研究情報 2012年5月

掲載日:2016年4月1日

塩類濃度の低い堆肥の特徴

1 堆肥の塩類濃度
 最近、全国的に家畜ふん堆肥の塩類濃度が高い傾向があり、神奈川県でも同様な傾向があることを報告しました(研究情報2009年11月)。牛ふん堆肥は家畜ふん堆肥の中で塩類濃度が低い傾向にあり、一部の耕種農家では、牛ふん堆肥を土壌物理性の改良に重点をおいた資材、いわゆる土づくりの資材として利用しています。そのため、堆肥を土づくり目的で使用する耕種農家は塩類濃度の高い堆肥を敬遠するのです。
 そこで、堆肥の塩類濃度を下げるため、乳牛ふんを固液分離する方法や畜舎でのふん尿分離の効果を報告しました(研究情報2011年3月)。
 では、塩類濃度の低い堆肥はどのような特徴があるのでしょうか?農業技術センターと共同で乳牛ふんを固液分離して塩類濃度の低い堆肥(低塩類堆肥)を作製し、その堆肥の特徴を把握したので報告します。

2 低塩類堆肥の製造と成分
 一部の酪農家では、ふんの含水率を低下させて堆肥化しやすくするなどの目的で排せつ物処理に固液分離機を利用しています。ふんを固液分離すると水溶性である塩類は液分に多く移行すると考えられます。そこで、当所のスクリュープレス型固液分離装置で乳牛ふんを固液分離してみました。その結果、電気伝導率(EC)9.5dS/mのふんからEC5.0dS/mの固形分が得られ、固液分離により乳牛ふんの塩類濃度を低減できることがわかりました(図1)。
 また、固液分離した固形分は含水率が72%以下で、副資材を使用せずにそのまま堆積するだけで堆肥化発酵し、60℃を超える発酵温度が得られることもわかりました。
 表1に出来上がった低塩類堆肥の肥料成分を示します。低塩類堆肥のECは1.3dS/m、カリウム含有率は1.0%で、乳牛ふん堆肥の1/2から1/3となり、従来の牛ふん堆肥と比べ、かなり塩類濃度が低い堆肥であることがわかりました。

図1 スクリュープレス型固液分離機で乳牛ふんを固液分離した時の水分と電気伝導率の変化

表1 低塩類堆肥の肥料成分組成

3 低塩類堆肥の施用効果
 表2に堆肥を施用した土壌の最大容水量を示しました。最大容水量とは、土壌に水を最大にすわせたときの水の量で、土壌の保水力の目安となります。低塩類堆肥区と牛ふん堆肥区では、10aあたり乾物で1tの堆肥を施用しています。最大容水量は、低塩類堆肥区では100g乾土あたり100.6ml、低塩類堆肥倍量区では134.4mlで、牛ふん堆肥区や化成肥料区より多くなりました。この結果から、低塩類堆肥を施用すると、土壌が保持できる水分量が増えることがわかりました。 次に、雨よけハウスでコマツナを6作連作して、堆肥の連用による土壌成分の変化を検討しました(表3)。6作目の土壌のECは、牛ふん堆肥区では1.40dS/mでしたが、堆肥低塩類堆肥区では1.04dS/m、低塩類堆肥倍量区では1.22dS/mと低くなりました。低塩類堆肥区と牛ふん堆肥区ではコマツナの収量に大きな差は認められませんでした(図2)。肥料成分のカリウム(K2O)やリン(P2O5)の含有率も、牛ふん堆肥区に比べて低塩類堆肥区や低塩類堆肥倍量区は低くなりました。
 この結果から、畑に堆肥を連用した場合、低塩類堆肥は通常の牛ふん堆肥と比較して塩類集積を低減させる効果があることが確認されました。

表2 堆肥施用時の最大容水量

表3 雨よけハウスでコマツナを栽培した時の土壌成分の変化

図2 コマツナの収量指数
図2 コマツナの収量指数(化成肥料区が100)

4 低塩類堆肥の利用 
 花き鉢物の育苗培養土として、バンジーの育苗試験を行いました。赤土:低塩類堆肥=1:1の区は、慣行区(赤土:腐葉土:ピートモス:パーライト=50:25:20:5)と同等の生育を示しました(表4)。低塩類堆肥は塩類濃度が低いという特徴を活かして、花き鉢物培養土で使用されるピートモスや腐葉土、パーライト等の代替資材としての利用を検討しています。特にピートモスは、世界的に供給量の減少や品質の低下が指摘されていているので、低塩類堆肥が代替資材として利用できれば堆肥の販路拡大につながることが期待できます。

表4 低塩類堆肥を培養土壌資材とした時の生育量の変化

5 おわりに
 従来から塩類濃度の低い牛ふん堆肥は、土壌改良資材として土壌環境を改善し土を豊かにする、土づくりの目的で利用されてきました。家畜ふん堆肥は肥料から土壌改良資材まで幅広い用途があります。家畜ふん堆肥を耕種農家に広く利用してもらうには、皆さんの作っている堆肥の成分や特徴を把握して、耕種農家にしっかり伝えていくことが大切です。皆さんも作られている堆肥のECを一度測ってみてはいかがでしょうか。測定してみたい方は企画研究課または普及指導課までご連絡ください。

(企画研究課 田邊 眞)

神奈川県

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