研究情報 2010年9月

掲載日:2016年4月1日

畜産経営へのエネルギー導入の取り組み

1 はじめに 1997年に京都議定書が締結され、先進国の温室効果ガス排出量について削減目標が数値化されました。温室効果ガスは、太陽からの熱を地球に閉じ込める作用のあるガスのことで、代表的なものとして二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素(一酸化二窒素)やフロンがあります。畜産経営からは、牛のゲップに含まれるメタンや堆肥化及び浄化過程で発生する亜酸化窒素が排出されています。一方、我々の生活には欠かすことのできない電気は、原子力や火力など数多くの発電所で発電されていますが、実は国内で排出される温室効果ガスの実に3割を占めています(気象ネットワーク:「日本の温室効果ガス排出量の実態」2008年)。火力発電所では、石油や石炭などの化石燃料を燃やして発電しているため、温室効果ガスである二酸化炭素を大量に排出しています化石燃料に対し、太陽光や風力など自然現象から得られる電力は、二酸化炭素の排出のないクリーンな自然エネルギーです。また、石油や石炭は、枯渇の心配がありますが、自然エネルギーは、太陽が照り続ける限り枯渇の心配はありませんので「再生可能エネルギー」とも呼ばれており、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が世界的に進められています。

2 太陽光発電と風力発電の原理 真夏の正午の太陽光は、1平方メートルあたり約1kwものエネルギーを持っています。例えば太陽光があたった車のボンネットは熱くなります。これは、太陽光のエネルギーが熱に変わったことを意味します。太陽光発電の場合は、太陽光のエネルギーを吸収して、電気的なエネルギー(電力)に変えるため、エネルギーが熱に変わってしまう前に電力として有効活用します。太陽光発電装置の構造や原理を説明するのはとても難しいのですが、一言で言うと「半導体」を利用して太陽光のエネルギーを直接的に電力に変える技術です。 一方、風力発電は、風の持つエネルギーで風車の羽根を回転させ、その回転運動エネルギーを発電機に伝えて電気エネルギーに変換します。風のエネルギーは、風を受ける面積に比例し風速の3乗に比例して増大しますので(風速が2倍になると風力エネルギーは8倍)、少しでも風の強いところを選び、大きい翼で効率よく風を受けることで大きな発電量が得られます。

3 小型の太陽光風力発電装置 みなさんは「風力発電」と聞くとどのような風景を思い浮かべますか?羽根の数が3枚で回転する直径が何十メートルにもなる大型の風力発電機が何基も並んで設置された風景(図1)を想像される方も多いのではないでしょうか?
図1 大型の風力発電機が並んだ様子

ここ神奈川にも横浜市や三浦市などに大型の風力発電機が設置されています。実は、当所の中心部にあたるほ場脇に太陽光風力発電装置が設置されています。とは言っても大型の風力発電機ではなく、羽根の数は3枚で、羽根が回転する直径が約1.2mととても小さな風力発電機が設置されています。また、約3平方メートルの太陽光発電装置も備えています(図2及び表1)。風力発電機と太陽光発電装置の発電できる能力(定格出力)は、それぞれ400Wと120Wで合計520Wとなります。(価格は、税込みで約87万円) 当所では、この小型太陽光風力発電装置から得られる電力を堆肥化の促進や汚水からの資源回収などに活用する省資源型家畜ふん尿処理技術に平成21年度より取り組んでいます。
図2 太陽光風力発電装置概要表1 太陽光風力発電装置概要


4 昨年度の成績
 この小型太陽光風力発電装置は、平成21年8月から12月までのデータ収集によると最大で約17kwh/月の電力を発電しました(表2)。一方、風力発電機は、平成21年8月から12月までは地上から約3.5mの高さに設置していましたが、平成22年2月以降は、図3のように単管パイプで櫓を組み、地上から約5mの高さに設置したところ、風速が2倍になりました。この改良で発電機の稼働時間が11月に比べ約3倍に向上するとともに発電量も約3倍になりました(表3)。このように小型太陽光風力発電装置で得られた電力は、家庭用の浄化槽に用いる0.15kWのブロワーを24時間稼働した際に消費する電力量3.8kwh/日の約15%に相当する電力を発電しました。

表2 月別の太陽光風力発電量と消費電力の代替率

図3 単管パイプで櫓を組んだ様子 表3 風力発電量の改善効果
5 今後の取り組み 現在、太陽光や風力による発電効率の更なる向上に向けた検討を行っていますが、発電量の大幅な増加は期待できません。ふん処理施設や浄化処理施設で使用する電力の全量を太陽光や風力発電で得られた電力で賄うためには、大規模な発電装置が必要になりますし、導入コストも非常に高額となります。そこで今後は、現在行われている堆肥化処理や浄化処理の処理手法の見直しや改善により処理の効率化を図るとともに処理施設内のブロワー等の動力の使用方法を見直すことで施設全体での使用電力の絶対量を減らし、自然エネルギーによる代替電力割合を高めていきたいと考えております。そして、将来的には既存施設の効率的な利用技術と併せ、自然エネルギーを活用した省資源型の家畜ふん尿処理システムとして確立を図って行きたいと考えております。本システムが確立できれば、畜産経営内の使用電力量の削減とともに経費の節約にも貢献すると思います。今後ともこのようにお財布にも地球にも優しい畜産経営の確立を目指した研究を進めて参りたいと思います。

(企画経営担当 川村 英輔)

神奈川県

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