研究情報 2011年9月

掲載日:2016年4月1日

太陽光及び風力発電で得られる電力を畜産経営へ活用する取り組み

1 はじめに
 我々の生活に欠かせない電気は、原子力や火力による発電が全体の9割を占める一方で、今年3月11日に発生した東日本大震災以降、風力、太陽光や地熱など自然エネルギーを利用した発電が、注目されています。
 自然エネルギーは、二酸化炭素の排出のないクリーンなエネルギーです。また、自然現象から得られるため、枯渇の心配がなく「再生可能エネルギー」とも呼ばれています。自然エネルギーによる発電量は、国内の発電量全体の数%ですが、化石燃料からの転換が世界的に進められています。
 当所では、平成21年度より風力発電装置及び太陽光風力発電装置を導入し、風力や太陽光で得られた電力を畜産経営に利用する研究に取り組んでいます。

2 導入した風力発電装置及び太陽光風力発電装置
 当所が導入した風力発電装置は、(株)ゼファー社製で、一つは、系統連係方式の風力発電装置、もう一つは、独立電源方式による風力と太陽光のハイブリッド発電を行う太陽光風力発電装置です(表1及び図1)。
 風力発電装置は、直径1.8mの三枚羽根を持つ定格出力4kWの風力発電機で、設置高さ14mとなるよう電柱の上に取り付けました。発電した電力は、図2のように所内の単相三線200Vの系統(商用電力)に連係し使用しています。
 系統連係とは、図2のよう発電した電力を東京電力(株)等の商用電力内に接続して、商用電力と発電した電力を混合して使用します。風力発電機で発電した直流電気は、インバーターで交流電気に変換され、東京電力(株)から供給を受けて電力を引き込んでいる畜舎等の分電盤に加えられます。さらに余剰分の電力を売電する場合には、売電メーターが必要になります。
 次に太陽光風力発電装置は、定格出力400Wの風力発電機と定格出力120Wの太陽光パネルを持ち、風力発電機は、単管パイプで櫓を組み、設置高さを5mとしました。発電した電力を一度バッテリーに蓄電する独立電源方式を採用しています(図3)。
 独立電源方式は、図3のように山小屋など商用電力が得られない場所などで活用されており、太陽光パネル及び風力発電機で発電した直流電気をバッテリーに蓄電し、バッテリーからの直流電気をインバーターで交流電気に変換し使用します。

表1 場内に設置した自然エネルギー発電システムの概要   図1 太陽光風力発電装置(手前)と電柱の上に設置した風力発電装置(奥)
                                        図1 太陽光風力発電装置(手前)と電柱の上に設置した風力発電装置(奥)

図2 系統連係の構成図 図3 独立電源の構成図

3 風力発電装置及び太陽光風力発電装置の発電量
 風力発電装置及び太陽光風力発電装置のシステム構成が分かったところで、次に発電量を押さえてみましょう!
 当所のある海老名市における平成22年5月から平成23年3月までの風力及び太陽光による月別発電量の推移を図4及び図5に示しました。
 定格出力4kWと400kWの風力発電機は、発電機直下の平均風速が大きくなった10月に最大発電量の15.7kWh/月と1.7kWh/月を記録しました。
 風力発電の特徴は、図6に示すように日ごとの発電量の変動が大きく、台風などの強風時には月の発電量の半分を一日で発電するほど発電量が大きくなります。定格出力4kWの風力発電機は、平均風速が3m以上になると発電量が大きくなりました。また、太陽光パネルの最大発電量は、1月に19.7kWh/月を記録しました(図7)。
 太陽光パネルにおける発電量は、図7に示すように日ごとの発電量の変動が少なく、曇りの日や雨の日でも少量の発電が出来ることが特徴となります。日照時間が長くなればなるほど発電量が多くなりますが、最大日照時間を示した8月が最大発電量とはなりませんでした。これは、パネル面の温度が高温になると発電効率が下がることが原因と考えられます。
 系統連係方式の定格出力4kWの風力発電装置では、月あたり最大発電量が15.7kWh/月(10月)となり、独立電源方式の太陽光風力発電装置では、月あたりの最大発電量が、20.3kWh/月(1月)となりました。この20.3kWh/月の発電量では、60W(100V)の裸電球が11時間/日、また浄化槽の曝気や堆肥送風用に用いる0.4kW(100V)のブロワーが、1.7時間/日稼働させることができる電力量に相当します。このように風力や太陽光と言った自然エネルギーから発電できる電力は日照時間や風速に影響を受けるため、とても不安定であることが分かりました。

図4 風力による発電量の推移(平成22~23年) 図5 太陽光による発電量の推移
図6 風力発電機(4kW)の日発電量と平均風速の推移(10月) 

図7 太陽光パネル(120W)の日発電量と日照時間の推移(1月)

4 自然エネルギーの畜産経営への利用

 では、畜産経営において太陽光や風力によって得られる電力をどのように活用すればよいのでしょうか?
 畜産経営で使用する電力の全量を風力や太陽光で得られた電力で賄うためには、大規模な発電装置が必要になりますし、導入コストも非常に高額となります。
 畜産経営では、省力化のために様々な場面で電気を使用する機械化が進みましたが、停電時には電気を使用する機械類は動かすことができません。その機械類を動かすために自然エネルギーで得られた電力を活用することは難しく、畜産経営内で不安定な自然エネルギーを活用するための工夫が必要です。
 そこで筆者は、風力や太陽光で得られた不安定な電力を安定的な送風の必要がない家畜ふん堆肥化過程での送風に活用することを考え、独立電源方式である太陽光風力発電装置を畑など無電源地域での家畜ふん堆肥化処理時の発酵促進用ブロワーの稼働に活用することを想定し各試験を実施中です。
 今後は、畜産経営における電力の使用の見直しや利用の効率化を図るとともにブロワー等の動力の使用方法を見直すことで施設全体での使用電力の絶対量を減らして、畜産経営の中で活用していきたいと考えております。
 そして、畜産経営における自然エネルギーの活用システムを確立して行きたいと考えております。

(企画研究課 川村 英輔) 

神奈川県

このページの所管所属は 畜産技術センター です。