研究情報 2009年5月

掲載日:2016年4月1日

発酵リキッド飼料による中ヨークシャー交雑種での発育性、肉質の向上

はじめに
 食品リサイクル法の施行など資源循環型社会の構築への寄与や、一時期の配合飼料価格の高騰から、食品残さを利用した飼料化が特に注目されています。
 食品残さの飼料化技術の中では食品残さを粉砕・加水・殺菌し乳酸発酵させる「発酵リキッド飼料」化技術は最も環境負荷が少ない処理方法と考えられており、また水分の多い食品残さをそのまま利用でき、さらに従来の配合飼料と100%代替可能であること、肺炎の原因となる豚舎内の粉塵の発生が減少し抗生物質等の使用の軽減が見込まれることなどから、「地球に優しい」、「低コスト」、「安全安心な畜産物の生産」の3つの重要な要素を満たした最も時代に即した飼料といえます。
 一方でこれまでの試験では、通常の配合飼料給与に比べて特に肥育後期での発育が遅れること、枝肉の背脂肪が厚くなること(厚脂)、また、脂肪融点が低くなること(軟脂)等が課題となっていました。
 今回、当センターでは、この発酵リキッド飼料を利用し、飼料の特性、豚への影響を調査するとともに、肉質が良好で食品残さ飼料での肥育に適した「中ヨークシャー種交雑種」を利用した給与プログラムを検討し、これまでの発酵リキッド飼料の課題を解決し、低コスト化と高品質化を両立させた生産システムの開発を試みましたので紹介いたします。

試験方法
 中ヨークシャー種25%交雑種(LYD)3腹16頭の子豚(体重約30kg)を用い表1の試験区設定で給与試験を実施しました。2区と3区には肥育後期の発育性の向上と脂肪融点の上昇を目的に配合飼料を約10%混合し、TDN、DCPの充足率を110%程度に設定しました。 飼料は市販の発酵リキッド飼料(県内工場で調製)及び配合飼料(肥育前期用及び肥育後期用)を使用しました。(表2)
 飼料を飽食できるよう給与量を調整するとともに毎日給与量を記録し、体重約110kgで出荷するまで毎週体重を測定しました。出荷後、枝肉の左半丸を用い、枝肉調査及び肉質検査を行いました。

表1 試験区の設定

表2 飼料の概要

2 試験結果
(1)発育調査結果
 30kgから50kgでは1日当たり増体重は配合飼料給与区(4区)が発酵リキッド飼料給与区(1から3区)を上回りました。50kgから70kgでは1区が最も良い発育を示しました。70kg以後では2区及び3区が4区を上回りました。また、90kgから110kgでは発酵リキッド飼料のみ給与の1区が2区を上回る発育を示しました。(図1)。

図1 肥育ステージ別1日増体重

これらのことから発酵リキッド飼料を効率良く飽食させるよう給与量を調整することと、肥育後期における少量の配合飼料の併用とによって発育性が改善されることがわかりました。 飼料要求率は2区が最も低く、続いて1区、3区の順であり、発酵リキッド飼料給与区が配合飼料給与区より低い結果となりました。(図2)

図2 肥育ステージ別飼料要求率

(2)枝肉及び肉質検査成績
 出荷後に枝肉検査を実施したところ、発酵リキッド飼料を給与した1から3区は配合飼料給与の4区に比べ、枝肉歩留まりが高い傾向が見られました。背脂肪厚については1から3区は4区に比べ厚くなりました(表3-1、3-2)。

表3ー1 枝肉検査成績

表3ー2 枝肉検査成績

 枝肉検査終了後、胸最長筋を採取し肉質検査を実施したところ、1から3区は筋肉内脂肪含量が多い傾向が見られました。クッキングロス、シェアバリューは試験区による違いは認められませんでしたが、ドリップロスは1から3区がやや多くなりました。
 皮下内層脂肪の脂肪融点を測定したところ、発酵リキッド飼料給与のうち、2区では配合飼料給与の4区より高い温度を示しました。一方、1区、3区については4区よりやや低くなりました。ただし、一般的に軟脂とされる32℃はいずれの試験区も上回っており、問題のない結果となりました。(表4)。

表4 肉質検査成績

 同じく、皮下内層脂肪を用いて脂肪酸組成を分析したところ、発酵リキッド飼料給与の1から3区は配合飼料給与の4区に比べ、不飽和脂肪酸であるC18:1(オレイン酸)、C18:3(リノレン酸)が有意に多く、C18:2(リノール酸)が有意に低いという結果となりました。これらの脂肪酸は、特に食肉の風味や舌触りに影響すると言われており、発酵リキッド飼料給与によって生産された豚肉の大きな特色と言えます。(表5)

表5 脂肪酸組成

まとめ
 今回の試験から、発酵リキッド飼料肥育での後期、特に約70kgから少量の配合飼料を混合すること(3区)で肥育後期の発育が大幅に向上すること、豚肉の脂肪融点の上昇が可能になることがわかりました。また、枝肉歩留が高いこと、筋肉内脂肪含量が多いこと、脂肪中のオレイン酸、リノレン酸の含量が多いこと等、発酵リキッド飼料給与豚肉の特徴は肥育後期に配合飼料を混合しても変わらないことがわかりました。
 一方で、厚脂の問題については、今回の試験では解決されませんでしたので、今後、肥育後期における配合飼料の混合量の調整や、単体飼料・他の食品残さの併用等を検討する必要があります。
  今回の結果から、発酵リキッド飼料給与で配合飼料と同等の発育が可能であること、特徴があり肉質に優れる豚肉の生産が可能だということが示唆されました。 また、肥育前期から出荷まで基本的に単一の飼料で飼育できること、飼養管理・生産コストの点からも発酵リキッド飼料の利用は有効であると考えられました。
 今後も、より低コストで高品質、高付加価値の豚肉生産が可能になるように研究を進めていきたいと思います。

(畜産工学部 山本 禎)

神奈川県

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