【当日の記録】平成29年度 第1回インクルーシブ教育推進フォーラム

掲載日:2017年10月30日

地域と共につくるインクルーシブな学校
       -みんなで描く「私たちの学校」-

趣旨

 神奈川県教育委員会では、誰もが個性と能力を発揮し、地域で生き生きと暮らしていける共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つ、インクルーシブ教育の推進に取り組んでいます。
 インクルーシブ教育の推進に向けては、教職員だけでなく、保護者の方や地域の方と共に取り組んでいく必要があり、県民のみなさまのご理解とご協力が何より重要と考えています。
 そこで、すべての子どもを地域で支え育てていくためのネットワークづくりについて、県民のみなさまと共に考える「インクルーシブ教育推進フォーラム」を開催しました。

日時 

平成29年7月28日 金曜日  13時40分から16時40分まで

会場

小田原市民会館 大ホール(小田原市本町1-5-12)

内容

 1)趣旨説明 趣旨説明
  「神奈川のインクルーシブ教育の推進」
    インクルーシブ教育推進課
    田中みか(グループリーダー兼指導主事)

 

 神奈川の考えるインクルーシブ教育の推進とは、 「支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つことをめざす」ことです。
 神奈川県では、すべての子どもが共に学び共に育ちながら、能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加できる力を育むために、「できるだけ地域の学校で学ぶしくみづくり」「通常の学級で学ぶしくみづくり」「高校で学ぶしくみづくり」に取り組みます。
 また、これまで行われている特別支援学級や通級による指導などと併せて、連続性のある多様な学びの場を整えることにより、一人ひとりの教育的ニーズに応えることができる教育の充実も進めてまいります。
 こうした取組を通して、地域で共に生きるしくみづくりにつなげていきたいと考えています。

 学校は、さまざまな子どもたちが共に学び、共に育つ場を提供していくことが大切だと考えています。子どもたちが、学び合い、支え合う機会を多く持つことが、思いやりの心や、お互いを理解し、大切にする心を育むことにつながります。

 具体的には、小・中学校での「みんなの教室」、高校での「インクルーシブ教育実践推進校」の取組を進めています。
 「みんなの教室」モデル校では、すべての子どもにとって、今までよりもさらにわかりやすい授業づくりをしています。また、さまざまな子どもたちがかかわり合う機会を増やし、みんなが共に過ごし、育ちあう学級づくりをしています。さらに、困ったことや苦手なことがあるときには、みんなの教室を活用するなどして、一人ひとりの子どもに合わせた支援をするしくみづくりをしています。
 「インクルーシブ教育実践推進校」では、現在、校内環境の整備はもちろん、すべての生徒の教育的ニーズに対応できるように、教育課程の工夫、個別支援を含めたさまざまな指導体制づくりに取り組んでいます。また、生徒たちが将来社会で活躍できるよう、高校卒業後の進路を見据えたキャリア教育の充実も図っています。そして、最も大切なのは生徒同士や先生と生徒の相互理解と考え、3つの高校で、それぞれ講演会や体験授業が実施されています。
 現在進められている具体的な取組について、写真等も使いながら紹介させていただきました。

2)パネルディスカッション

 「地域と共につくるインクルーシブな学校
                 ―みんなで描く『わたしたちの学校』ー」

パネリスト     岩崎 明美 氏(小田原市立矢作幼稚園副園長)
          菅原 順子 氏(特別支援教育士)
          礒野 晋作 氏(富士フイルム株式会社人事部)
イコーディネーター 滝坂 信一 氏(元帝京科学大学生命環境学部教授)

 

滝坂全員

 

 

菅原岩崎磯野
    ▲岩崎明美氏            ▲菅原順子氏             ▲磯野晋作氏

 

主な内容

滝坂 信一氏:

 国連の提案した「インクルーシブ」の概念を考えてみます。
 この会場の参加者で1つの地域社会をつくっているとします。例えば「ここはめがねをかけてない人のための場所。めがねをかけている人は、明るさ等考えた場所をここから30キロ先に作ったので、そういう人だけが集まる場所に移動してください。」…これを「エクスクルーシブな社会」「排除する社会」といいます。そうでなく、ここにいる参加者一人ひとりの希望や意向を調整し、しくみを考えた社会が「インクルーシブな社会」「共生社会」です。そこでは、誰も排除されません。
 そのような地域社会を作ろうというのが、世界的に取り組まれていることです。
 これは、人間の歴史が始まって以来、初めてのことです。つまりモデルがないので、どこかの真似をすればいいということではありません。
 重要なことは、子どもが社会を形成する、「学校」という場のあり方です。
 学校自体が排他的、排除的ならば、その中で子どもたちは学ぶので、その延長線上にインクルーシブな社会はつくれない。だから、インクルーシブな学校をつくるということは、インクルーシブな社会をつくるということです。子どもたちと取り組む必要があるということを、意識しなければなりません。
 モデルがないので、学校をつくり替える必要があります。これは行政や学校に任せるのではなく、みんなが取り組むことです。だからこそ、「みんなで描く」とか「地域と共に」とテーマにあります。皆さんと一緒に考えたいと思います。
 

岩崎 明美氏:

 小田原市には公立幼稚園が6園あり、園児が一番多いのが矢作幼稚園です。
 通園している子どもたちは、近年、様子が多様化してきていると思います。コミュニケーションがうまくとれない、集団での活動に参加できない、気持ちのコントロールが難しいなど、支援を必要とする子も増えています。また、外国からいらした方、保護者が外国の方、外国で暮らしていて幼稚園にきたという方もいます。子どもたち一人ひとりにどのように対応し、援助すればいいのか日々考えています。
 あるお子さんは、興味も知識もあるけれど、友だちや教師とのコミュニケーションがうまくとれず、気持ちのコントロールが上手にできません。ロッカーを一緒に使っている友だちが、間違えてその子のカバンを持っていってしまったとき、わざとではないと理解できず、「僕のカバンを取った」と怒って相手をたたいてしまい、大きな声で泣きました。担任が廊下の端につれていき、気持ちを落ち着かせ、泣いていては気持ちが伝わらないと泣き終わるのを待つようにして対応しました。その間友だちは、その様子を静かに見守っていました。
 子どもたちは一緒にかかわり合い、違いに気づきますが、自然に付き合い方を学んでいます。生活の中で、だんだん子どもなりにわかってくるのかなと思います。
 1クラス25~30人の子どもたちはみんなクラスの一員、支援が必要な子もみんないっしょだねと話し合って保育しています。ときには一斉の活動ができないこともあるけれど、最終的には活動に入っていっしょに楽しめるようにしたい。そのための手立てとして、廊下の隅で落ち着くのを待つなどの援助をし、少しずつクラスの仲間との生活の中で「みんなといっしょ」が増えていくようにしているところです。繰り返す中で、その子もクラスの一員として楽しさを感じるようになり、友だちも、その子にどうかかわればいいか、自然にわかってくるところがあります。
 

菅原 順子氏:

 かつての学校では、集団には居づらい少数の子が別の場で隔離される形で特殊教育を受けていたように思います。固いスーツケースに入りきらないものは削り取られ、長いものは折られ、どうしても入らないものはサブバッグに入れられていたという状況ではないでしょうか。
 インクルーシブ教育は、例えて言うと、スーツケースから風呂敷へ。丸いものは丸いまま、角ばったものもそのままで包まれ、結び目は簡単にほどける、緩やかな学校です。
 小・中学校でできる一次支援は、まずクラス全体に対し、ユニバーサルデザインの観点からすべての子どもにとってあるとよい支援を行うことです。整理整頓が苦手な子がいたら、特別にその子に対してだけではなく、クラス全体に対し、図示したり手順を示したり、ファイルにしまったり、具体的な手立てを教えてあげる。さらに大切なのは、隣の子どもが「この子は整理整頓が苦手だな」と助けてくれて、本人も整理整頓が苦手だと笑って言えるクラスを作ることです。40人学級でもそういうクラス経営ができると思います。
 二次支援として、クラスでの個別支援が行われます。5問のうち2問だけなどの部分参加や、踊ろうとしない子にラジカセ担当をさせるなどの側面参加を促します。
 次のステップが、三次支援。特別支援学級、ことばの教室などで個別支援、少人数支援が行われます。
 最初から三次支援ありき、ではなく、まずはクラスありきです。つまりピラミッドの土台の部分に、クラス全体の支援があり、真ん中にクラスの中での個別支援、その上に別の場でのニーズやレベルに合わせた個別指導があります。別の場であっても、クラスとまったく切り離された状態の指導はやりません。あくまでも給水所で、必要な飲み物をチャージして、元気に安心してクラスに戻る。
 みんな違って当たり前、自分にあった指導を受けるのが当たり前という意識で、クラスはスーツケースではなく大きな風呂敷を広げて、あたたかく待っている存在であってほしいです。
 

礒野 晋作氏:

 開成町にある富士フイルムの先進研究所の人事担当で、富士フイルム株式会社全体の障がい者雇用促進に取り組んでいます。CSR(企業の社会的責任)の観点も含め、実行段階でのマネジメントをしています。
 仕事や労働は、単に生計を立てるだけでなく、プラスアルファ、例えば自分の存在価値、意義、生きがい、頼られがいなどを、それぞれが感じ取っていくことが大事だと思っています。
 会社には、さまざまな社員がおり、各々が活躍できる場を整えるためには、互いの違いを理解して、受け止めるという気持ちが大事です。いろいろな仕事を通じて、お互い得意・不得意があって補完され、「お互いさま」と会社が成り立っているという意識が大切だと思います。
 授業におけるユニバーサルデザインという話がありましたが、会社でも、仕事の進め方、業務の手順を「見える化」して、誰にでもわかりやすい環境をつくるというのは大切です。マニュアル化や見える化は手間がかかるので大変だけど、みんなにメリットがあることを実感してもらうことがポイントです。メーカーなのでいろいろなものを作っていますが、使っていただく多様なお客様の目線に立って、やさしい、使いやすい、ということを考え仕事をしないといけないという意識は、会社全体にあります。
 会社が行う対応について、障がいのある社員がどのように思っているのか、現場の監督者や人事担当が、実際に現場の声を聞く取組もしています。
 学校に対する取組として、例えば、先進研究所に開成町の小学校の子どもたちを呼んで、研究員が理科や化学に興味をもってもらう体験をしています。また、養護学校の生徒は半年に1回就労体験実習を実施しています。富士フイルムの大きな拠点がここにあり、もしかすると、地域の方が縁あって入社し、会社の動力源となって活躍していただくかもしれません。地域との関係の中で事業をしているので、地域に根ざした会社としてお互いのよい関係づくりが大事だと思っています。


 神奈川県教育委員会では、すべての子どもができるだけ共に学び共に育つ中で、お互いを理解していくことが大切だと考えています。一人ひとりの人間性や多様な個性をお互いに認め合い、助け合うことができるインクルーシブな学校づくりが進み、共生社会の実現につながっていってほしいと思います。
 今回のフォーラムは、パネリスト、コーディネーター、そして会場全体で「インクルーシブな学校」について、考える機会とさせていただきました。

主催

神奈川県教育委員会教育局 インクルーシブ教育推進課

神奈川県

このページの所管所属は インクルーシブ教育推進課 です。