研究情報 2010年3月

掲載日:2016年4月1日

神奈川県における飼料用トウモロコシ二期作栽培(その2)

 先月からの続きです

4 二毛作と二期作の生産性の比較
  先月号の冒頭で、従来、本県で土地生産性に優れる飼料作物の栽培体系は、夏作のトウモロコシと冬作のイタリアンライグラスによる二毛作と考えられている、と述べましたが、この二毛作とトウモロコシ二期作の土地生産性について比較してみました。
 二毛作のトウモロコシは、5月中旬に播種し、8月中下旬に収穫したRM115から125までの県奨励品種10品種の試験成績、イタリアンライグラスは、昨年10月に播種し4月下旬に収穫した、タチムシャ及びドライアンの2品種の試験成績を利用しました。イタリアンライグラスは、トウモロコシとの二毛作の場合、2番草まで利用すると播種が遅くなるため、1番草成績のみの利用としました。二期作のデータは、前号に記載した品種比較試験の成績です。二毛作と二期作ともに、一般的なデータとして供試品種全体の平均値を用いました。結果は、図2から4に示したとおりです。
図2 二毛作と二期作の生草収量の比較
 図2 二毛作と二期作の生草収量の比較

図3 二毛作と二期作の乾物収量の比較
 図3 二毛作と二期作の乾物収量の比較

図4 二毛作と二期作のTDN収量の比較
 図4 二毛作と二期作のTDN収量の比較

 二毛作のトウモロコシの生草収量、乾物収量及びTDN収量は、610.7kg/a、173.9kg/a及び119.9kg/a、イタリアンライグラスの生草収量、乾物収量及びTDN収量は、440.3kg/a、76.4kg/a及び47.5kg/a、これらの収量をあわせた二毛作の年間の生草収量、乾物収量及びTDN収量は、それぞれ1,051.0kg/a、250.3kg/a及び167.4kg/aでした。
 これに対して二期作の1作目の生草収量、乾物収量及びTDN収量は616.8kg/a、165.8kg/a及び117.7kg/a、2作目の生草収量、乾物収量及びTDN収量は447.1kg/a、123.9kg/a及び84.9kg/a、これらをあわせた年間の生草収量、乾物収量及びTDN収量は1,063.9kg/a、289.7kg/a及び202.6kg/aでした。二期作は二毛作に対して、生草収量は変わりませんでしたが、乾物収量は約15%、TDN収量は約20%の多収となりました。
 トウモロコシはイタリアンライグラスに比べて乾物率も高く、栄養価に優れる飼料作物なので、生草収量は同じでも、乾物収量は多くなり、TDN収量はさらに大きくなりました。TDN収量を期待して自給飼料の生産を行った場合、従来のトウモロコシ―イタリアンライグラス二毛作と比較して、トウモロコシ二期作の方が生産性に優れることがわかりました。
 また、より多くの生産性を目指して品種を選択した場合を想定し、 供試品種の中で最も多収であった品種の組み合わせについて検討しました。
 二毛作のトウモロコシは、生草収量はSH3817、乾物収量及びTDN収量は34B39が最も多く、それぞれ610.7kg/a、173.9kg/a及び119.9kg/aでした。イタリアンライグラスは、タチムシャが生草収量、乾物収量及びTDN収量ともに最も多く、それぞれ440.3kg/a、76.4kg/a及び47.5kg/aでした。これらの多収品種を組み合わせた年間の生草収量、乾物収量及びTDN収量は1,133.8kg/a、277.4kg/a及び186.0kg/aとなり、これは一般的な収量(平均値)と比べ、約10%多収となりました。
 二期作の1作目は、34B39 が生草収量、乾物収量及びTDN収量はともに最も多く、それぞれ752.1kg/a、190.9kg/a及び136.1kg/aでした。2作目は、生草収量及び乾物収量はNS813、TDN収量はSH3817が最も多く、それぞれ589.1kg/a、156.3kg/a及び108.9kg/aでした。これらの多収品種を組み合わせた年間の生草収量、乾物収量及びTDN収量は1,341.2kg/a、347.1kg/a及び245.0kg/aとなり、これは一般的な収量と比べ、約20から25%多収となりました。また、一般的な二毛作と比較すると、生草収量が約30%、乾物収量が約40%、TDN収量は約45%多収となり、品種の選択により生産性がさらに多くなり、より高い生産性を目指すには品種の選択が重要であることがわかりました。

5 トウモロコシ二期作の課題
 トウモロコシ二期作栽培は、従来の二毛作に比べてとても栄養価に優れた栽培体系であることがわかりました。今回の試験結果から、1作目にRM100から110の品種を播種して7月下旬に収穫し、2作目をRM125から135の品種を播種し12月上旬に収穫することにより、本県でもトウモロコシ二期作栽培が十分可能であることがわかりました。
 経験的に、1作目にRM110前後の品種を4月上旬に播種すれば、安定して7月下旬に収穫ができることがわかっています。2作目については、夏播きのトウモロコシ栽培の知見が少なく、収量や登熟不足等の課題があります。そのため、2作目の品種選定や播種等の改善がこれらの課題を解決し、トウモロコシ二期作の実用化につながると考えています。

図5 播種期による有効積算温度の差
 図5 播種期による有効積算温度の差

 2作目播種については、播種時期による有効積算温度の差を図5に示しました。8月1日播種すると11月末までの有効積算温度は1,240℃ありトウモロコシの栽培が可能だと考えられます。しかし、2週間後の8月15日に播種すると11月末までの有効積算温度は1,000℃となり、収穫時に黄熟期まで達することは難しいと考えられます。播種が1週間遅くなる毎に有効積算温度は120℃程度少なくなることから、本県では8月上旬までに播種することが必要となり、1作目の収穫後どれだけ早く2作目の播種ができるかが重要となります。来年度は、この時の堆肥の施用や播種方法等について検討する予定です。また、併せて2作目に適する品種について引き続き検討します。
 畜産技術センターでは、今年度の試験結果から得られた知見をもとに、来年度は実ほ場規模でのトウモロコシ二期作栽培試験を実施する予定です。興味のある方は是非ご来場ください。
 
(畜産工学部 折原健太郎)

神奈川県

このページの所管所属は 畜産技術センター です。