研究情報 2012年3月

掲載日:2016年4月1日

和牛子牛の人工哺育 畜産技術所の飼養管理方法

1 はじめに
 乳牛の借り腹で生まれた黒毛和種(和牛)の子牛は、ほとんどが人工哺育されますが、自然哺育の子牛に比べて発育が悪い等の理由から、評価が低いこともありました。しかし、和牛子牛のための飼養管理マニュアルが示され、専用の代用乳や人工乳が市販されたことなどから、良好な発育の子牛が得られるようになっています。むしろ、最近では人工授精によって生まれた和牛子牛に対して人工哺育が行われることもあります。
 このようなことから、全国的に酪農家(乳牛)からの和牛子牛の生産や流通が拡大しています。県内でも酪農家による和牛子牛の生産と肉用牛農家への素牛の供給が定着し、既に魅力的な子牛が生産されている地域もあります。一方で、和牛子牛に関する情報や経験が少なく、取り組みが進んでいない地域もあります。そこで、これから和牛子牛の人工哺育を始めたいと考えている酪農家への参考として、畜産技術所で実施している人工哺育の方法を紹介します。

2 乳牛用代用乳の1日2回哺乳
 畜産技術所では受精卵移植や和牛子牛の飼養管理の研究と所内の繁殖素牛や肥育素牛の確保のために年5から10頭程度の和牛子牛を生産しています。飼養場所や管理者は乳牛の子牛と一緒ですので、和牛子牛の特性を把握しながら乳牛の子牛に近い管理で生後100日齢に体重100kgを目標に人工哺育を行っています。
 図1に人工哺育のスケジュールを示します。
 初乳は、生後3日間は給与し、4日目から代用乳に切り替えています。代用乳は、一般的な乳牛用を用いて哺乳バケツで1日2回給与しています。生時体重が小さく、1回の摂取量が少ない子牛もいることから、日量300gから段階的に給与量を増やす方法(図2)を採用しており、子牛の飲み具合やふんの性状を観察しながら、増給を加減したり、最大給与量を調節するなどの工夫をしています。

図1 人工哺育のスケジュール
図1 人工哺育のスケジュール

図2 哺乳量の例
図2 哺乳量の例

3 人工乳の摂取量で離乳時期を決定
 人工乳は生後3日目から少量ずつ給与し、いつでも食べられるようにしています。毎日の摂取量を量ってみると図3のようになります。乳牛の子牛に比べると人工乳の摂取量が増えるのは遅いようですが、味を覚えさせるために口の中に手で入れてあげるなど心がけています。人工乳の摂取量が日量600g以上を目安に離乳しています。乳牛に比べると哺乳期間は長めになってしまうことが多いようですが、ほとんどの子牛は50から60日で離乳しています。人工乳の摂取量が増えてこない子牛には代用乳を減らして人工乳の摂取量を増やしてから離乳するようにしています。人工乳の増給も代用乳と同様にふんの性状を見ながら徐々に増やしています。また、人工乳の摂取量の増加には水の摂取が不可欠です。実際に量ってみると、哺乳中でも多い牛は1日に2kg近くの水を飲んでいます。いつでも新鮮な水が飲めるように哺乳中から用意しています。

図3 飼料摂取量の推移
図3 飼料摂取量の推移

4 乾草は哺乳期から少量を給与
 栄養充足と第一胃絨毛の発育を促すためには穀類(人工乳)の摂取を増やす必要があり、そのために乾草の給与を控えるという考え方もありますが、乾草を全く給与しない子牛ではおがくずや牛舎内の木材などを食べてしまい、かえって下痢や消化不良の心配が増してしまいます。そこで、哺乳中の子牛にも少量の乾草を給与するようにしています。第一胃内環境の安定と異物の摂取を抑えることが目的ですので、細断したチモシー乾草やスーダン乾草の葉の部分などを100g程度を上限に給与しています。離乳後からは乾草を飽食にし、日齢とともに摂取量が増えていきます。また、人工乳から育成配合への切り替えは91日齢(13週)から1週間程度かけて行っています。 

5 生後100日齢で100kgが目標
 畜産技術所の場合には、生後3から4ヶ月で和牛子牛の管理は酪農担当から和牛担当へ引き渡されます。その際の発育は生後100日齢で体重100kgを目標にしています。15週齢の発育(体重)は表1に示すとおりであり、この時期に育成配合2kg程度、チモシー乾草1kg程度を摂取しています。この程度の飼料を食べていれば和牛担当に引き渡された後も飼料摂取で苦労することはないと思います。
 その他にも、発育や飼料摂取を停滞させないために、飼料を変更した週には飼養場所を変更しないなど、牛のストレスを重複させないようにしています。また、冬期には、牛舎内の換気と保温、代用乳の温度低下にも注意しています。これから和牛子牛生産を始める方には、春夏産みになるような移植時期、生時体重の大きくなる血統の選択なども有効だと思います。 

表1 和牛子牛の発育と飼料摂取量
表1 和牛子牛の発育と飼料摂取量

6 おわりに
 
 今回は畜産技術所で実施している和牛子牛の人工哺育の方法をひとつの例として紹介しましたが、健康な子牛を育てるために各地域や農家毎の状況に合わせた方法を選択することが最も重要だと思います。畜産技術所では和牛子牛の発育促進や下痢防止を目的とした乳酸菌やオリゴ糖の給与に関する研究を行っています。これらの研究成果については次の機会に紹介させていただきます。
 また、和牛子牛に関することをまとめた資料を当所の普及指導課が作成していますので、興味のある方は是非お問い合わせ下さい。
人工哺育中の子牛
写真 人工哺育中の子牛

(企画研究課 秋山 清)

神奈川県

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