研究情報 2008年5月

掲載日:2016年4月1日

生トウフ粕の黒毛和種肥育牛への給与

1 はじめに
 近年、飼料価格の高騰により畜産農家の経営は大きく圧迫されており、飼料費の低減が緊急の課題となっています。
 このような状況の中、食品残さを家畜の飼料として有効活用する「エコフィード」の取り組みが全国的に推進されており、これにより飼料費低減や飼料自給率の向上、食品リサイクルによる廃棄物の減量などの効果が期待されています。
 このエコフィードの1つであるトウフ粕は、古くから都市近郊の酪農や肉用牛の飼料として利用されています。現在、国内で発生するトウフ粕は年間約70万トンであり、このうち飼料として利用されているのは約半分で、9万トン以上が廃棄処理されています。このため、トウフ粕は今後もエコフィードとして安定的・安価に入手可能と思われます。
 肥育牛に対する生トウフ粕の給与は、これまで乳用種去勢牛を中心に研究されており、県内では交雑種肉用牛についても給与事例が見られます。しかしながら、黒毛和種への給与に関する研究報告はほとんどありません。
 そこで、畜産技術センターでは、平成18年度より黒毛和種肥育牛を対象に生トウフ粕の給与試験を実施し、発育状況や飼料摂取量、健康状態、枝肉成績などを調査して生トウフ粕の適正な給与量や多量給与についての研究を行っています。

2 トウフ粕の飼料としての特徴
 トウフ粕は、表1に示すように、高蛋白質・高脂肪で消化性の高い繊維を多く含み、穀物に匹敵するエネルギー価値がある、牛にとっては優れた飼料といえます。
 しかし水分割合が高いため劣化・腐敗しやすいという欠点があります。このため生で利用する場合は、トウフ粕排出後の収集から給与までの時間をできるだけ短くし、新鮮なものを速やかに(できれば当日中)利用することが重要なポイントとなります。やむを得ず一時保管する場合は、保冷庫や冷暗所で保管し、カビが発生したものや腐敗したものは使用しないよう注意が必要です。
表1 トウフ粕の栄養成分 

3 トウフ粕の利用方法
 トウフ粕を飼料として利用する場合、大きく分けて3つの形態があります。それぞれの長所、短所を表2に示しました。
(1)生での給与形態は、飼料調製作業の省力化及び飼料費低減に対して大変有効な手段ですが、保存が利かないため迅速な飼料給与体系を組む必要があります。
(2)安価で保存性の効く利用形態としては乳酸発酵処理によるサイレージ化があり、飼料調製に手間がかかりますが、計画的な飼料の利用が可能です。
(3)乾燥処理による利用形態は、扱いやすさや保存性の点で大変優れていますが、乾燥施設の整備や処理コストなどの経費がかかります。
表2 トウフ粕の利用形態

4 生トウフ粕の給与試験について
 現在、当センターでは生トウフ粕50%に対し、圧ぺんとうもろこし・圧ぺん大麦・ふすま・市販肉用牛用配合飼料及びビートパルプをおのおの10%ずつ配合し、乳酸発酵処理した自家配合飼料を肥育牛に給与しています。枝肉格付はこれまで上物率(A4及びA5)が75%(18頭/24頭)と、まずまずの成績となっています。
 そこで、今回給与試験を実施するにあたり、これと同じ配合割合で乳酸発酵処理せずそのまま給与する場合を、生トウフ粕の適正給与の指標として設定しました。(50%区) 生トウフ粕を多量に給与する場合については、生トウフ粕に多く含まれる粗脂肪や粗蛋白質の影響を考慮して配合割合を検討し、生トウフ粕70%に対し、圧ぺん大麦・市販肉用牛用配合飼料及びビートパルプをおのおの10%ずつ配合する場合を生トウフ粕の多量給与の指標として設定しました。(70%区)
表3 給与試験の濃厚飼料成分

 これらの試験区の配合割合で標準的な黒毛和種去勢牛を肥育する場合、表4の給与基準に示す通り、例えば16から22ヶ月齢では50%区で1日1頭あたり13.5kgの濃厚飼料を給与することとなります。一方、70%区では同18kgを給与することとなり、濃厚飼料給与量としてはかなり多くなります

表4 給与基準

 給与試験は50%区、70%区の2区に、乳酸発酵処理した自家配合飼料を給与する対照区を加えた3試験区で実施しています。20ヶ月齢現在で、濃厚飼料の摂取量は、トウフ粕を生のまま給与した2試験区が乳酸発酵処理した対照区に比べやや少ない傾向が見られますが、体重推移や健康状態に関してはこれまでのところ試験区間で明確な差は見られていません。
 今後、肥育の終了した試験牛が順次出荷されて枝肉成績が得られるとともに、新たに供試される試験牛のデータも追加されていくため、それらを含めた最新の成績を随時お伝えしていく予定です。

(畜産工学部 水宅清二)

神奈川県

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