研究情報 2008年7月

掲載日:2016年4月1日

アミノ酸かすヒューマスを利用した家畜ふんの抑臭堆肥化技術

1 はじめに
 畜産において臭気対策は緊急課題のひとつです。家畜ふんを堆肥化する際には高濃度の臭気が発生するので、畜産技術センターでは臭気の発生が少ない抑臭堆肥化技術を検討しています。今回、県内事業所でアミノ酸液(うまみ調味料やスポーツ飲料、化粧品など、様々な製品に利用されている)製造に伴い発生する有機性廃棄物「アミノ酸かすヒューマス(以下、ヒューマス)」を利用した抑臭堆肥化技術を検討し、当センターの堆肥化処理施設で実証しました。

★ヒューマスとは
 ヒューマスは、脱脂大豆を塩酸と苛性ソーダで処理し、圧搾ろ過によりアミノ酸液を分離した後の残さを水で十分に洗浄した搾汁かすです(図1)。
 味の素株式会社川崎事業所から年間約1万トン発生し、大部分は有機性廃棄物として処理されていますが、一部は特殊肥料として利用されています。
 表1に成分組成を示しました。水分は55%で、腐植酸は2.83%と多く、土壌の養分保持力を示す陽イオン交換容量(CEC)が乾物100gあたり108meqと高い特徴があります。CECの値が大きいほど陽イオンを吸着するので、堆肥化時にヒューマスを混合することによりアンモニア臭気の発生を抑制することが期待できます。
 図1 ヒューマスの製造工程  表1 ヒューマスの組成  

1 実験室での検証
 まず、発酵槽容積20リットルの小型堆肥化試験装置を用いて、乳牛、豚及び鶏の各ふんにヒューマスをふん重量あたり0から30%混ぜて2週間堆肥化し、アンモニア臭気の発生、堆肥化発酵の状況、堆肥化物の成分を調べました。
☆アンモニア臭気の発生
 堆肥化物乾物1kgあたりの排気中のアンモニア性窒素量の推移を図2に示しました。各家畜ふんともヒューマスの混合割合が増えるほどアンモニア揮散量は減少することがわかりました。
☆堆肥化発酵の状況
 堆肥化時の最高温度はいずれも60℃を越え、堆肥化発酵は良好でした(表2)。ヒューマスを混合して堆肥化しても、発酵に対する悪影響はみられませんでした。
☆堆肥化物の成分
 ヒューマスはpH6.0から6.7と低いことから、混合割合が増えると堆肥化物のpHは下がる傾向がみられました。 堆肥化による全炭素の減少率では、試験区によるばらつきはありますが、混合割合による傾向は見られませんでした。一方、全窒素の減少率は、各ふんとも混合割合が増えるほど低下しました。この結果から、ヒューマスの混合により、堆肥化物中の窒素は、アンモニアとして揮散せずに、堆肥化物中に留まることがわかりました。

図2 排気中のアンモニア性窒素量の推移(累積)
 
表2 堆肥化状況と堆積物の性状

2 堆肥化施設での実証
 ヒューマスのアンモニア臭気発生抑制効果を実規模施設で確認するため、当センター内の堆肥化施設で実証試験を行いました。
☆閉鎖型堆肥化ハウス
 堆肥化ハウスでは、幅6m、長さ28m、深さ50cmの発酵乾燥床で、戻し堆肥を使って乳牛ふんを毎日500から1000kg処理しています。このハウスにおいて、約1ヶ月間、毎日ヒューマス114から135kg(ふん重量あたり16から27%)を投入したふんに混ぜました。
 ヒューマスの混合により、搬出堆肥のpHは9.9から9.2に低下しました。排気中のアンモニア濃度は、ヒューマスを混合しない期間(図3、●)では平均20.3ppmでしたが、混合した期間(図3、○)では平均10.8ppmとなり有意に低下しました。このように、乳牛ふんを処理する堆肥化ハウスでは、ヒューマスを16から27%混合することで、アンモニア臭気の発生を半分程度に抑制できることが確認できました。
図3 閉鎖型堆肥化ハウスにおける排気中のアンモニア濃度とハウス室温 図4 密閉型強制発酵機における排気中のアンモニア濃度
☆密閉型強制発酵機
 密閉型強制発酵機(容積8.8m3)では、鶏ふんを毎日200から300kg処理しています。約1ヶ月間、毎日ヒューマス15から30kg(ふん重量あたり6から14%)をふんに混合して投入しました。
 排気中のアンモニア濃度は、ヒューマスを混合しない期間(図4、●)では平均1088ppm、混合した期間(図4、○)では平均945ppmで、両者に差は認められませんでした。
 抑臭効果がみられなかった原因として、強制発酵機では強制的に通気を行っているので、アンモニアがヒューマスに吸着される前に排気されてしまったことが考えられます。ヒューマスの抑臭効果を発揮させる効果的な方法をさらに検討する必要があります。
☆堆肥舎
 堆肥舎では、肉牛ふんを中心に敷料や残飼など1日に約1トンを処理し、2週間に1回切り返しを行い、4回切り返した後にストックヤードへ搬出しています。堆肥舎に搬入される堆肥化材料は、肉牛ふんは毎日搬入されますが、敷料や残飼などは季節や畜舎作業状況により、その内容が異なり、また量も大きく変動します。
 そこで、約10ヶ月間、切返し毎に計16山の堆積物について、搬入される堆肥化材料にヒューマス0から133kg(ふん重量あたり0から21%)を混合して堆積しました(表3)。切返し毎に堆積物を採取し、密閉コンテナに入れて40℃で1時間保温し、コンテナ内部のアンモニア濃度を測定して抑臭効果の判定を行いました。
 表4に堆積物の性状を示した。ヒューマスを混合していない堆積物ではpH8.3でしたが、7から11%混合ではpH7.9、14から21%混合ではpH8.0となり、有意な差はありませんでしたが、添加割合が増えるとpHが低くなる傾向がみられました。
 堆積物のアンモニア濃度はかなりばらつきがみられましたが、ヒューマスを混合していない堆積物では198ppmでしたが、14から21%混合では101ppmとなり、両者間には有意な差が認められました。
 この結果から、堆肥舎でもヒューマスを混合することでアンモニア臭気の揮散が減ることが確認できました。

表3 堆肥舎での試験開始日とヒューマス混合割合

表4 ヒューマス混合割合別の堆積物の性状

★ヒューマスの利用への課題
 試験成績から、堆肥化時にヒューマスを混合すればするほどアンモニア臭気の発生は抑制されると考えられますが、混合割合を多くすると堆肥化時にヒューマスの微細な粉が舞い、作業性が悪くなりました。また、堆肥化する物の総量が増えてしまう欠点もあります。
 今のところ、ヒューマスの混合割合は、ふん重量あたり10から15%程度が適当と思われますが、今後、データを積み重ね、最適な混合割合などを検討していく予定です。
 現在、ヒューマスは一般には流通していないため、畜産農家ですぐに使用することはできません。
 今後、畜産農家が利用できるように、流通を含めて、関係者と調整していきたいと思っています。 このように、ヒューマスはまだ試験段階の資材ですが、使ってみたい希望がある場合には普及指導部にご相談ください。

(企画経営部 田邊 眞)

神奈川県

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