研究情報 2012年2月

掲載日:2016年4月1日

トウモロコシ二期作の経済性の検討

1 はじめに
 畜産技術所では、平成21年度からトウモロコシ二期作(以下、二期作)の実用化に取り組んでいます。
 今までの研究結果から、本県においても二期作は可能であり、従来本県を含む温暖地で最も土地生産性が高いとされていたトウモロコシ-イタリアンライグラス二毛作(以下、二毛作)より土地生産性に優れていることがわかりました。また、栽培体系として1作目にRM100から110の極早生品種を4月10日頃までに播種、7月下旬から8月初旬に収穫し、2作目にRM125から135の中生から晩生品種を8月7日頃までに播種し11月下旬に収穫することを提案しました。
 そこで、酪農家が二期作を導入するための目安として、土地生産性、生産費、経済性についてトウモロコシ単作(以下、単作)及び二毛作と比較して検討しました。

2 土地生産性の比較

 平成21年から23年までの3年間、4月、5月及び8月播種トウモロコシ、イタリアンライグラスの収量調査をしました。
 4月播種トウモロコシは、4月上旬に播種して8月上旬までに収穫したRM100から110までの品種の収量としました。5月播種トウモロコシは、5月上中旬に播種して8月中下旬に収穫したRM115から125の県奨励品種の収量、8月播種トウモロコシは、8月上旬に播種して11月下旬から12月上旬までに収穫したRM125から二期作専用までの品種の収量としました。イタリアンライグラスは、10月上旬に播種して翌年4月下旬に収穫した短期利用型品種の一番草の収量としました。
 栽培体系別の収量は、これらの収量を組合せました。単作は5月播種トウモロコシの収量、二毛作は五月播種トウモロコシにイタリアンライグラスを加えた収量、二期作は4月及び8月播種のトウモロコシの合計の収量となります。10a当たりの生草収量は、単作では6,430kg、二毛作では11,120kg、二期作では11,460kgでした。乾物収量は、単作では1,900kg、二毛作では2,770kg、二期作では3,410kgでした。TDN収量は、単作では1,320kg、二毛作では1,850kg、二期作では2,400kgでした。二期作を単作と比較した場合では生草、乾物、TDN収量ともに80%多収となり、二毛作と比較した場合では生草収量はほぼ同じでしたが、乾物収量は25%、TDN収量は30%多収となりました。(図1)

図1 栽培体系による土地生産性の比較
図1 栽培体系による土地生産性の比較

3 生産費の比較
 生産資材は、畜産技術所の通常の栽培方法から必要資材を算出しました。トウモロコシ栽培に必要な種子、肥料、除草剤等の農薬及び軽油等の燃料の10a当たりの資材費は、播種期にかかわらず12,050円でした。イタリアンライグラスの栽培に必要な種子、肥料及び燃料の10a当たりの費用は、6,400円でした。  サイレージの調製は、トウモロコシは細断型ロールベーラ、イタリアンライグラスは直径100cmのロールベーラを利用した場合の費用とし、ロールベール一個当たりの費用は、トウモロコシでは655円、イタリアンライグラスでは510円でした。ロールベールの資材費は、収量に比例して増減し、ロール一個当たりの乾物量をどちらも100kgとしてその費用を算出すると、10a当たりの費用は、4月播種トウモロコシでは12,610円、5月播種トウモロコシでは12,410円、8月播種トウモロコシでは9,670円、イタリアンライグラスでは4,320円でした。
 栽培とサイレージ調製の費用を合わせた10a当たりの生産資材費は、単作では24,460円、二毛作では35,180円、二期作では46,380円でした。(表1)
 収量と資材費から求めた1kg当たりの生産費は、単作では生草が3.8円、乾物が12.9円、TDNが18.5円、二毛作では生草が3.2円、乾物が12.8円、TDNが19.0円、二期作では生草が4.0円、乾物が13.6円、TDNが19.3円でした。(表2)

表1 栽培体系別の10a当たりの資材費 表2 栽培体系による生産費の比較

4 経済性の検討
 搾乳頭数が30頭、飼料畑面積が170aの場合をモデルケースとして、単作、二毛作及び二期作のそれぞれの場合について飼料費を試算しました。モデルケースでの自給飼料の生産量は、単作ではトウモロコシサイレージが110t、二毛作ではトウモロコシサイレージが110t、イタリアングラスサイレージ(乾物率50%)が29t、二期作ではトウモロコシサイレージが195tでした。  飼料費の試算のための搾乳牛の給与飼料について、体重600kg、日産乳量30kgの場合の設計を表3に示しました。
 単作では、自給飼料の生産量からトウモロコシサイレージを1日1頭当たり10kg給与することが可能なので、その他に配合飼料11kgと乾草10kg、ビートパルプ2kgを給与し、1日1頭当たり飼料費は1,242円でした。
 二毛作では、イタリアングラスサイレージ6kgをスーダングラス乾草3kgに置き換えて給与し、1日1頭当たり飼料費は1,157円でした。しかし、モデルケースの場合ではイタリアングラスサイレージは5.3ヶ月分の生産量で通年給与することができませんでしたので、残りの6.7ヶ月は単作と同じ給与となります。
 二期作では、自給飼料の生産量が増加したためトウモロコシサイレージを1日1頭当たり17kg給与することができるようになりました。単作と比べて、トウモロコシサイレージの給与量を7kg増加したことにより、配合飼料及びチモシー乾草の給与量を各1kg減らすことができ、1日1頭当たりの飼料費は1,163円でした。  モデルケースでは、搾乳牛の年間飼料費は、単作では13,600千円、二毛作では13,189千円、二期作では12,735千円となり、二期作は単作と比べて865千円、二毛作と比べて454千円の飼料費を低減できました。(表4)
 このように、二期作は、単作や二毛作と比べて生産費は多くなりますが、土地生産性に優れ、自給飼料の給与量が増えることにより飼料費の低減につながり、経済性にも優れる結果となりました。

表3 体重600kg、日産乳量30kgの飼料給与設計

表4 作付け体系による年間飼料費比較

5 おわりに
 今回の検討では、自給飼料を増産することが飼料費の低減につながる結果になりました。本県における二期作についてもデータが蓄積されてきており、トウモロコシ二期作が可能な地域では自給飼料の増産に最も有効な栽培体系だと考えられます。二期作の導入にあたっては、個々の事情にあわせて技術協力や情報提供が可能なので、興味をお持ちの方は、畜産技術所までご連絡下さい。

(企画研究課 折原 健太郎)

神奈川県

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