【当日の記録】平成28年度 第3回インクルーシブ教育推進フォーラム

掲載日:2016年12月21日

地域と共につくるインクルーシブな学校
ー子どもを支える地域のネットワークづくりー

趣旨

 神奈川県教育委員会では、誰もが個性と能力を発揮し、地域で生き生きと暮らしていける共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つ、インクルーシブ教育の推進に取り組んでいます。
 インクルーシブ教育の推進に向けては、教職員だけでなく、保護者の方や地域の方と共に取り組んでいく必要があり、県民のみなさまのご理解とご協力が何より重要と考えています。
 そこで、すべての子どもを地域で支え育てていくためのネットワークづくりについて、県民のみなさまと共に考える「インクルーシブ教育推進フォーラム」を開催しました。

日時

平成28年11月23日 水曜日・祝日 14時00分から16時30分まで

会場

南足柄市文化会館 大ホール(南足柄市関本415-1)

内容

1)趣旨説明
 「神奈川のインクルーシブ教育の推進」
  インクルーシブ教育推進課 田中みか(グループリーダー兼指導主事)

 第3回フォーラム 趣旨説明神奈川の考えるインクルーシブ教育の推進とは、 「支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つこ
とをめざす」ことです。
 神奈川県では、すべての子どもが共に学び共に育ちながら、能力や可能性を最
大限に伸ばし、自立し社会参加できる力を育むために、障がいのあるなしにかか
わらず、「できるだけ地域の学校で学ぶしくみづくり」「通常の学級で学ぶしく
みづくり」「高校で学ぶしくみづくり」に取り組みます。具体的には、小中学校
での「みんなの教室」、高校での「インクルーシブ教育実践推進校」の取組を
進めています。
 また、これまで行われている特別支援学級や通級による指導などと併せて、連 続性のある多様な学びの場を整えることにより、一人ひとりの教育的ニーズに応えることができる教育の充実も進めてまいります。
 こうした取組を通して、地域で共に生きるしくみづくりにつなげていきたいと考えています。

  学校は、さまざまな子どもたちが共に学び、共に育つ場を提供していくことが大切だと考えています。子どもたちが、学び合い、支え合う機会を多く持つことが、思いやりの心や、お互いを理解し、大切にする心を育むことにつながります。

  平成27年度に作成したリーフレットを使って、授業づくり・学級づくり・学校づくりの視点から、めざしていくインクルーシブな学校について、ご参加いただいた会場のみなさまも一緒に考えながら、聞いていただきました。

 フォーラムを開催した南足柄市・足柄上地域では、平成28年度から南足柄市立足柄台中学校、向田小学校、福沢小学校で、「みんなの教室」モデル事業の取組が始まっています。また、足柄高校は、インクルーシブ教育実践推進校に指定され、平成29年度からの生徒の入学に向けて、準備が進んでいます。それぞれの学校で進んでいる、授業づくり・学級づくり・学校づくりの取組について、紹介させていただきました。

 

2)パネルディスカッション
  「地域と共につくるインクルーシブな学校 ―子どもを支える地域のネットワークづくり―」

   第3回 PD(左)第3回 PD(右)

パネリスト  
    有森 恭子 氏(臨床心理士)
      礒野 晋作 氏(富士フィルム人事部)
    鈴木 尚史 氏(県立小田原養護学校卒業生・富士フィルム社員)
コーディネーター 
    鈴木 文治 氏
    (田園調布学園大学人間福祉学部心理福祉学科長・教授)

主な内容

鈴木 文治氏:
 県の教育委員会から、共生社会の実現に向けたインクルージョンの考え方、今までの支援教育を踏まえた神奈川のインクルーシブ教育の取組の説明がありました。
パネルディスカッションでは、2つのテーマについてそれぞれの立場から発言をいただきたいと思います。1つ目は「共生社会」。自己紹介をしていただきながら、すべての人が支えあう共生社会について、ご自分のお考え、取組について話してください。2つ目は、「インクルーシブな学校づくり」です。今日のテーマは「地域と共につくるインクルーシブな学校」ですが、これに向けてポイントになりそうなことは何でしょうか。
 会場のみなさまも一緒に考えていただきたいと思います。

有森 恭子氏:
 足柄地域の乳幼児健診での相談や、幼稚園・保育園、障がいのある子どもの療育施設の巡回、南足柄市内すべての小学校のスクールカウンセラーとして、子どもたちにかかわっています。
 共生社会とは、一言でいえば、その人その人の力や特性にあった社会参加のしかたであると考えます。特性や障がいによって、できることはたくさんではないかもしれないけれど、少しでも多いほうがいい。社会で働いたり、生活したりするときに役立つと思います。
 インクルーシブ教育についてですが、一緒に過ごすことは大事だと思っています。障がいのある子もない子も、1番いいところをいつも見ていてほしいと思います。でも、小さなときから、ただ一緒にするのは少し違うと感じている部分もあります。
 小学校1年生の子を例に考えると、実はさまざまな発達段階のお子さんが通常の学級にいるのが現状です。学習指導要領があり、1年間に達成する目標がある中で、例えばひらがながわからなくても1年生は終わってしまいます。大きな集団で1人の先生では難しいと思います。また、社会のなかで受け入れにくい行動はなるべく減らしていくことが、その子どもにとってもよいのではないかと考えます。そのための環境調整も必要です。その子どもにとって良い環境を用意することが大切です。
 インクルーシブ教育を進めていくには、子どものやさしさ、明るさなど、勉強以外のことを、同じように大事だと考えることが必要だと思います。1人ひとりの子どもの多様性、いろいろ良いところがあることを認めていくことが大事です。

礒野 晋作氏:
 富士フイルム株式会社で開成町にある先進研究所などの人事を担当しており、障がい者雇用を2年前から担当しています。
 共生社会については今まで考えたことがなかったのですが、富士フイルムでは、障がい者だけが固まっている職場ではなく、健常者社員と交わりながら仕事をしていくことを最終理念、理想としています。同じ環境で雇用しているというだけで共生と言えるかもしれませんが、やはり健常者と障がい者の相互理解、思いやりがなくては、表面的な共生でしかない。本当の意味での共生とは、お互いの理解、心の通うところがあるというのが理想的です。
 インクルーシブ教育について。多くの方は障がい者と一緒に働くというイメージを持てていないのが現状です。その原因については、これまでの人生の中で障がい者と接した経験が少ないということに尽きると思っています。共生できる企業の環境をつくるために、障がい者と健常者の相互理解を幼少時から形成することが大切だと思いますが、それが課題でもあります。相互に受容する姿勢をつくることは、道徳的に導かないとなかなか難しいと思います。
 障がい者の方を2年間雇用してわかってきたことは、想像以上にいろいろな仕事ができるということです。もっと職種を広げていき、障がい者の方に現場で仕事をしてもらうこと。そして、想像以上にできると思った気づきを多くの社員と共有することがこれからの大事な課題です。
 雇用するにあたって、採用してすぐに退職というのは絶対に避けたい。採用や支援について話し合うため、学校の先生や支援機関のスタッフとの連携を重視しています。先生もスタッフも、会社の担当も変わっていくので、いろいろな情報をどのように次の担当につなげるかもポイントであると考えています。

鈴木 尚史氏:
 今、富士フイルムで仕事をしています。仕事はトイレと廊下の清掃で、朝の9時から4時までです。また、実習生に教える仕事もしています。トイレをきれいにすると感謝されます。
小・中学校では支援学級に通っていました。音楽・図工・体育は、通常の学級でみんなといっしょに勉強しました。でも、あんまり友だちと話したりしませんでした。友だちがいなかったことは、楽しくなかったです。高校は養護学校に進学して、友だちがたくさんできました。
養護学校は友だちがいて楽しかったので、友だちがたくさんできる学校にしたいです。会社でも一緒に働いている仲間と、一緒に昼ご飯を食べたりして、楽しくしています。これからも、楽しく仕事をすることを大事にして頑張っていきたいです。

 神奈川県教育委員会では、障がいのあるなしにかかわらず、すべての子どもができるだけ共に学び共に育つ中で、お互いを理解していくことが大切だと考えています。一緒にいることで、障がいへの理解を深めていくことや、一人ひとりの人間性や多様な個性をお互いに認め合い、助け合うことができるインクルーシブな学校づくりが進み、共生社会の実現につながっていってほしいと思います。今回のフォーラムは、3名のパネリスト、コーディネーター、そして会場全体で「インクルーシブな学校」について、考える機会とさせていただきました。

神奈川県

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