技術情報 2011年6月

掲載日:2016年4月1日

暑熱対策をみなおし、夏を乗り切りましょう

はじめに
 毎年、この時期になると暑熱対策の重要性が言われますが、まだ暑くないからと、対策が後手に回らないようにしましょう。今年の夏は特に、電力供給量が不足する可能性があります。去年までの暑熱対策をもう一度みなおし、電気を使わなくてもできる暑熱対策も積極的に取り入れ、各畜舎、畜種に合った対応を早めに実施することで生産性を向上させましょう。

【全家畜共通の対策】
1 通風、換気の促進
 畜舎外から新鮮な空気を取り入れ、畜舎内に過剰な熱や湿度、ガス(炭酸ガス、アンモニアガス)がこもることがないように換気しましょう。畜体に風があたると体感温度が下がります。風速1m/秒で体感温度は牛で6℃、豚で4℃、鶏で3℃くらい低下するといわれています。風速を早くすることで、体感温度を下げることができます。そのためには、開放畜舎では、開口部はできるだけ開放し、畜舎内の空気の流れを妨げるものはかたづけましょう。空気の通り道が確保され、自然換気が促進されます。とくに気温が下がる夜間の冷たい外気を取り入れると良いでしょう。換気扇、扇風機は効果的・効率的に使うことを心がけてください。自然風による畜舎内の換気構造を確認した上で換気扇の設置場所、台数、角度を適切に配置すると換気の効率を高めることができます。停電対策としても、停電直前に温度上昇をできるだけ抑えておくことは大切です。シーズン前の早い時期に整備点検をし、クモの巣やほこり等は掃除しましょう。節電にもつながります。細霧装置などを活用すると、水分が蒸発する時の気化熱により空気を冷やすことができます。ただし、利用する時には換気に気をつけ、畜舎内の湿度が上がりすぎないようにしましょう。換気ができない場合は、湿度が上昇し、逆に体感温度を上げてしまいます。畜舎内には温湿度計を置き、こまめにチェックしましょう。人と家畜では適温域が違います。

2 輻射熱の低減
 それぞれの畜舎に合った対策を行い、輻射熱を低減することで舎内温度の上昇を抑える工夫をしましょう。 畜舎の屋根にできる対策には次のようなことがあります。
 ・石灰や断熱塗料を塗布する
 ・屋根にスプリンクラーを設置し散水する
 ・硬質ウレタンボード等の屋根、天井用断熱材を使用する
 また、畜舎壁面の直射日光を遮り太陽熱の進入を抑えましょう。特に西側に直射日光を遮るものを設置すると有効ですが、通風を妨げないようにしてください。
  ・あさがおやゴーヤなどのつる性植物を植栽する(写真1)
  ・すだれや寒冷紗を張る
  畜舎外の地面や立てかけたすだれ等に打ち水をすると、気化熱により温度が下がります。
写真1 朝顔によるグリーンカーテン
写真1 朝顔によるグリーンカーテン

3 給水、飼料対策

 きれいな冷たい水を飲みたい時に充分飲めるようにしましょう。給水器を掃除し、給水量を点検してください。給水配管を太くすると、給水量を増やすことができます。飼槽はこまめに掃除し、変敗した飼料が残らないようにしましょう。変敗した飼料は採食量を低下させるとともに、下痢などの体調不良の原因にもなります。飼料の給与は涼しい時間帯に回数を分けて行うと、昼間の暑い時間帯の給与よりも体内の熱生産を抑えることができます。 各家畜に適したビタミン、ミネラルを補給しましょう。飲水量が増えたり、暑熱ストレスによる不足を補えます。

4 その他の飼養管理の工夫
  密飼いは避けましょう。適正な飼養密度は暑さとともに家畜のストレスも軽減します。 こまめな除糞を行いましょう。糞尿は熱源、湿度源となります。 衛生害虫対策を行い、家畜のストレスを和らげることも重要です。

【家畜ごとの対策】
1 牛

 牛にとっての適温域は10℃から18℃であるといわれており、気温が25℃を越えるころから胃の機能が低下し採食量が減少します。その結果、乳量、乳成分、増体量が低下し、繁殖機能も減退してしまいます。牛の首から肩付近の発熱量が多い部位に、風がよく当るようにするとよいでしょう。秒速2から3mの空気の流れをつくりましょう。 牛舎内の場所によって環境に差がある場合は、夏に分娩や泌乳ピークを迎える牛を一番涼しく、条件の良い所につなぎ替えましょう。可能であれば夜間放牧も効果的です。毛刈りを実施すると体表からの熱放散が促進されます。電気バリカンを使えば1頭あたり20から30分程度でできます。また、削蹄することも牛のストレスを減らします。夏に分娩や泌乳ピークを迎える牛を優先的に、暑くなる前に実施しましょう。また、体表に糞が固着した、いわゆる“ヨロイ”を落とすことも熱放散を促進します。飼料給与の面では、粗飼料は第一胃内での熱増加量が多く、高温環境下では粗飼料摂取量が低下します。消化のよい良質粗飼料(NDF55から60%)にしたり、短く切ると、第一胃内での発酵スピードを速め、熱発生が少なく、採食量を上げることができます。また、暑熱時にはミネラル要求量が通常時より10%以上増加します(Ca、P、Mg、Na)。さらに、暑熱時には免疫機能も低下するため、免疫機能増強作用のあるビタミンA、EならびにB群の補給も有効です。暑熱により飼料摂取量が低下しているときには、栄養素に不足があるかもしれません。この機会に改めて飼料計算をして給与バランスを確認してみましょう。

2 豚
 豚は汗腺が退化し、皮下脂肪が厚いので暑さの影響を受けやすい動物です。最適温度は22℃といわれ、30℃を越えると種雄豚では精子をつくる機能が低下し、種雌豚では受胎率が低下します。送風ダクトを利用し豚体に直接風を当てることで、体表からの放熱を促します。ドリップクーリング(水滴を豚体首筋付近に滴下)を実施すると、体熱放散が促進されます。ペットボトルの解氷水を利用すれば停電時にも使えます。(写真2)水浴びにより、体熱放散を促進させることができます。自由に水浴びすることができるように床面の一部に水を張る方法です。 クーリングパッドシステムを利用し、パッド部分に上から水を流して湿らせ、内側から外気を吸い込むと、水の気化熱により空気を冷やすことができます。(写真3)
写真2 ペットボトルを利用したドリップクーリング 
写真2 ペットボトルを利用したドリップクーリング

写真3 クーリングパット
写真3 クーリングパット

3 鶏
 採卵鶏の適温域は10℃から30℃といわれ、他の家畜よりも適温域が広いとはいえ、高温下では産卵低下と卵重低下を引き起こします。 鶏体に直接風を当てると、体感温度が低下します。飼料や飲料水に重曹を0.5から0.7%程度添加すると暑熱ストレスによる鶏の飼料消費量の低下が抑制され産卵性が向上します。鶏には汗腺がないため、暑熱時の放熱は熱性多呼吸(パンティング)に依っています。暑くなると過呼吸によるアルカローシスを引き起こしますので、改善に重曹の添加が有効なのです。このときビタミンCも一緒に投与すると効果が高まります。とくに鶏では除糞回数が少ない農家もありますが、糞が積まれていると空気の流れを妨げたり、発酵熱が発生します。こまめに除糞しましょう。 不必要な機械、廃材等を鶏舎の周りに放置しないようにしましょう。金属物は熱を蓄積し、鶏舎へ放熱する性質があります。ウインドレス鶏舎では、ファン、サーモスタット、蒸散冷却システム等の機器の保守点検を実施し故障を防止しましょう 。

【停電対策】 大震災の発生後、計画停電が行われ、このまま今年の夏まで続くと、畜産経営には大きな影響が心配されていました。幸いなことに、現時点ではこの夏の計画停電は行われないと報道されており、ほっとしたところです。しかし、自然災害はいつまた起こるかわかりません。災害発生時の停電対策をどうするのか、電力になるべく頼らない暑熱対策を検討しておくことや、経営の維持に最低限必要な電力を自家発電機の導入などにより確保しておくことも大切なことです。また、既に導入しているのであれば、定期的に機械のメンテナンスを実施しておきましょう。

(普及指導課 守田 留美子)

神奈川県

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