研究情報 2011年3月

掲載日:2016年4月1日

塩類濃度の低い乳牛ふん堆肥を作るには

1 はじめに
 牛ふん堆肥は豚ふん堆肥や鶏ふん堆肥に比べて塩類濃度が低い傾向にあります。牛ふん堆肥の中でも、塩類濃度の低い堆肥は土壌改良資材として土づくりの目的で利用されています。
 近年、家畜ふん堆肥の塩類濃度が上昇していることを平成21年11月の第587号で報告しました。また、土壌に雨が直接あたらない施設栽培や化学肥料を過剰に施肥した畑地の一部では土壌の塩類濃度が上昇していることが報告されています。このような土壌では、塩類濃度の高い堆肥を施用すると植物に生育障害などが起きやすくなります。このような理由から、家畜ふん堆肥は一部の耕種農家から敬遠されているのです。
 そこで、家畜ふん堆肥の塩類濃度を下げれば耕種農家での利用が増えることが期待できます。今回は、塩類濃度の指標として電気伝導率(EC)を示しながら、塩類濃度の低い乳牛ふん堆肥を製造する方法について紹介します。

2 堆肥化材料のEC

 当然ですが、塩類濃度の低い堆肥を作るには、ふんや副資材など堆肥化材料のECが低いほうが有利です。そこで、県内酪農家38戸から得た堆肥化材料65検体のEC(風乾材料、水10倍添加)を測定してみました(図1)。
 堆肥化材料のECは3から9mS/mと幅広い分布を示し、平均は5.8dS/mでした。ECが4dS/m未満の検体は全体の9%、5dS/m未満の検体は22%でした。この調査から、堆肥化材料のECは農家によりかなり差があることがわかりました。では、この差は何が原因なのでしょうか。

図1 神奈川県内酪農家における堆肥化材料の電気伝導率の分布
図1 神奈川県内酪農家における堆肥化材料の電気伝導率(EC)の分布

3 ふん尿分離による塩類の低減

 排せつ物のうち、尿はふんに比べてかなり高いECを示します。当所の搾乳牛において、排出直後のふんと尿のECを測定しました。ふんのECは2.6±0.8dS/m(n=27)でしたが、尿のECは60±13dS/m(n=26)で20倍以上の高い値でした。この結果から、堆肥化材料のECの差は畜舎でのふん尿分離の程度の違いが原因と考えられます。塩類濃度の低い堆肥を作るためには、畜舎でのふん尿分離を徹底し、ふんに尿が混入しないようにしましょう。ちなみに、当所のフリーストール牛舎はスクレイパーにより除ふんを行っていますが(写真1)、ふん尿分離の程度は悪く、牛舎から搬出されるふんのECは平均8.6dS/m(n=71)と高い値です。

写真1 当所フリーストール牛舎でのスクレーパーによる除ふんの様子
写真1 当所フリーストール牛舎でのスクレーパーによる除ふんの様子

4 固液分離器を利用した塩類の低減

 一部の酪農家では、ふんを固形分と液分に分離する固液分離装置を利用してふん処理を行っています。ふんを固液分離すると水溶性である塩類は液分に多く移行すると考えられます。そこで、当所のスクリュープレス型固液分離装置で、フリーストール牛舎のふんを固液分離してみました(図2)。その結果、EC9.5dS/mのふんがEC5.0dS/mの固形分となり、EC除去率は45%でした。固液分離によりECを低減できることがわかりました。
 一般に、塩類濃度が低いと言われているバーク堆肥のECは1から3dS/mです。そこで、当所のスクリュープレス型固液分離装置を使って、EC2dS/m以下の塩類濃度の低い乳牛ふん堆肥の製造方法を検討しました。
 乳牛ふんの塩類濃度が低い場合は、加水して固液分離を1回行います(図3)。EC4.0dS/mの乳牛ふん1tに水を0.45t加えて固液分離するとEC1.7dS/mの固形分が0.29tでき、1.16tの搾汁液が発生しました。
 一方、乳牛ふんのECが高い場合、1回の固液分離で塩類濃度を低くするためにはふんの3から4倍量の水を加えなければなりません。しかし、これでは大量の水が必要となり、膨大な量の搾汁液も発生します。そこで、手間はかかりますが、1回固液分離した固形分に加水して再度固液分離を行います。EC8.3dS/mの乳牛ふん1tを固液分離し、さらに固形分に水を0.46t加えて再度固液分離するとEC1.4dS/mの固形分が0.21tできました。また、搾汁液の量は1.25tとなり、塩類濃度が低い乳牛ふんを固液分離した場合と同程度の量となりました。

図2 スクリュープレス型固液分離装置で乳牛ふんを固液分離した時の水分とECの変化
図2 スクリュープレス型固液分離装置で乳牛ふんを固液分離した時の水分とECの変化

図3 スクリュープレス型固液分離装置による塩類の除去方法
図3 スクリュープレス型固液分離装置による塩類の除去方法 

5 固形分の堆肥化

 固液分離した固形分は、副資材を使用せずにそのまま堆積するだけで60℃を超える良好な堆肥化発酵が生じました(図4)。
 表1に固形分を堆肥化して出来た堆肥の肥料成分を示します。堆肥のECは2dS/m以下となり、カリウム含有率も1%程度で乳牛ふん堆肥の1/3程度となりました。目標の塩類濃度の低い堆肥を製造することができました。この塩類濃度の低い堆肥の特性については、現在、農業技術センターと共同で研究を進めています。

図4 固液分離した固形分を堆積した際の発酵温度の推移
図4 固液分離した固形分を堆積した際の発酵温度の推移

表1 固形分の堆肥と乳牛ふん堆肥の肥料成分組成
表1 固形分の堆肥と乳牛ふん堆肥の肥料成分組成

6 おわりに

 家畜ふん堆肥を耕種農家に広く利用してもらうには、皆さんの作っている堆肥の成分や特徴を把握して、耕種農家にしっかり伝えていくことが重要です。
 従来から、塩類濃度の低い家畜ふん堆肥は、土壌改良資材として土壌環境を改善し土を豊かにする、土づくりの目的で利用されてきました。畜産技術所では、この塩類濃度の低い堆肥を野積みや雨ざらしによらない方法で作る技術を研究しています。
 皆さんも一度自分で作られている堆肥のECを測ってみてはいかがでしょうか。測定してみたい方は企画経営担当または普及指導担当までご連絡ください。

(企画経営担当 田邊 眞)

神奈川県

このページの所管所属は 畜産技術センター です。