研究情報 2011年8月

掲載日:2016年4月1日

消費者は畜産物に何を求めているのでしょうか?

1 マーケティングとは
 みなさんはマーケティングという言葉をご存じですか、またその言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか。
 マーケティングとは、消費者のニーズを調査分析し、そのニーズを充足する商品を提供する仕組みをつくることをいいます。 
 この考え方を「畜産物」に応用して消費者ニーズを分析することができないかと考え、昨年度より「マーケティング調査手法による消費者の畜産物ニーズに関する研究」という課題で調査を始めました。その結果の一部についてご紹介させて頂きます。

2 マーケティング調査手法 
 マーケティング調査手法といっても、特別難しいことではなく、基本は消費者に「聴く」ことです。ただ、その聴き方や聴く状況をうまく設定しないと、こちらが聴きたい消費者の本音の部分が見えてきません。そこで、企業では商品の開発、改良のヒントを得るために、グループインタビューという調査手法が行われ、消費者の本音を引き出す努力をしています。
 グループインタビューは特定のテーマについて、年齢、性別等の属性が同じ消費者5から7名を集め、参加者同士で自由なおしゃべりの中から、商品イメージや使用感、どういう場面で利用するか、満足、不満点等を拾い出します。この時、座談会形式にすることで、他人の話をきっかけに、思い出したり、本音を引き出しやすい状況をつくるのがこの調査方法のポイントです。
 ただ、この方法では実施できる人数や属性が限定されるため、出てきた意見が一般的にいえることなのかわかりません。
 そこで次にグループインタビューで出てきたヒントや疑問点を設問として質問票を作成し、郵送、店頭、インターネット等でアンケート調査から、より多くの消費者に「聴く」という作業を行います。ここからどれくらいの人が同じように考えているか、属性間に違いがないのかを探っていきます。
 それでは、実際に畜産物の購買に関するアンケート調査結果を通して属性間でどのように違うかについて次にご説明します。

3 購入時の商品情報の重視度
 消費者は畜産物を購買する時、どういう情報を重視しながら、選択をしているのでしょうか?
 全国12都市(北海道、宮城、千葉、埼玉、東京、神奈川、愛知、奈良、京都、大阪、兵庫、福岡)の20から60歳代の女性各20名 計1200名を対象にしたインターネットアンケート調査で精肉(牛、豚、鶏)購買時に消費者が比較可能な品質・表示情報を9つ挙げ、「非常に重要である」5点から「全く重要でない」1点までの5段階で評価してもらいました(図1)。
 まず畜種間で比較してみると、各項目とも有意差はなく、消費者が精肉の選択時に重視するポイントで、畜種間に差がないということがわかりました(図2)。
 また、項目間の評価点では「加工日の新しさ」「パック内に肉汁が無い」が、他の項目より高く、商品選択時に、特に注視しているポイントであるようです。逆に、「生産者名の表示」「ブランド名の表示」は、他の項目よりやや低い評価点でした。
 このデータのうち豚肉の購買時の重視度について年代別に比較してみると(図3)、「価格の安さ」では20歳代が最も評価点が高く、年齢の上昇に伴って低下していきました。これは、豚肉より単価の高い牛肉でも同じ傾向でした。逆に「脂身の量が少ないこと」では、60歳代で評価点が高く、20、30歳代と有意な差があり、60歳代は、より若い世代に比べて豚肉の脂を避ける傾向があるようです。「パック内に肉汁が無い」では、20歳代とそれ以上の年代で評価点に有意な差があり、購買や料理経験の少ない20歳代では、ドリップの出た肉は鮮度が低く、美味しくないという認識がそれ以上の年代より低いようです。
 また、「生産者名の表示」「ブランド名の表示」は、全年代の平均評価点では低い項目でしたが、年代間では50、60歳代で評価点が高く、それ以下の年代と有意な差があり、50歳代以上では、誰が、どのように作ったのかという関心が高いようです。一方、「産地名の表示」という項目への関心は、30歳代以上からあり、どの地域、どの国で育てられた豚肉なのかについては、30歳代以上にとって選択時の重要な情報となるようです。
 以上のように豚肉に関して年代別に切り分けて比較してみると、全体を平均化したときには、見えなかった購買の傾向が見えてきます。この切り分けをセグメンテーション=(市場の)細分化といい、企業では細分化した購買傾向の似た集団(セグメント)を見つけ、そこをターゲットにして商品開発やコマーシャルを行っています。

図1 精肉購買時の品実、表示情報評価項目と尺度 図2 畜種間の違いによる購買時の重視項目

図3 年代別 豚肉の購買時の重視項目

4 直売所の来店者の重視点
 
では、県内畜産物に関心を持っているセグメントは、購買時に何を重視しながら商品選択しているのでしょうか?
 そこで県内畜産物に関心がある消費者に絞りこむため、県内養鶏農家直営の鶏卵直売所来店者を調査対象とし、鶏卵の購買時に重視する品質・表示情報についてアンケートを実施しました(図4)。
 回答は30から70歳代の女性、男性 各25名 (平均55歳)から頂きました。
 まず、性別間で各項目の評価点を比較してみると(図5)、全体に男性より女性の評価点が高く、特に「価格の安さ」「産卵日の新しさ」「生産者名が表示されていること」で有意な差があり、調査した直売所で鶏卵を買う女性は価格、鮮度とともに誰が生産した鶏卵であるかを重視しているようです。一方男性は「産卵日の新しさ」を最も重視し、「価格の安さ」への関心は女性に比べて低いようです。
 次に回答者をその直売所の鶏卵だけを購入している消費者(20名)と直売所以外でも鶏卵を購入する消費者(30名)で切り分けて比較すると(図6)、直売所の鶏卵だけを買う消費者は「生産者名が表示されていること」「有精卵である」「平飼い」で有意に評価点が高いことがわかりました。有精卵、平飼いは調査した養鶏場のセールスポイントであり、その直売所の鶏卵だけを購入している消費者にとって、購買時に最も重要な情報であったと考えられます。
 言い換えると消費者のこだわりと一致した畜産物の特徴があると、消費者はその畜産物を意識的に、購買し続けてくれるのではないでしょうか。
 
 今年度以降も引き続き、消費者からいろいろな形で「聴く」作業を行い、消費者の畜産物へのニーズ情報を収集、解析し、技術の改良、開発や、6次産業化をめざすみなさまへの消費者情報としてフィードバックしていきます。 

図4 鶏卵購買時の品質、表示情報の評価項目と評価尺度
図5 性別による品質、表示情報の重視度
図6 主な購入先の違いによる品質、表示情報の重視度 

(企画研究課 引地宏二)
神奈川県

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