研究情報 2010年10月

掲載日:2016年4月1日

快適性に配慮したケージシステムによる採卵鶏の飼養技術の検証

1 はじめに
 日本の採卵養鶏場の鶏は、現在、大半がバタリーケージで飼養されています。このバタリーケージには卵を衛生的かつ集約的に生産できるといういう大きなメリットがありますが、飼養面積が狭く鶏にとって必ずしも快適ではないとのことから、アニマルウェルフェア(家畜の快適性に配慮した家畜の飼養管理)に先進的なEUでは、2012年に採卵鶏への使用が禁止されることになっています。
 今後、アニマルウェルフェアに対応した飼養管理が社会的に求められるとともに、直売経営の多い本県では卵の販売戦略としても有効であると考え、当所では、既存のバタリーケージに簡易な改造(飼養面積増・巣箱・止まり木の設置など)を加えるだけで安価に作製できる「改良型福祉ケージ」を考案し、麻布大学と共同してこれを生産性・行動等の面から検証する試験を実施しておりますので、ご紹介させていただきます。

2 試験概要

 飼養期間は平成20年7月から平成21年9月までで、白色鶏(ジュリア)、褐色鶏(ボリスブラウン、以下、ボリス)各96羽、計192羽を供試し、20週齢から80週齢まで、(1)バタリーケージ(以下、小型バタリー)、(2)小型バタリーの床面積を広くしてEUでの飼養管理基準(一羽あたりのケージ面積550平方メートル以上)を満たした大型バタリーケージ(以下、大型バタリー)、(3)止まり木、巣箱兼砂浴び場を備えた改良型福祉ケージ(以下、改良型A)および(4)巣箱兼砂浴び場のみを備えた改良型福祉ケージ(以下、改良型B)の4種類のケージシステムで飼養しました。なお、つつきによる悪癖防止のため、開放成鶏舎の窓を黒色の寒冷紗で遮光して低照度(概ね10ルクス以下)にしたブラックアウト鶏舎内にケージを設置しました。

3 ケージの改造方法
 ケージの改造方法は図1のとおりです。小型バタリー3ケージ分について、ケージ間の仕切りを除去・移動することにより、大型バタリー2ケージとしました。なお、改良型福祉ケージについては、仕切り一面の手前の半分を切除後1ケージ分に敷料(人工芝)を敷き巣箱兼砂浴び場とし、もう一面の仕切りを除去して改良型Bとし、さらに、止まり木を付設して改良型Aとしました。改造コストはこの改良型Aで約240円と安価でした。

図1 既存バタリーケージの改造方法
図1 既存バタリーケージの改造方法

4 生産性
 生産性では、産卵率、日産卵量等の主な項目については、統計的に有意な差は認められませんでした(表1)。なお、汚卵率がジュリアの改良型が高かったことから、改良型では巣箱兼砂浴び場の敷料の改良等が必要と思われました。
 また、改良型では、巣箱内での産卵が86%以上と多く認められました。このことは、産卵時に鶏が巣箱の利用を選択したことになり、アニマルウェルフェアの国際的な基本原則「5つの自由」の一つである「正常行動を発現する自由」を、改良型が小型、大型バタリーより満たしていることを示しています(図2)。

図2 改良型ケージでの巣箱の利用
図2 改良型ケージでの巣箱の利用


5 卵質
  ハウユニット、卵殻強度等の主な項目については、統計的に有意な差は認められませんでした(表1)。

6 体重等

 体重は、ボリスの改良型Aが軽く、羽毛等スコアは、大型バタリー・改良型・小型バタリーの順に羽毛の傷みが少なく良い値でした。また、爪の長さは、ジュリアの改良型Aが短い値でした。

表1 生産性・卵質・体重等の成績(20から80週齢)
表1 生産性・卵質・体重等の成績(20から80週齢)


7 行動
 行動観察の成績は表2、3のとおりです。活動量、慰安行動の発現量の比較から、快適性のレベルは福祉型、大型バタリー、小型バタリーの順に高くなりました。なお、改良型の巣箱兼砂浴び場は、巣箱としてのみ利用され、砂浴び場としては利用されていませんでした。

表2 行動の発現割合の平均値(%)
表2 行動発現割合の平均値(%)

表3 慰安行動の発現回数(/15分間)の平均値
表3 慰安行動の発現回数(/15分間)の平均値

8 おわりに
 以上のように、既存のバタリーケージに簡易な改造を加えることにより、生産性、卵質を低下させずに、快適性を高めることが可能であると考えられました。 今回の試験は、遮光処理した低照度の条件下で実施していることから、平成22年度からは、遮光処理しない環境下でデビークの有無の影響等も併せて検証する飼養試験を開始しております。今後、成績がまとまり次第、ご報告させていただきたく予定です。
 なお、現在、国際的にアニマルウェルフェアへの取り組みが進んでいることへの対応として、農林水産省では、わが国の家畜飼養の特徴や経済性を踏まえて、日本独自の家畜飼養管理指針などを作成(平成19から22年度)しており、平成21年3月に、「アニマルウェルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針」((社)畜産技術協会)が作成されています。この指針を、今後どのように養鶏現場へ反映していくかも視野に入れながら、本試験を継続していきたいと考えています。

(畜産工学担当 平原敏史)

神奈川県

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