研究情報 2010年7月

掲載日:2016年4月1日

黒毛和種肥育牛に対する生トウフ粕の給与について

1 はじめに
 当所では、食品残さを家畜の飼料として有効に活用するため、平成18年度より黒毛和種肥育牛を対象に生トウフ粕の給与試験を実施しています。 トウフ粕は従来より、生のままあるいは発酵処理した後、飼料として多くの農家で利用されています。高蛋白・高エネルギーと肥育牛の飼料に適しており、また安定的に入手可能で安価なため、近年の飼料費高騰対策に対しても有効と考えられます。 このトウフ粕をどの程度給与するかは各農家の経験によるところが大きく、給与量・給与割合はさまざまです。 そこで当所では、肥育牛農家の要望を受けて、トウフ粕を生で利用する場合の給与割合に関する検討を行いました。

2 試験の概要 肥育試験は、(1)生トウフ粕を濃厚飼料のうち70%配合する70%区、(2)同50%配合する50%区、さらに比較対照のため(3)50%区と全く同じ配合の飼料を乳酸発酵させた50%発酵区、の全3区で実施しました。
 各区とも3頭ずつの黒毛和種去勢牛を用い、8ヶ月齢より32ヶ月齢まで肥育しました。
 なお、70%区については、試験配合への切り替えは16ヶ月齢以降とし、それまでは50%配合としました。

3 給与飼料について 試験に用いた濃厚飼料の配合割合及び栄養成分を表1に、離乳後の飼料給与体系を表2に示しました。試験区間の条件をそろえるために、各区のTDN割合はほぼ同一になるよう配合設計しています。
 トウフ粕は水分割合が高く栄養に富むため劣化・腐敗しやすいという欠点があります。本試験では製造過程で排出されたトウフ粕を当日中に搬入・配合し、速やかに給与しました。 
 また、発酵区については、原料を配合した後容器に密封し、1週間程度乳酸発酵処理した後に給与しました。


表1 濃厚飼料の配合割合及び栄養成分

表2 飼料給与体系(離乳後)

4 試験結果について
 
(1)飼料摂取量
 図1に飽食に切り替えた16ヶ月齢以降の飼料摂取量を原物重量で示しました。70%区が1日1頭あたり12から16kgと、50%区の10から12kgを上回って推移しており、50%発酵区は70%区とほぼ同様でした。一方、乾物摂取量で比較した場合は各区に差は見られませんでした。
図1 飼料摂取量(原物重量)

(2)体重推移
 図2に各区の平均体重推移を示しました。15ヶ月齢までは3区ほぼ同様の推移を示しましたが、70%配合へ切り替えた16ヶ月齢以降、70%区が50%区を下回って推移しました。また試験期間を通して50%発酵区が最も高い体重推移を示しました。
図2 平均体重推移

(3)健康状態
 健康状態の指標として、血中のビタミンA、カルシウム、総蛋白質等の生化学検査、及びルーメンのpHや有機酸比率等を3ヶ月毎に検査しました。その結果、特に異常は認められませんでした。
(4)肉質について
 枝肉成績について表3に示しました。 枝肉格付は70%区でA4が2頭及びB2が1頭、50%区及び50%発酵区はいずれも全頭がA5となりました。枝肉重量は出荷時体重と同様、50%発酵区、50%区、70%区の順となりました。その他の項目や枝肉価格等、食肉市場における枝肉の評価については50%区及び50%発酵区がほぼ同等の評価となりました。
 また、近年話題になっている「おいしさ」の指標の1つとして、ロース芯周囲の筋間脂肪を採取して脂肪酸組成を分析しました。その結果、牛肉の好ましい風味や舌ざわりに関係するといわれているオレイン酸や一価不飽和脂肪酸については、試験区間に差は見られませんでした。
表3 枝肉成績

(5)経済性について
 経済性を検証するために飼料費と試験牛の売上金額をもとにコストを試算しました。(表4) その結果、0から32ヶ月齢(出生から出荷まで)の飼料費と売上金額の差額は、70%区が44万円、50%区が85万円、50%発酵区が87万円となりました。
 また、肥育素牛の一般的な導入時期である10ヶ月齢から32ヶ月齢までの飼料費と売上金額の差額は、70%区が51万円、50%区が92万円、50%発酵区が94万円でした。
表4 経済性の試算

5 まとめ
 今回は、給与試験に供した各区3頭ずつ、合計9頭の黒毛和種肥育牛の成績をもとに検討しました。
 試験区の設定に関しては、生トウフ粕の適正給与の指標として50%区を、また多量給与の可能性の検討として70%区を、さらに生と発酵という飼料の処理形態の違いによる差を検討するために50%発酵区をそれぞれ設けました。
 頭数が少ないため、試験区によってはデータのばらつきも見られましたが、生トウフ粕の給与に関しては、50%の給与割合が適正給与の1事例であると考えられます。
 また、統計的な有意差は見られなかったものの、50%発酵区が生での50%給与に比べ、乾物摂取量や枝肉重量が上回っており、トウフ粕の乳酸発酵処理により飼料摂取量や増体を高める可能性が示唆されました。
  このことから、さらなる食品残さ利用の可能性を検討する意味で、現在70%配合を発酵させた試験区を設定し、肥育成績・肉質成績等のデータ収集を行っています。

(畜産工学担当 水宅 清二)

神奈川県

このページの所管所属は 畜産技術センター です。