研究情報 2010年2月

掲載日:2016年4月1日

神奈川県における飼料用トウモロコシ二期作栽培(その1)

はじめに
 従来、神奈川県を含む温暖地での土地生産性に優れる飼料作物の栽培体系は、夏作のトウモロコシと冬作のイタリアンライグラスを組み合わせた二毛作と考えられていました。しかし、最近の地球温暖化による気温の上昇もあり、本県でもより高い生産性を求めて九州地方で行われていたトウモロコシ二期作への取り組みがいくつか見られるようになりました。
 トウモロコシ二期作が可能な条件は、有効積算温度(10℃基準)が、2,400℃以上といわれています。畜産技術センターのある海老名市の過去の有効積算温度は、2,368℃ですが、最近10年間は2003年の2,370℃を除いて、二期作が可能な条件である2,400℃を超えています。(図1)  しかし、本県でのトウモロコシ二期作の現状は、収量や登熟不足等が問題となっており、まだ実用化に至る技術ではありません。 そこで、畜産技術センターでは、平成21年度から神奈川県におけるトウモロコシ二期作栽培体系の実用化に向けて試験を行っており、平成21年度は、品種の組み合わせについて検討しましたので、その概要をご紹介します

図1 海老名の有効積算温度(10℃基準)
図1  海老名の有効積算温度(10℃基準)

1 品種選定の条件
 本県でのトウモロコシの栽培期間は、日平均気温が10℃以上になる4月上旬から11月下旬位までとなります。九州での事例をみても、1作目を4月上旬に播種し7月下旬に収穫し、2作目を8月上旬に播種し11月下旬に収穫することが望ましいと考えられます。  そこで、二期作に適応した品種候補として、1作目にRM(相対熟度:早晩性を示す指標)100から115の7品種、2作目にRM125から135の10品種を供試して試験を行いました。(表1)

表1 供試品種

2 1作目トウモロコシ品種選定試験
 1作目は、4月6日に播種しました。生育調査結果は表2、収穫調査結果は表3にそれぞれ示したとおりです。
表2 1作目トウモロコシ品種比較試験生育調査結果

表3 1作目トウモロコシ品種比較試験収穫調査結果

 36B08で6.5%の折損が認められましたが、台風の影響がなかったことから全体では倒伏、折損の発生は軽微でした。病害は、根腐病の軽微な発生が認められましたが、全体的には問題ありませんでした。
 KD500、36B08及びLG3520は7月27日、その他の品種は7月29日に収穫しました。収穫時の熟度は、全ての品種が黄熟期でした。栽培期間の有効積算温度(10℃以上30℃以下の日平均気温—10×生育日数(播種翌日から黄熟期までの日数))は、7月27日は1,150℃、7月29日は1,183℃でした。
 生草収量及び乾物収量の平均はそれぞれ616.8kg/a及び165.8kg/aでした。推定式(TDN収量=乾物茎葉重×0.582+乾物雌穂重×0.850)から求めたTDN収量の平均は、117.7kg/aでした。
 供試した7品種で34B39が生草収量、乾物収量及びTDN収量ともに最も多く、それぞれ752.1kg/a、190.9kg/a及び136.1kg/aでした。7月中に収穫可能であったことから、1作目に利用する品種の候補品種となると考えられました。
 また、7月27日に収穫した3品種ではLG3520が生草収量、乾物収量及びTDN収量ともに最も多く、それぞれ659.5kg/a、 174.7kg/a及び123.7kg/aでした。若干早く収穫が可能であることから2作目の播種まで多少余裕を持ちたい場合等、品種選択の際に候補品種となると考えられました。

2 2作目トウモロコシ品種選定試験
 2作目は、8月3日に播種しました。生育調査結果は表4、収穫調査結果は表5にそれぞれ示したとおりです。
表4 2作目トウモロコシ品種比較試験生育調査結果

表5 2作目トウモロコシ品種比較試験収穫調査結果

 10月8日に台風18号が付近を通過し、その影響により平均で72.4%と著しい倒伏が発生しました。倒伏は、品種間で差が認められ、NS813は11.5%と耐倒伏性に優れた品種でしたが、SH3815、SH3817、KD772Sは90%以上の個体が倒伏しました。
 病害は、さび病、すす紋病、根腐病が発生しました。さび病及びすす紋病は軽微な発生で、収量に影響は無いと考えられますが、根腐病はKD772Sが13.1%と高い割合で発生しました。
 12月2日に全品種一斉に収穫しました。収穫時の熟度は、7品種が黄熟期でしたが、3470、GX9318及びSH9904の3品種は糊熟期でした。栽培期間の有効積算温度は1,176℃でした。
 生草収量、乾物収量及びTDN収量の平均はそれぞれ447.1kg/a、123.9kg/a及び84.9kg/aでした。
 供試した10品種で生草収量及び乾物収量はNS813、TDN収量はSH3817が最も多く、それぞれ589.1kg/a、156.3kg/a及び108.9kg/aでした。
 写真は、収量の多かったNS813及びSH3817と収量の少なかったSH9904及び30D44の収穫時の草姿と雌穂の状況です。SH9904と30D44は根が掘り起こされるような状態の倒伏が見られましたが、収量の多かった2品種は、倒伏の割合が少ないか、倒伏と判断されても収量の少ない2品種と比べて傾きが緩やかでした。その結果、雌穂の量も多くなったと考えられました。
写真A
写真B

 今後の試験では、NS813とSH3817が収穫時に黄熟期に達し、病害の発生も少なく、供試した品種のなかで多収であったことなどから、この2品種を中心に2作目の播種方法等の試験を実施し、さらに品種比較試験を継続したいと考えています。

→来月号に続く
(畜産工学部 折原健太郎)

神奈川県

このページの所管所属は 畜産技術センター です。