液の処理方法が必要となります。
 今回、この脱臭廃液を活性汚泥浄化槽で処理する技術を検討し、当センターに設置した肥育豚120頭規模のミニプラント浄化槽で実証しました。

1.高窒素負荷による浄化機能への影響
 浄化槽の負荷状況を示す指標のひとつに、汚水のBOD(微生物が分解可能な有機物量)とN(窒素量)の割合を表すBOD/N比があります。BOD/N比が低い汚水は、活性汚泥での浄化が難しいと言われています。脱臭廃液を浄化槽で汚水と同時に処理すると全体として窒素負荷が高くなり、BOD/N比は低くなります。そこで、曝気槽容積2.3リットルの回分式活性汚泥浄化実験装置を用いて、豚舎汚水に窒素液を加えて通常の2倍の窒素を負荷して処理を行い、高窒素負荷が浄化機能に与える影響を調べました。

☆試験1
 アンモニア性窒素のみを含む窒素液を加えたところ、処理水のCODと色度の値が上昇しました(表1)。また、処理水中の窒素成分の構成をみると、通常では検出されない亜硝酸性窒素が検出されました(図1)。アンモニア性窒素のみを加えると、活性汚泥に悪影響を与え浄化機能が低下しました。

表1 高窒素負荷試験における処理水の性状          単位:リットル(除くpH・色度)
試験区添加した窒素成分BODCODSSpH色度
試験1高窒素負荷区アンモニア性窒素22142696.3608
通常負荷区なし1637547.7382
試験2高窒素負荷区アンモニア性窒素:硝酸性窒素
=1:1
2448365.7329
通常負荷区なし1833586.9337

試験1の処理水の成分グラフ

図1 高窒素負荷試験1の処理水の窒素成分

☆試験2

アンモニア性窒素と硝酸性窒素を1対1の割合で含む窒素液を加えたところ、無添加区の処理水と同等の水質を保つことができました。また、処理水中の亜硝酸性窒素もほとんど検出されません(図2)。高窒素負荷にもかかわらず、浄化機能は維持されました。
試験2の処理水の成分グラフ
図2 高窒素負荷試験2の処理水の窒素成分

 これらの結果から、活性汚泥浄化槽で脱臭廃液を処理する場合、活性汚泥への影響を少なくして浄化機能を維持するため、脱臭廃液中のアンモニア性窒素の一部を、硝酸性窒素に硝化する必要があることがわかりました。
 すなわち、堆肥化施設の排気を直接曝気槽に吹き入れると、試験1の状態となり浄化機能に悪影響を及ぼします。そこで、排気は微生物脱臭装置や浄化処理水を溜めた簡単な脱臭槽を設けて曝気し、アンモニア性窒素を硝化させることが必要となります。

2.脱臭廃液の硝化
 微生物脱臭装置では、臭気に脱臭液をシャワーして脱臭しています(図3)。
 臭気の主な成分で水溶性のアンモニアは、脱臭液にアンモニア性窒素として溶け込みます。アンモニア性窒素は、脱臭液中の硝化細菌によって亜硝酸性窒素を経て硝酸性窒素にまで変化します。この一連の過程が、いわゆる硝化です(図4)。
脱臭装置の構造図
図3  微生物脱臭装置の構造
硝化反応の模式図
図4 微生物による硝化反応

 開発した微生物脱臭装置では、硝化細菌の活動が不十分で、硝化が亜硝酸性窒素で止まってしまい、硝酸性窒素まで進まない場合がありました(図5)。そこで、硝化細菌の量を保ち活動をしやすくさせるため、珪藻土を焼成した直径4ミリの市販の土壌改良資材(写真1)を微生物脱臭槽内に投入したところ、硝酸性窒素まで硝化が進むようになりました。これにより、微生物脱臭装置の脱臭廃液を活性汚泥に悪影響を与えずに浄化槽で処理することができます。

3.ミニプラント浄化槽での実証
 ミニプラントは、馴致運転の後、5月から本格稼動させ、まずは豚舎汚水のみを、22時間の連続曝気で処理しました。

☆間欠曝気運転
 7月から曝気方法を1時間曝気、1時間停止の間欠曝気運転に変更したところ、窒素除去率が50%から82%と向上しました(表5)。間欠曝気による窒素除去については、平成12年9月号の研究情報で紹介しましたが、ミニプラントでも窒素除去効率の向上が実証されました。

脱臭液の窒素成分グラフ
図5 微生物脱臭装置脱臭液の窒素成分
土壌改良資材の写真

写真1 使用した土壌改良資材
表2 ミニプラント浄化槽の運転状況と処理状況
項目

夏期
(5-7月)

夏期
(7-8月)

夏期
(9-11月)
夏期
(12-2月
運転状況曝気方法連続間欠間欠間欠
脱臭菌液の処理なしなしありあり
水温(℃)23.931.120.49.0
MLSS mg/L3,6137,6876,6546,413
BOD容積負荷 kg/m3・日0.270.450.400.17
窒素容積負荷 kg/m3・日0.050.090.150.11
BOD/N5.35.22.61.7
処理状況SS除去率(%)81798671
BOD除去率(%)91939290
COD除去率(%)85838572
T-N除去率(%50827854

☆脱臭廃液処理
 9月から脱臭廃液の処理を開始しました。秋期(9から11月)の運転状況は、BOD容積負荷0.40kg/m3・日、窒素容積負荷0.15kg/m3・日、BOD/N比2.6でした(表2)。浄化機能は、窒素除去率が 82%から78%にやや低下したものの、SS除去率86%、BOD除去率9%、COD除去率>85%と脱臭廃液処理前と同等の浄化機能を維持することができました。
 冬期(12から2月)は、水温が低下したためBOD容積負荷を下げる一方で窒素負荷を増やしたところ、運転状況はBOD容積負荷0.17kg/m3・日、BOD/N比 1.7、窒素容積負荷0.11kg/m3・日でした。この条件では、SS除去率71%、COD除去率72%、窒素除去率54%となり浄化機能は低下しました。

4.脱臭廃液を処理するには
 今回の結果から、脱臭廃液を活性汚泥浄化槽で処理できることがわかりました。浄化機能を低下させないで処理する条件は、脱臭廃液を混ぜた汚水のBOD/N比が2.6以上、窒素容積負荷が 0.15kg/m3・日以下程度と考えられました。
 畜舎汚水の性状は、季節や畜舎でのふん尿分離状況などによりかなり変動します。当センターの豚舎汚水のBOD/N比は年間平均 4.0ですが、水を多く使用する夏季は5.0程度に上昇し、冬季は3.0程度に低下します。BOD/N比の値により脱臭廃液の処理量が変わることから、脱臭廃液を活性汚泥浄化槽で処理するには、浄化槽の負荷状況を正確に把握し、負荷に合わせた運転管理を行うことが必要です。
 しかしながら、汚水のBODや窒素の測定には特殊な装置が必要なため、畜産農家の現場では容易に測定できません。今後は、浄化槽の負荷状況等を簡易に把握する方法を検討していきたいと考えています。

5.汚水と臭気の同時処理システム
 畜産経営に係わる苦情の6から7割は悪臭関連であり、畜産環境問題の解決には臭気対策が大変重要となっています。しかしながら、畜産農家において脱臭施設は、経済性や維持管理上の問題から十分には普及していません。
 そこで、脱臭に係る施設経費を削減して臭気対策を進めるため、当センターでは簡易で低コストな脱臭装置の開発とともに、活性汚泥浄化槽を活用して汚水処理と臭気の脱臭を同時に行う処理システムの構築に取り組んでいます。
(企画経営部 田邊 眞)

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