技術情報 2010年11月

掲載日:2016年4月1日

自給飼料生産の現地情報

1 はじめに
 穀物価格の急騰や生乳取引価格の引き下げ傾向を背景とする経営経費の削減のための一つの手法として、自給飼料生産が見直されています。また、農林水産省は飼料の国内自給率向上の目標を平成27年までに粗飼料自給率で100パーセントとしています。全国では、水田を活用した飼料用稲発酵飼料や担い手不足解消のためのコントラクター組織の育成、耕作放棄地を活用した放牧など、様々な取り組みが行われています。
 本県でも自給飼料生産に取り組んでいる酪農経営は少なくありませんが、都市近郊に立地するため面積も決して広いとは言えず、限られたほ場条件の中で効率的な自給飼料生産が行なわれています。
 畜産技術所の普及指導担当でも自給飼料増産に向けた課題に取り組んでいますので、その事例についてご紹介したいと思います。

2 トウモロコシ二期作栽培体系
 作付け面積の拡大を図ることが困難な条件での収量確保のためトウモロコシの二期作など、新しい栽培体系に取り組む事例が見られるようになりました。普及指導担当では、飼料用トウモロコシの二期作技術について、研究部門と連携し、神奈川県に適した栽培体系を確立するために、現地調査を行い、その技術を普及することを目的に取り組んでいます。 
 トウモロコシの二期作栽培を実施している酪農家5戸の播種時期は、4月10日から5月6日でした。4月は比較的気温が低く推移しましたが、5月に入り、気温が高い日が続いたので、登熟時期は播種日の差よりは縮まりました。一期作目の収穫は8月4日から16日に行われていました。一期作目の乾物収量は、1,202kgから2,328kg/10a、一方、夏作で単位面積あたりの収量を増やすために行われているトウモロコシ・ソルゴー混播の乾物収量は1,487kgから2,042kg/10aでした。今後は、二期作目と、再生ソルゴーの収量調査を実施し、それぞれの栽培体系の全体の乾物収量、TDN収量等を明らかにしていきます。
 また、作業性については、トウモロコシ・ソルゴー混播と比較し、トウモロコシ二期作栽培体系では、一期作目収穫後、耕起、除草剤散布作業が必要となります。また、二期作目の収穫期までに登熟させるためには、播種を速やかに行うことが重要です。
 そこで、当所研究部門の協力により、2戸の酪農家のほ場において、8月6日と24日に当所の改良型ダイズ用不耕起播種機を用いて、二期作目の播種の実証展示を行いました。(写真1)
 不耕起播種機を用いることで、通常の作業体系で必要となる一期作収穫後の耕起作業が省力化されます。また、改良型ダイズ用不耕起播種機は、一般的なトウモロコシの不耕起播種機に比べ小型なため、小規模のほ場での利用に適します。
 今回2戸の酪農家で併せて1.4haのほ場に播種しました。一期作目の収穫後の株や雑草が残るほ場では、機械に絡まることもありましたが、まめに取り除くことで、大きなトラブルも無く省力的に播種できました。10a当たりの作業時間は約30分で、1戸の農家では、収穫から2日後に播種することが出来ました。
 不耕起播種機での播種作業後、約4日で発芽し、その状況は通常の作業体系での播種したほ場と比べてもそれほど遜色ありませんでした。しかし、1箇所のほ場では、播種前にラウンドアップで雑草を防除してもなお、播種後に雑草が繁茂し、害虫が多く発生してしまいました。二期作目の播種時期は気温が高く、雑草の生長が早いため、雑草の多いほ場では、特に適切な雑草防除を行うことの重要性が明らかになりました。 

不耕起播種機の実証展示の様子

3 トウモロコシ・ロールラップサイレージ作業体系の実証展示試験結果

 自給飼料生産においては、収量増加に向けた取り組みに加え、収穫作業の効率化と調製するサイレージの品質向上も課題となります。そこで、トウモロコシ細断型ロールベーラーによる作業性についての現地実証を行いました。これは、県畜産課の自給飼料増産受託システム構築事業の取り組みの一環として、県内二箇所のほ場で実施しました。作業のパターンとしては、「細断型ロールベーラーを定置据え置きで使用する方法」、「けん引により、ハーベスターと併走して行う方法」(写真2)、「ハーベスターと細断型ロールベーラーを1台のトラクターでけん引するワンマン方式」(写真3)の三通りで検証しました。作業時間等を記録して、それぞれの方法のメリット、デメリットを検討し、ほ場条件に応じた効率的な作業体系を提示することを目的としています。
 定置据え置きの場合、ほ場とロールベーラー設置地点との搬送時間が作業性を左右しました。搬送に用いた2トンダンプ1台分をロールベール成形、ラッピングまで行うと、およそ20分で処理が終了しました。一方、ダンプ1台分の収穫作業は、2条刈りのハーベスターでおよそ十分を要しました。そのため、ほ場との距離がある場合に搬送ダンプ待ちの状態となりました。定置据え置きの場合、作業性の良い平坦な場所が必要となりますが、ロールの集積場所としても利用できるので、移動作業が最小限に抑えられます。
  ハーベスターと細断型ロールベーラーの併走方式は、直接、トウモロコシがロールベーラーに投入されるため、移し替えの時間がかからず、ロールベール調製1本あたりに要する時間は短縮できますが、ほ場の条件によっては、切り返しで、両作業機の体制を整える時間を必要とするため、広大なほ場向きの作業体系であると考えられます。また、ラッピングまでの作業を同時に行うためには、もう1名、オペレーターが必要となります。
 ワンマン方式の場合は、ハーベスターの後ろに細断型ロールベーラーをけん引するため、全長が長くなり取り回しがやや困難になります。しかし、オペレーターは1名で済み、ラッピング作業を同時に行いながらでも2名で済むために、効率的な方法と言えます。ただし、ハーベスターとロールベーラーを同時に駆動するため、トラクターは最低でも70馬力クラスが必要となります。作業体系については、ほ場条件、機械装備の状況、労働力などで変わるので、一概にどの方法が良いとは言い切れませんが、より効率的な方法について検討をしていく予定です。これらの作業状況を撮影したDVDも有りますので、ご覧になりたい方は、畜産技術所の普及指導担当までご一報ください。

細断型ロールべーラーによるトウモロコシの収穫(併走作業) 細断型ロールベーラ-によるトウモロコシの収穫(ワンマン方式)

4 おわりに
  今回ご紹介した事例の他にも神奈川県では、トウモロコシとイタリアンライグラス、エン麦などの牧草との二毛作も行われており、普及指導担当では、随時生育調査等を実施しています。県内の様々な自給飼料栽培体系の収量や作業性などを比較をし、各経営体に合った自給飼料栽培体系を導入していただく一助としていただけたらと思います。

(普及指導担当 酪農肉牛グループ)

神奈川県

このページの所管所属は 畜産技術センター です。