【当日の記録】平成29年度 第2回インクルーシブ教育推進フォーラム

掲載日:2017年12月13日

地域と共につくるインクルーシブな学校
       -みんなで描く「私たちの学校」-

趣旨

 神奈川県教育委員会では、誰もが個性と能力を発揮し、地域で生き生きと暮らしていける共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つ、インクルーシブ教育の推進に取り組んでいます。
 インクルーシブ教育の推進に向けては、教職員だけでなく、保護者の方や地域の方と共に取り組んでいく必要があり、県民のみなさまのご理解とご協力が何より重要と考えています。
 そこで、すべての子どもを地域で支え育てていくためのネットワークづくりについて、県民のみなさまと共に考える「インクルーシブ教育推進フォーラム」を開催しました。

日時

平成29年8月23日 水曜日 13時40分から16時40分まで

会場

ヨコスカ・ベイサイド・ポケット(横須賀市本町3-27)

内容

1)趣旨説明石井指導主事
  「神奈川のインクルーシブ教育の推進」
   インクルーシブ教育推進課
   石井友紀(指導主事)

 神奈川の考えるインクルーシブ教育の推進とは、「支援教育の理念のもと、共生社会
の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つことをめざす」
ことです。
 神奈川県では、すべての子どもが共に学び共に育ちながら、能力や可能性を最大限
に伸ばし、自立し社会参加できる力を育むために、「できるだけ地域の学校で学ぶしくみづくり」「通常の学級で学ぶしくみづくり」「高校で学ぶしくみづくり」に取り組みます。
 また、これまで行われている特別支援学級や通級による指導などと併せて、連続性のある多様な学びの場を整えることにより、一人ひとりの教育的ニーズに応えることができる教育の充実も進めてまいります。
 こうした取組を通して、地域で共に生きるしくみづくりにつなげていきたいと考えています。

 学校は、さまざまな子どもたちが共に学び、共に育つ場を提供していくことが大切だと考えています。子どもたちが、学び合い、支え合う機会を多く持つことが、思いやりの心や、お互いを理解し、大切にする心を育むことにつながります。

 具体的には、小・中学校での「みんなの教室」、高校での「インクルーシブ教育実践推進校」の取組を進めています。
 「みんなの教室」モデル校では、すべての子どもにとって、今までよりもさらにわかりやすい授業づくりをしています。また、さまざまな子どもたちがかかわり合う機会を増やし、みんなが共に過ごし、育ちあう学級づくりをしています。さらに、困ったことや苦手なことがあるときには、みんなの教室を活用するなどして、一人ひとりの子どもに合わせた支援をするしくみづくりをしています。
 「インクルーシブ教育実践推進校」では、現在、校内環境の整備はもちろん、すべての生徒の教育的ニーズに対応できるように、教育課程の工夫、個別支援を含めたさまざまな指導体制づくりに取り組んでいます。また、生徒たちが将来社会で活躍できるよう、高校卒業後の進路を見据えたキャリア教育の充実も図っています。そして、最も大切なのは生徒同士や先生と生徒の相互理解と考え、3つの高校で、それぞれ講演会や体験授業が実施されています。
 現在進められている具体的な取組について、写真等も使いながら紹介させていただきました。


2)パネルディスカッション

  「地域と共につくるインクルーシブな学校
                  ―みんなで描く『わたしたちの学校』ー」

パネリスト    橋本 千里 氏(横須賀市立鴨居保育園園長)
         永松 範子 氏(岩戸大矢部学童クラブ支援員)
         小澤 長幸 氏(日本水産観光株式会社取締役社長)
         木下 秀也 氏(日本水産観光株式会社社員)
コーディネーター 鈴木 文治 氏(田園調布学園大学人間福祉学部教授)

鈴木氏
  ◀鈴木 文治 氏

 

 

 

 

 

 

橋本氏 永松氏小澤氏木下氏

 

 

 

 

 

 
                    ▲橋本 千里 氏               ▲永松 範子 氏            ▲小澤 長幸 氏            ▲木下 秀也 氏


主な内容

鈴木 文治氏:

 インクルーシブ教育推進フォーラムは、神奈川の取組を県民のみなさまに理解していただき、ご意見をうかがい、神奈川のインクルーシブ教育を共につくることを目的に開催しています。
 今までの教育の中で、普通教育と障がい児教育の間には、乗り越えられない高い壁がありました。インクルーシブ教育は、それを乗り越えるべきだと思っています。子どもたちが小さい頃から、共に学び共に育つことの重要性をしっかり見る必要があると思います。
 地域と共につくる「インクルーシブな学校づくり」に向けて、共に学び共に育つ「わたしたちの学校」のイメージを、会場のみなさんとも共有していきたいと思います。

 

橋本 千里氏:

 保育園では、3か月から就学前までのお子さんをお預かりしています。保育園はこれから小・中学校、大人になるためのはじめの部分。人とのかかわりや心などを大切に育てないといけないと感じています。
 人とのかかわりというのは、赤ちゃんの頃から始まります。乳幼児期は、身近な大人との受容的、応答的な営みが大切です。声の大きさにも配慮して、子どもたちと静かに話すようにしています。そして、子どもが何をしようとしているのか、何を思っているかを考えながら、すぐに手を出すのではなく忍耐力を持って見守っています。
 小さい頃から、共に過ごし共に育つ経験は大切です。人はそれぞれ得意や苦手なところ、生活しづらいところを抱えています。共に過ごす中で友だちに憧れたり真似したり、いろいろな思いがわきあがると思います。子どもたち一人ひとりをよく見て、対応していますが、そんな大人の姿も周囲の子どもたちはよく見ています。少し支援の必要なお子さんにも、子どもたちなりに上手に関わり、声をかけたり手をさしのべたり、手を出さなかったりと、大人に教えてくれる姿もあります。共に生活している良いところだと感じます。大人になるとどうしても頭で考えますが、子どもは一緒に過ごすことで自分の思いや友だちの思いを心で感じます。
 共に過ごすことが当たり前になるには、小さい頃からのかかわりが大事。保育園としては、子どもの持つ力をできるだけ引き出し、次の学校へつなげていくこと。共に過ごす中でたくさんの会話をし、お互いを感じあえる気持ちを育てていけたら良いと思います。
 子育ては、保育園だけでなく、保護者の方と保育園、地域の方とつながるのが1番重要だと考えています。お子さんの良いところも苦手なところも、生活しにくいところも、保護者と保育園とが理解することが大事だと感じます。保育園の様子をしっかり伝え合うことで、保護者、地域とのつながりも広がりつつ、みんなで見守る姿勢を持ちたいと思います。

 

永松 範子氏:

 岩戸大矢部学童クラブの指導員をしています。40年前に立ち上がった市内で1番古い学童クラブです。私たち学童クラブの指導員は、子どもたちが放課後を安全・安心に過ごすことを目的にしています。宿題を見ることもありますが、支援の基本は安心して放課後を過ごし、保護者が安心して働けることです。
 夏休みも開所しているため、学校よりも子どもたちが過ごす時間が長いです。子ども同士が関わる中で、トラブルもたくさんあります。協調性のある子どもばかりではなく、良いリーダーシップがとれるわけでもなく、トラブル続きです。でも、その中で学び合っていることがたくさんあります。子どもはかかわりあう中で、お互いのわがままや理解がなくてぶつかることがあります。そのとき、気持ちの橋渡しをするのが私たちの仕事です。
 先日、掃除のとき、部屋の掃除を分担された特別支援学級の4年生の男の子が、「外の掃除がいい」と言い出しました。リーダーが部屋の中と言っても聞いてくれない。そんな日が何日か続きました。いっそのこと、トラブルが起こらないよう大人が決めるのがいいのかと思いながらも、様子をみました。ある日、リーダーの男の子が「わかった」と言い、その子に「今日は外でいい、明日は部屋の中だ」と言いました。すると、その子は理解することができました。
 子どもは、子ども同士の遊びや触れあい、生のぶつかり合いの中で、この子はこういうかかわりをすればわかってくれると学んでいきます。それはとても大事なことです。
 クラブに通っている子で勉強についていけない、友達とコミュニケーションがうまく取れない子がいます。先生から叱られたり、自分のことが理解されずイライラして、学童に険しい表情で帰ってくる子どももいます。子どもによっていろいろな状況があります。通常の学級に在籍し、支援の必要な部分だけ特別支援学級で学ぶ「みんなの教室」のような取組が、自然になると良いのかなと、子どもたちの姿を見て思っています。

 

小澤 長幸氏:

 日本水産観光株式会社の取締役をしています。レストランを4店舗、横須賀で営業しており、お客様の80%は地域の方。働いている従業員も三浦半島の人です。地域の人たちと共に歩んでいきたいと思っています。
 障がい者の雇用は13年前から取り組んでおり、徐々に増えています。最初は、とりあえず障がい者を雇わなければと思って始めました。企業なので、ボランティアでは雇えない。どうやったら収益性が上がるか、いろいろ考えました。地域の子どもを応援したいと思っています。学校で過ごす時間より、社会に出て働く時間の方が長いのです。社会で、上の年代の人もいて多様な考えを持っている人がいる現場で働くことが大事です。
 今は5名の障がいのある方が正社員として働いています。一般社員と同じように立ち仕事をして、魚をさばいたり、仕込みをしたりしています。そのためには、特別支援学校の力が大きいです。最初に雇用したとき、武山養護学校に協力してもらい、ここまでなら仕事ができるという目安を出してもらいました。実際に働いてみるうちに、自分で魚をさばきたいという思いも出てきましたが、時間がかかってしまいます。両親に、このスピードだと仕事にならないと伝えたら、家で魚をさばくことを教えてくれました。特別支援学校も調理実習をやって、技術を身につけられるよう支援してくれました。3年間の学校の支援、周囲の支援があって、就職に結びついたと思います。卒業した後も、ときどき会社に来て様子を見てもらうなどの支援が、3年間受けられます。また、学校側で飲食に興味のある子がいると、その職場実習のときにも先生が来てくれるので、卒業生にも声をかけてくれます。高校でのインクルーシブ教育を進めるには、高校の努力が必要だと思います。
 保護者とのコミュニケーションも大事だと思っています。会社なので、「ここまでやらないといけない」と強く怒ることがあります。そのときは、保護者の方に「慰めてください」と伝えます。もちろん、よかったときは「褒めてください」です。一般社員も同じですが、褒めてもらうと、ストレスもなくなります。本人も、保護者の方も喜び、会社も助かるので、続けていきたいと思っています。

 

木下 秀也氏:

 日本水産観光株式会社の社員です。
 調理の仕事をしています。学校の授業で調理をして楽しかったので、調理の仕事をしようと思いました。調理の中でも、ネタの仕込みをしています。仕事は立ってやります。最初は大変でしたが、慣れました。
 会社でいっしょに働く人は、みんな明るく接してくれます。だから、会社に行くのが楽しいです。仕事をしてほめられたときは、うれしいです。

 神奈川県教育委員会では、すべての子どもができるだけ共に学び共に育つ中で、お互いを理解していくことが大切だと考えています。一人ひとりの人間性や多様な個性をお互いに認め合い、助け合うことができるインクルーシブな学校づくりが進み、共生社会の実現につながっていってほしいと思います。
 今回のフォーラムは、パネリスト、コーディネーター、そして会場全体で「インクルーシブな学校」について、考える機会とさせていただきました。

主催

神奈川県教育委員会教育局 インクルーシブ教育推進課

神奈川県

このページの所管所属は インクルーシブ教育推進課 です。