神奈川県畜産技術センター 技術情報 2007.12

掲載日:2016年4月1日

神奈川県畜産技術センター 技術情報 2007年12月

「暗渠管を利用した堆肥づくりについて」

 「暗渠管を利用した省力型の簡易堆肥化技術」は、当センターの研究部で平成17年度に実証試験を行い、畜産技術センターニュース平成18年6月号でも紹介しています。
 この技術は、全面有孔タイプの暗渠管(長さ4m、内径63mm)を使用し、ショベルローダーによる切り返し作業のかわりに、家畜ふん堆積物に1m程度の間隔で埋設し、堆積物中の通気性を確保することで、好気性微生物による有機物の分解を促し60℃以上の高温発酵を確保しつつ、省力的に堆肥化促進を図るというものです。
 堆肥づくりにとって、冬場や梅雨時は、発酵・乾燥効率が低下することから高温発酵状態の確保が難しく、堆肥の仕上がりに時間を要するなど厳しい時期です。そこで、このような時期の比較的水分が高い家畜ふん堆積物に暗渠管を埋設することで通気性を高め、高温発酵状態を確保できるかについて調査しました。
 また、一般的に好気条件を確保し堆肥化を促進するためには、ショベルローダーによる定期的な切り返し作業が必要とされていますが、暗渠管を利用し通気性を確保することで、切り返し間隔を延長し作業の省力化を図りながら、従来とかわらない堆肥を生産できるかについても調査しました。

●事例1【調査内容】
 この酪農家では、冬場の気温低下の影響から発酵舎から生産される一次処理堆肥の水分が高くなり、堆肥舎で堆積、切り返しを行っても良好な発酵状態に立ち上がるまでに時間がかかり、堆肥の仕上がりが遅れ、春先の需要期に堆肥生産が間に合わないことが課題となっていました。
 そこで、発酵舎から搬出された一次処理堆肥とストックしておいた発酵途中堆肥(以下、種堆肥とします)を混合し、堆積物に暗渠管を埋設することで、速やかに高温発酵状態となるかについて調査しました。
【結果】
 約8m3の堆積物を高さ1.5m程度の山型に積んで、暗渠管5本を埋設しました(写真1)。作業時間はおよそ15分でした。

写真1
写真1-1
(1)まず、種堆肥を床にひき
写真1-2
(2)管が動かないように注意しながら一次処理堆肥をバケットからふりかけ
写真1-3
(3)バケットでくぼみをつくって管を安定させ
写真1ー4
(4)一次処理堆肥と種堆肥が概ね2:1の割合と
なるように同じ作業を繰り返し堆積しました

 設置から8日目に暗渠管の撤去作業を実施しました(写真2)。作業時間はおよそ15分でした

写真2
写真2-1
(1)管に対して垂直方向にショベルローダーを動かし
写真2-2
(2)管の破損を避けるため、バケットで管の下側を崩し
写真2-3
(3)次に管の上側を崩し
写真2-4
(4)堆積物とともに崩れ出た管を取り出す

 5本のうち1本では、管の下側を深く取り出しすぎたため、堆積物の加重が一部分に集中し管に亀裂が生じましたが、その部分を切断し、専用ソケットで接ぎ直すことで継続利用ができました(写真3)。
写真3 暗渠管ソケットでつぎ直し


 さらにこの堆積物を切り返し、管を埋設し、14日目に管の撤去と切り返しを行いました。
 この間の温度、水分の変化は図1のとおりで、比較的高い水分にもかかわらず良好な発酵温度を確保できました。この方法を繰り返すことで、温度の立ち上がり時間が短縮され、結果的に堆肥を早く仕上げることが可能であると考えられました。
図1 温度と水分の変化

●事例2
【調査内容】
 この酪農家では、春先にストックされたやや水分が高めで容量が多い堆積物に暗渠管を埋設することによる発酵促進効果を調査しました。

【結果】
 発酵舎で一次処理された堆積物約40m3(幅4m、奥行き5m、高さ2m)に、暗渠管6本を床からの高さの1/3程度の位置に埋設しました。作業時間は45分程度かかりました。
 なお、管は1m分をソケットで継ぎ足し1本当たり5mとして使用し、位置がわかるように工夫して埋設しました(写真4)。 14日目に管の撤去と切り返し作業を行いました。作業時間は40分程度かかりました。
写真4 事例2

 温度、水分の変化については図2のとおりで、やや水分が高めの堆積物を高積みした場合においても、良好な発酵温度が確保されました。この間、特に切り返し作業は行っていませんが、容量も多く高積みされていたため、発生した熱がこもりやすくなり高温状態が継続したのではないかと考えられました。
図2 事例2

 管については堆積物の重さの影響が懸念されましたが、管の位置もわかり易かったことから、損傷なく撤去することができました。特に2m程度の積高のある堆積物では、バケットの深さよりやや高い位置に暗渠管を埋設した方か、管を傷つける心配なく作業ができるのではないかと考えられました(写真5)。
写真5 暗渠管撤去

●事例3
【調査内容】
 この酪農家では、乾燥舎で家畜ふんを乾燥させ水分調整したものをピットに貯留した後、堆肥舎で堆積発酵処理していますが、堆肥の発酵促進を図るため、2日に1回の間隔で頻繁に切り返しを行っていました。そこで暗渠管を活用し、切り返し間隔を延長した場合の効果について調査しました。

【結果】
 高さ1.2m、幅3m、長さ5m(約9m3)の発酵途中の山型の堆積物中に暗渠管4本を埋設し、7日目、18日目に管の撤去と切り返しを行いました。
 この間、水蒸気が堆積物の表面のみならず暗渠管からも盛んに蒸散していることが確認され、堆肥舎の壁際に設置した管の周辺においても、堆積物の表層に生じる糸状性の白い菌の層が確認されました(写真6)。
 温度、水分の変化は図3のとおりで、切り返しを省略しても良好な発酵状態を確保できました。 しかしながら、一部の堆肥が塊状となったりワラがほぐれなかったりなど、堆肥を製品として仕上げるにあたっては、これらを砕くためショベルローダーによる切り返し作業が必要となりました。
写真6 事例3

 また、堆積物の水分低下が著しく、発酵停止に陥ることが危惧されたことから、暗渠管は堆肥化初期段階の水分の高い時期に利用し、製品に仕上げる段階では、従来どおりショベルローダーの切り返し作業を行うことが効果的であると考えられました。
図3 事例3

  その後、この農家では管の設置本数を増やし6日に1回の間隔で切り返すことにより、約2ヶ月間かかっていた堆積発酵期間が1.5ヶ月程度に短縮され、十分納得がいく製品に仕上がっていました(写真7)。
 なお管を繰り返し利用することで一部に損傷が認められましたが、事例1と同じように補修することで継続利用されています。
写真7 発酵中堆肥

●まとめ
 今回の調査は現場で実施したため、比較となる対象区の設置ができませんでしたが、管から水蒸気が立ち上がり、堆積物の内部にまで白い糸状性の菌が発生しつつ、良好な発酵温度を確保されている状態から、暗渠管による堆肥化促進効果を実感することができました。同時に堆肥化を促進するためには、通気性を確保することがいかに大切かということも強く認識しました。
 また、堆肥化では副資材による水分調整が基本ですが、水分がやや高く、温度の立ち上がりが悪い場合などに暗渠管を利用することは非常に有効であると考えられます。なお、ショベルローダーによる暗渠管の埋設・撤去作業は、皆さん普段から乗り慣れておられるため、特に問題なく上手にこなされていました。
 今回調査した事例以外にも、暗渠管を堆肥づくりに利用した農家の方から、同様の効果があがっているとのお話をうかがっています。また、全面有孔ではない暗渠管を堆肥づくりに利用している方もいらっしゃいます。
 これらの方法を参考にしていただき、少しでも効率的、省力的な良質堆肥生産に役立てていただければ幸いです。
 暗渠管の入手方法・使い方等、お気軽にお問い合せ下さい。
 最後に、調査にご協力いただいた農家の皆様にこの場をかりて厚くお礼申し上げます。
(普及指導部 佐藤剛志)

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