技術情報 2009年10月

掲載日:2016年4月1日

県肉豚共進会出品豚における背腰及び椎骨数の変化について

はじめに
 毎年7月に開催されている県肉豚共進会は、肉豚改良のための選抜技術の向上と消費者ニーズにあった生産性の高い肉豚生産について技術研さんを積むことによって養豚経営の安定的発展を図ることを目的として行われています。
 その内容は、出品豚の生体における一般外貌や資質を競う生体審査、生産者の選抜眼の養成と審査力を競うジャッジングコンテスト及び枝肉審査で構成され、7月8日に県家畜集合センターにて生体審査、7月10日に横浜市中央卸売市場食肉市場にて枝肉審査が実施されました。特に今年度は、共進会のテーマ「めざせ極旨かながわ産」を掲げ、消費者の求めるおいしい豚肉の県内での生産流通を目指して行われました。
 生体審査では、発育が良く、骨量がありフレームのしっかりとした豚が数多く出品されており審査員を悩ませました。枝肉審査では、全般に上物率は良好で、枝肉重量80kgを超える審査対象外となるものも少なく、生産者の選抜眼の高さと、生産技術の高さが伺えるものでした。
 ここ数年の共進会出品豚の傾向として、生体審査では肋張りや腿の充実しているものが多く見られるようになりました。これは市場のニーズとして、枝肉の長さが適度で肋張りが充実し、適度な脂肪付着と肉量とのバランスのとれた枝肉が求められていることが影響しているものと考えられます。県内産の豚肉は、そのほとんどが県内をはじめ首都圏でテーブルミートとして流通しているものと考えられ、仲卸業者・売参人に好まれる豚肉をイメージした肉豚生産が行われています。

1 枝肉データの測定
 共進会出品豚については、枝肉審査時に枝肉重量や格付けなどの審査対象となる項目以外に、背腰長や椎骨数といった、枝肉データについての測定も行っています。
 平塚市食肉センターで枝肉審査を開催していた平成8年頃までは、出品豚全頭の枝肉データ(背腰長及び背脂肪厚)を測定していましたが、食肉センターの統廃合を契機にデータの測定を取りやめていました。
 しかし、ここ数年共進会に出品される肉豚のタイプが、かなり短めになってきているとの意見を耳にすることが多くなり、肉豚改良の方向をデータとして捉えておく必要があることから、平成20年度の共進会より、出品豚全頭の枝肉の背腰長及び椎骨数データの測定を再開しました。測定作業は家畜保健衛生所、県政総合センター等関係機関の協力により実施し、今年度も出品豚全頭のデータ測定を行いました。測定は第一胸椎前端から最後腰椎後端までの背腰長2(図1)の長さと、その間の椎骨(胸椎+腰椎)数を確認しました。
図1 枝肉測定部位図1 枝肉測定部位

2 枝肉データから見えること
表1と2

表3と4
 平成21年度と20年度の測定結果は表1、表2のとおりで、出品豚全頭の平均背腰長は、21年度65.9cm、20年度66.5cmであり、最も短いものは21年度61.0cm、20年度60.0cm、最も長いものは21年度72.0cm、20年度74.0cmでした。
 平成21年度の長さ別の割合では70cm以上が5.2%、65cm未満が29.9%でした(図2)。  
 椎骨数は20から22で、仙骨と最後腰椎間を移行型としたものについては0.5とカウントしました。平均椎骨数は、平成21年度が20.7、20年度が20.8で(表2)、21年の割合をみると20型が38.5%、21型が48.3%、22型が9.2%でした(図3)。
 過去の記録として残っていた、平成8年、7年、6年度のデータは表3、表4のとおりで、出品豚全頭の平均背腰長は、8年度69.3 cm、7年度68.7cm、6年度69.7 cmであり、8年度の最も短いものは61.5cm、最も長いものは75.7cmでした(表3)。
図2と3
図4と5
図6と7

 平成8年度の長さ別の割合では70cm以上が41.5%、65cm未満が1.5%でした(図6)。
 椎骨数は平成8年度のみのデータとなりますが、平均椎骨数は21.1で、割合をみると20型14.0%、21型62.0%、22型21.5%でした(図7)。
 平成21年度と8年度のデータを比較すると、平均の背腰長は3.4cm短くなっています(図8)。 背腰長および椎骨数のデータを比較してみても、背腰長70cm以上の割合や椎骨数22型の割合において平成8年度の方が高く、背腰長65cm未満の割合や椎骨数20型の割合において21年度の方が高くなっているなど、その分布に違いが見られています。
 このように、共進会出品豚の枝肉データから、肉豚のタイプがデータ的にも短くなってきていることが判りました。
 生産者別の枝肉データについても、ほとんどの生産者が同様の傾向にあるのですが、一部の生産者で、図9に見られるように以前から背腰長66cm程度の肉豚を生産している事例もあります。この農場では、以前からこうした肉豚のタイプを改良目標として生産に取り組んでおり、その考え方が現在も変わらずに継続されていることが伺えます。

図8と9

3 豚の椎骨数について

 ここで一般的な豚の椎骨数に関して若干の説明をします。 豚の椎骨数に変異のあることは従来より知られており、品種によって外貌や体型を異にすると同時に中躯の伸びも異なっています。胸および腰にあたる部分の背骨(胸椎、腰椎)の数に、品種により19個から23個という大きな差異が見られ、椎骨の数が多くなるほど胴が長くなり、「ロース」にあたる部分の肉量が増すことが知られています(表5、表6)。
 イノシシや改良の遅れている中国種の胸椎や腰椎数が他の品種より少ないことは、豚の改良が無意識のうちに椎骨数を増加する方向へと進んできたことを示しているとも考えられ、経済性が非常に高い部位であるロースを少しでも多く生産する方向での改良が進んできたといえるのではないでしょうか。 。
表5

表6

4 データから見た肉豚改良の方向
 再度、共進会出品豚の枝肉データを見てみると、平成21年度の椎骨数20型の割合は、平成8年度に比べ2倍以上に増えていることがわかります。出品豚の品種構成は、ほとんどがLWDもしくはWLDの西洋品種による三元交雑豚であるにもかかわらず、東洋系品種に見られる椎骨数と同じ20型が多く見られています。
 従来は、豚肉を生産することを経営の目標としてきたのに対し、現在は出荷後の流通を視野に入れ、売り先(最終的には消費者)に好まれる豚肉をイメージした肉豚生産を行うことが求められており、こうした改良方向へと向かわせているものと考えられます。
 

5 農場が目指す肉豚の姿をイメージ
 個々の経営の考え方や販売方法等の違いにより、農場の目指す肉豚のタイプは様々であり、必ずしもこうでなければいけないというものはありません。ただ、それぞれの農場において、買い手に好まれる豚肉がどのようなものであるかを把握し、目標とする肉豚のタイプをイメージして生産に取り組むことが重要です。
 そのため、どのような繁殖母豚、雄豚を選抜利用していくかの見極めが必要となり、飼養している母豚の能力を把握することや、肉豚出荷成績を整理分析することで雄豚の選抜にフィードバックさせることが有効となります。また定期的に食肉市場に足を運んで枝豚を見ることや、共進会等で得られた情報から、肉豚の改良状況を確認することも大切です。
 今回は背腰長と椎骨数について報告させていただきましたが、消費者に好まれる「おいしい豚肉」を生産していくためには、脂肪成分やしまり、肉の柔らかさや風味といった肉質も重要になりますので、今後の新たなデータ集積や研究情報の提供等により、県内養豚経営の維持・発展につながるよう支援をしていきたいと思います。

(普及指導部 阪本雅紀)

神奈川県

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