技術情報 2010年6月

掲載日:2016年4月1日

飼料米の利活用に関する実証試験について

はじめに
 我が国では、濃厚飼料の90%を輸入に頼っており、食糧自給率向上に向けて飼料用米が注目されています。特に今年度以降の作付けに対する補償制度の実施を受け、生産量増加が見込まれ、それを機に稲作農家と畜産農家の耕畜連携が期待されています。
 すでに他県では飼料用米の畜産利用技術に関する各研究が行われており、様々なメリット・デメリットが報告されています。メリットとして、(1)飼料自給率の向上、(2)地域環境に基づいた資源循環型農業の確立、(3)水田の有効利用(耕作放棄地の解消)、(4)新しい水田穀物としての利用、(5)非常時の主食用米の代替え、(6)籾のままの長期保存・輸送が可能といったことが挙げられます。一方、デメリットとして、(1)コスト高、(2)主食用米への混入及び主食用米への流用の可能性、(3)こぼれイネのリスク、(4)専用品種の選抜や種子の確保、(5)畜産利用における物理的加工の必要性とそのコスト増といったことが挙げられます。ただ、デメリットのうち(5)の物理的な加工の必要性については、鶏の場合、豚や牛と違い籾米での給与が可能になり解消されるため、養鶏経営での飼料利用への期待が特に高まっています。
 そこで当所では県内の養鶏農家が飼料用米を実際に利用する場合のメリット・デメリットを確認し、養鶏農家が利用する上での参考に資するため、当所の鶏を用い実証試験を行いましたので、その内容について紹介させていただきます。

実証試験内容
 30週齢の採卵鶏(ロードアイランドレッド)に、ユメアオバ、ホシアオバの2品種の飼料用米を、籾のままで給与しました。それに加えて主食用の型落ち2番米の「黒米」の玄米を給与し、生産性・生産物への影響・特性の評価を行いました。
 試験区は、1区12羽で一般の成鶏用配合飼料(粗タンパク質:以下CP18%)にそれぞれユメアオバ10%、ホシアオバ10%、黒米10%、ユメアオバ30%をそれぞれ添加した区と、配合飼料のみを給与した対照区を設定しました。なお、試験に使用した飼料用米は農業技術センター普及指導部の協力のもと、県内の農家から供給してもらいました。

試験結果
1 飼料としての栄養性

 表1に飼料用米の成分分析結果、表2に今回の試験で使用した飼料の成分分析結果を示しました。
 一般的に成鶏の飼料にはCPが17%以上、代謝エネルギー:以下ME)が2800kcal以上必要とされています。今回の飼料用米10%給与区ではCPが17%弱、MEが2900kcalと必要な栄養として問題は見られず、アミノ酸やカルシウムなど微量要素においても改めて添加する必要性は見られませんでした。しかし、飼料用米30%給与区では表1の結果からCP等が不足することが想定されました。そのため、今回の試験ではCP、MEの低下を補うため飼料用米30%給与区にはコーングルテンミール・大豆粕10%、アミノ酸・カルシウム等の添加飼料5.9%を添加し、配合飼料は54.1%としました。

表1 飼料用米分析結果

表2 使用飼料の成分分析

2 鶏に給与した時の生産性に対する影響、嗜好性
 表3に生産性への影響評価成績、図1に産卵率の推移を示しました。
 各飼料用米の給与を開始し、その試験期間内での飼料総摂取量に対照区との明確な違いは見られませんでした。また、各飼料用米給与区の給与開始1週間以内の摂取量を対照区と比較したところ、ほぼ変わりませんでした。しかし、対照区も含めた全試験区で、試験による環境の変化のストレスがかかり、指標とされる1日当たり摂取量100gを割ってしまい、給与開始後1週間の産卵率が低下しました。その後回復し34週齢以降には全区で85%以上の産卵率が確認されました。

表3 生産性への影響評価成績

図1 産卵率の推移

3 鶏に給与した時の生産物に対する影響、特性
 表4に鶏卵評価成績を示しました。
 給与試験開始後5週目(生後34週齢)の鶏卵評価を行った所、ハウユニットの数値が対照区81.96に対し、飼料用米給与区では83から88と数値に幅はありますが、全体的に高くなる傾向が見られました。卵殻強度においても対照区と比較し、飼料用米給与区で数値が高くなる傾向が見られました。また卵黄色評価で飼料用米10%給与区では、カラーファンスコアに対照区との違いはほぼ見受けられませんでしたが、飼料用米30%給与区ではカラーファンスコアが1.1低くなりました。

表4 鶏卵評価成績

将来の方向と課題

 成鶏への飼料用米給与には配合割合10%程度であれば、栄養性や嗜好性に問題はなく、また、成鶏の産卵率や生産物への大きな影響は見られず、むしろハウユニットや卵殻強度に関しては対照区と同等かそれ以上の数値を示す傾向が見られました。さらに配合割合30%の場合も同様の傾向が見られましたが、卵黄色ではカラーファンスコアが低くなる事が確認されました。
 このことから、実際に養鶏農家が利用する場合、配合10%程度であればそのままトウモロコシの代替が可能ですが、更に配合割合を大きくする場合、CP、MEの低下を補うための新たな添加飼料が必要となります。また、配合割合増大に伴い卵黄色の低下も懸念されるため、卵黄の品質に問題はない等、販売先への理解を求めたり、もしくは、卵黄色維持のためのパプリカやアルファルファ等の添加飼料を加えるといった工夫が必要となります。しかし、他県では、お米を食べさせて生産された畜産物であることを消費者に啓発することで高付加価値販売を実現している事例もあり、新たな経営展開の可能性もあります。
 これからの展望としては、畜産農家からの豚ふんや鶏ふんなどの堆肥を利用した飼料用米生産の後、飼料として利用するという流れをつくり、地域環境に根ざした「耕畜連携による資源循環型農業」を行っていくことが期待されます。また、このことが、輸入飼料の価格変動に左右されない安定した経営の実現や消費者への安全・安心な畜産物を提供することにつながります。さらに、稲作・畜産両農家にとって、1t/10a超の収穫が可能な超多収獲米品種を利用する事で低コスト生産と休耕地利用に伴う所得の向上、前述した畜産物の高付加価値販売などが期待されます。
 しかし、補償制度が終了した後も継続的に飼料用米を生産する担い手の確保や、流通・利用までのシステムの構築等の課題があります。
 今後、当所では、より効率よく飼料用米を利用するために給与時期を更に早め、ヒナの餌付け段階からの飼養試験を実施する予定です。

写真:飼料用米添加飼料を給与した鶏(ホシアオバ30%+添加飼料)
写真 飼料用米添加飼料を給与した鶏

(普及指導担当 前田高弘)

神奈川県

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