研究情報 2012年10月

掲載日:2016年4月1日

太陽光及び風力発電で得られた電力を堆肥化処理に活用する取り組み

はじめに

 現在国内の発電量に占める自然エネルギーの割合は、ごく僅かですが、太陽光や風力など自然現象から得られる二酸化炭素の排出のないクリーンかつ安全なエネルギーですので、発電量の増加が見込まれています。また、枯渇の心配がなく「再生可能エネルギー」とも呼ばれており、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が世界的に進められています。当所では、平成21年度より家庭用の太陽光パネル及び風力発電機を導入し、風力や太陽光で得られた電力を家畜ふん尿処理に利用する研究に取り組んでいます。


太陽光パネル及び風力発電機の年間発電量

 当所に設置した太陽光パネル(定格出力120W)と風力発電機(定格出力400W及び4kW)の概要を表1及び図1に示しました。神奈川県海老名市にある当所における2010年8月から2011年7月までの太陽光パネル及び風力発電機の年間発電量を表2に示しました。定格出力120Wの太陽光パネルは、188,003Wh/年(188kWh/年)、定格出力4kWの風力発電機は、178,638Wh/年(178.6kWh/年)の発電量が得られ、太陽光パネルと風力発電機(定格出力4kw)はほぼ同等の発電量となりました。この発電量では、60Wの裸電球1ヶを毎日8時間点灯することができます。


表1 場内に設置した自然エネルギー発電システムの概要

図1 太陽光風力発電装置(手前)と電柱の上に設置風力発電装置(奥)

図1 太陽光風力発電装置(手前)と電柱の上に設置した風力発電装置(奥)


表2 太陽光パネル及び風力発電機の年間発電量

自然エネルギーの特徴

 しかし、表2に示した日平均発電量を見てみると、月ごとの変動が大きく、太陽光及び風力発電で得られる電力は非常に不安定な電源であることが分かりました。今回用いた太陽光及び風力発電装置は、単相100V(電灯)を発電するシステムですが、仮に三相200V(動力)を発電するシステムであっても、発電量の変動が大きく、動力の電力としては使いにくいことが明らかとなりました。このように不安定な電源を活用するためには、大規模な設備が必要となり、イニシアルコストも高額となります。


家畜ふん堆肥化処理での電力利用

 家畜ふんの堆肥化過程では、「病原菌や寄生虫、雑草の種が死滅」と言った安全性確保のためには、60℃以上の高温処理が必要です。冬季など発酵温度の上昇が遅延する時期に堆肥下部からの送風や堆肥中心部の加温により、速やかに60℃以上の発酵温度を得ることができます。

 そこで、自然エネルギーで得られた不安定な電力を家畜ふん堆肥化過程で活用する試験を実施しました。

1 堆肥化処理の送風への自然エネルギーの活用(試験1 送風試験)

 当所の牛ふん(育成牛及び肉牛)を戻し堆肥で水分・比重調整し、約4立方メートルの堆積山を作り、冬季に堆肥化処理を行いました。その際、堆積山の下部から10分運転+20分停止の間欠運転で堆肥化開始から24時間目まで送風する送風区と送風を行わない無送風区を設けました(送風に用いたブロワーは、0.4kw、100V、実測風量11.4m立方メートル/時の能力)(図2)。

 送風区では、図3に示すように堆肥化開始から20時間で発酵温度が60℃以上となり、有機物分解率は、無送風区の1.8%と比べ、送風区は6.9%となりました(表3)。その際、ブロワーの消費電力は、2.5kWh/日で、24時間連続送風時の7.7kWh/日に比べ1/3に削減することができました(表4)。

 送風区のような運転条件で太陽光風力発電装置を適用する場合、処理対象物1立方メートルあたり625Wh/立方メートル・日の消費電力となり、処理対象物1立法メートルあたり最大で210W(約3.2平方メートル)の太陽光パネルが必要であることが明らかとなりました。

 当所の堆肥舎(約200平方メートル)では牛ふん(育成牛及び肉牛)を戻し堆肥で水分・比重調整し、1回あたり約8立方メートルの堆積山を作ります。先ほど算出したとおり処理対象物1立方メートルあたり最大で210W(約3.2平方メートル)の太陽光パネルが必要ですから、8立方メートルの堆積山で1.68kWの太陽光パネルを設置するため、25.6平方メートルの面積が必要となります。堆肥舎の南屋根面は、面積約110平方メートル(5.5m×20m)あります(図4)。この屋根面では、約7.2kWの発電が可能となり、発酵促進用のブロワーを稼働させても余剰な電力が発生しますので、売電が行えると試算されました。


図2 堆肥化初期送風の効果確認試験に用いた器具
図3 送風の有無が発酵温度に与える影響(試験1)

表3 送風及び加温の有無による発酵状況の違い

表4 試験期間中の使用電力量<br

図4 堆肥舎の様子と南屋根面

2 堆肥中心部の加温への自然エネルギーの活用(試験2 加温試験)

 次に試験1と同様に牛ふん(育成牛及び肉牛)を戻し堆肥で水分・比重調整し、約4立方メートルの堆積山を作り、堆積山の中心部に堆肥加温装置を投入しました(図5)。堆肥加温装置は、油用プラグヒーターにより内部に充填した食用油が60℃に加温されます。また油温が60℃以上になると加温が停止します。

 堆肥加温装置で堆肥中心部を60℃に加温する加温区と加温を行わない無加温区を設け発酵促進効果について検討しました。

 無加温区の堆肥中心部は、60℃以上になりませんでしたが、加温区では堆肥中心部が60℃以上となりました。しかし、無加温区及び加温区の乾物分解率及び水分減少率に差は見られませんでした(図6)。試験期間中(8日間)の電気使用量は、1.42kWhとなり、試験1の送風区で用いた電力使用量2.5kWhと比べ、56%の使用量となりました(表4)。また、堆肥1立方メートルあたりの使用電力量は、0.36kWh/立方メートルでした。

図5 堆肥加温用装置の概要図

図6 堆肥中心部の加温が発酵温度に与える影響(試験2)

さいごに

 畜産経営内では、多くの機械により省力化が図られましたが、その反面、大量の電気を使用することになります。自然エネルギーで得られる電力は、発電量の変動が大きく不安定な電力であることから代替え電力として活用するには、蓄電技術などの技術革新が待たれるところです。

 その一方で、畜産経営内では、土地、畜舎及び堆肥舎の屋根など太陽光パネルが設置できる「面積」が存在します。「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別処置法」により、発電電力の全量を固定価格で買い取って貰うことが可能となることから、畜産経営内の「面積」を有効活用し、自然エネルギーで得られた電力を売電する方法は、電力供給に寄与する観点から一考の余地があると思われます。

(企画研究課 川村 英輔)

神奈川県

このページの所管所属は 畜産技術センター です。