同和問題の正しい理解のために

掲載日:2011年3月1日

神奈川県と神奈川県教育委員会が発行しているパンフレット「同和問題の正しい理解のために」を紹介します。

県民のみなさんへ

日本国憲法は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地(*1)により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」(第14条)と法の下の平等をうたっています。

しかし、現実の社会では、女性や障害者に対する差別、外国籍県民に対する差別などさまざまな差別が生じています。

なかでも、同和(*2)問題(部落差別)は、同和地区(被差別部落)出身であるというだけで、不当に差別され、社会的な不利益を受けている問題です。

この問題の解決は、国および地方公共団体の責務であると同時に、私たちみんなの課題です。ところが、いまだに「自分には関係がない」、「そっとしとけばいいのに」といった考えを持っている人が一部にあり、なかなか私たち一人ひとりの課題となっていません。ここに同和問題の解決を遅らせる大きな要因があるといえます。

私たちは、憲法に保障されている「法の下の平等」を不断の努力によって守り、“人権が守られた明るい社会”を一日も早く実現していかなければなりません。

この小冊子は、同和問題が私たち一人ひとりにとってけっして無関係ではなく、日常の生活において深いかかわりがあることを正しく理解していただくために作成しました。

平成16年(2004)年3月
神奈川県・神奈川県教育委員会

*1 門地:家柄、家格のこと。

*2 同和:同和という言葉は、昭和天皇即位の際のことば「人心これ同じく、民風これ和し」からとったといわれています。

同和問題の解決をめざして

1 人間としての当然の願い

私たちは、だれもがこの世に生を受け、たった一度の生涯を、人間として尊ばれ、愛情と信頼に満ちた温かい人間関係の中で、しあわせに暮らしたいと願っています。この願いは、自分ひとりのものにとどまらず、すべての人がいつまでも、そうあってほしいという願いです。

このような、人間として当然の願いを、日本国憲法では、侵すことのできない権利、いわゆる基本的人権として、すべての人に保障しています。

しかし、現実の社会では、こうした願いにもかかわらず、いろいろな面で、基本的人権を侵害されている人びとがいます。とりわけ、同和地区の人たちは、ただ同和地区の出身という理由だけで、差別を受け、「基本的人権」が完全に保障されていないという実態があります。


国民は、すべての基本的人権の享有(*)を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

-日本国憲法・第11条-

*享有(きょうゆう):生まれながらに持っていること。

2 同和問題とは

日本の歴史の中で、人為的に形作られてきた身分制度により、一部の人々が住居や職業、結婚などを制限される差別を受けてきました。特定の地域の出身であることやそこに住んでいることを理由に差別される我が国固有の人権問題を、同和問題といいます。

こうした身分による差別は、すでに室町時代には一部の職業の人々が差別されていたことにはじまると考えられています。江戸幕府は、武士や百姓・町人とは別な身分を制度化し、それ以前よりも強固な身分制度を確立しました。この制度の下で厳しい差別を受けていた人々は、農業を営んで年貢を納めたり、優れた技術で牛馬の皮革加工や草履・雪駄づくり、医療・医薬品製造に携わったりするなどしたほか、城や寺社の清掃、幕府や藩の役人のもとで町や村の警備を行うなどして、社会を支えてきました。また、猿楽などの古くから伝わる芸能を継承発展させて、日本文化に大きく貢献しました。


阿国歌舞伎図
阿国歌舞伎図(京都国立博物館蔵)

明治4(1871)年に「解放令」が出て江戸時代の身分制度は廃止され、それまで被差別身分とされていた人々は、制度上は多くの武士や百姓・町人とともに平民となりました。しかし、多くの人々に身分差別の意識が残っている中で、被差別身分だった人々は、身分に伴って認められていた皮革加工などの権利が否定され、経済的に厳しい状況に置かれました。そうした状況の中で、差別から解放を求める運動が各地ではじまりました。

その後、大正11(1922)年に同和地区の人びとが自らの手で全国水平社を創設し、自主的解放運動が広がっていきましたが、戦後、基本的人権を保障した日本国憲法が昭和22(1947)年に施行された後も、部落差別にかかわる事件はあとを絶ちませんでした。

この問題の解決をめざし、総理大臣の諮問機関として、同和対策審議会が設置され、昭和40(1965)年8月に「同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を解決するための基本的方策」について答申が出されました。

この答申は、「同和問題は憲法に保障された基本的人権にかかわる課題であり、その早急な解決は国の責務であり、同時に国民的課題である」として、その解決のための方策を示し、その後の同和行政の指針となっています。

この答申に基づいて、同和対策の特別措置法が昭和44(1969)年から平成14(2002)年3月まで33年間にわたり施行され、生活環境面の改善などは一定の成果をあげることができましたが、同和地区関係者への偏見や差別意識は、現在でも全てが解消された状況にあるとはいえません。


いわゆる同和問題とは、日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造(*1)に基づく差別により、日本国民の一部の集団が経済的・社会的・文化的に低位の状態におかれ、現代社会においても、なおいちじるしく基本的人権を侵害され、とくに、近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利(*2)と自由を完全に保障されていないという、もっとも深刻にして重大な社会問題である。

-同和対策審議会答申(昭和40(1965)年8月)-

*1 身分階層構造:具体的には、武士や百姓・町人その他の身分でつくられている社会の仕組みのことです。

*2 市民的権利:移動の自由、職業選択の自由、結婚の自由、教育を受ける権利などです。

3 心の差別と生活実態の差別

同和対策審議会答申では、部落差別には、「心の差別」(差別的なことばや態度で相手をさげすんだり、予断と偏見から結婚や交際をさけるなど)と「実態の差別」(就業の不安定や住宅、道路等の環境整備の立ち遅れなど)があり、こうしたふたつの面からの差別からおこる同和地区の人びとの生活の厳しさが、よりいっそう「心の差別」を広げ、それがまた生活を苦しくさせるという悪循環を繰り返してきたと指摘しています。

本県でもそうした悪循環をたち切るために、現在までさまざまな対策を講じてきました。その結果、「生活実態の差別」の解消を図る生活環境は、大きく改善するなど、着実に成果を上げてきました。しかし、「心の差別」は、解消に向けて進んでいるものの依然として存在しています。

全国的にみると、今日でも、同和問題の解決を妨げるような事態がおきています。就職試験に際して、本人の能力や適性に全く関係のない本籍地(出生地)や親の職業についての質問がなされたり、また、インターネットの電子掲示板に、同和地区の地名と侮辱的な記述が一緒に流されていたという事象もおきています。これらは、憲法の趣旨に反し、特に同和地区関係者の就職に際し、重大な影響を及ぼすだけでなく、さまざまな差別を助長する悪質な差別事象です。

また、結婚等にあたって、いまでも身元調査が見うけられます。このことは、その人の人柄などを評価するのではなく、血筋とか家柄にこだわる見方、考え方のあることを物語っています。このような見方、考え方を改めて、一人ひとりの人権が尊重された明るい社会を築く必要があります。

4 なぜ、いまも同和問題が

同和問題の解決を阻んでいる大きな要因として「予断」と「偏見」があります。予断とは、自分で勝手にこうだと決めてしまうことです。偏見とは、十分な証拠も科学的な根拠もなく、かたよった見方、考え方をすることです。

「いまの若い人たちは、合理的な考え方をするので、いずれそのうち部落差別はなくなるでしょう」ともいわれます。しかし、現実の生活をみるとき、意外に不合理な習慣やしきたりにこだわっていることがあります。同和地区に対する偏見は、根拠のない言い伝えから来ています。同和問題についての正しい理解をせず、人づてに聞いたことを信じこみ、頭から決めてかかってはいないでしょうか。

このようなことの繰り返しからおこる間違った見方、考え方が偏見なのです。同和問題が解消されないということは、ものの見方、考え方が、いまなお古くてゆがんだ考え方に左右され、それによって間違った社会意識が形づくられているということになります。部落差別を存続させている歴史的、社会的背景の問題点を正しく理解し、物事を合理的に判断し、行動していく必要があります。


様々な人権問題が生じている背景としては、人々の中に見られる同質性・均一性を重視しがちな性向や非合理的な因習的意識の存在等が挙げられている ・・・中略・・・ 「物事を合理的に判断して行動する心構えや習慣が身に付いておらず、差別意識や偏見にとらわれた言動をする」といった問題点も指摘されている。

-人権教育・啓発に関する基本計画(平成14年(2002)年3月)-

5 同和問題の解決をめざして

(1)私たち自身の課題として

部落差別をはじめとするあらゆる差別と私たち自身は、無関係ではありません。私たちは、時に差別の加害者となったり、被害者となったりする複雑なからまりの中で生活しているのが現実です。不当なあるいは不合理な差別によって「人間らしく」生きることを阻まれ、市民としての権利を奪われている人がいるとすれば、人権が保障されている社会といえません。自由で平等な社会を築き上げるのは、私たち一人ひとりの務めなのです。


(2)私たち一人ひとりの不断の努力によって

同和問題は、同和地区の人びとに限った問題だという間違った考えなどにより、私たち一人ひとりの問題になっていないのではないでしょうか。なにが差別にあたるのか、また、どうして差別になるのかがわかっていなければ、知らず知らずのうちにほかの人を傷つけてしまうこともあります。

同和問題の理解がうわべだけであり、タテマエや口先だけで差別をとらえていると、結婚など、その人自身や家族、親類にからむ身近な問題になったときにホンネがとびだすことになります。日常の生活のなかで、人の心を傷つけることばが口に出るのは、心の奥底に隠れていたホンネではないでしょうか。ホンネを変えていくことが部落差別を解決する第一歩になります。

一人の力は微々たるものかも知れませんが、理性および感性の両面から理解を深め、態度や行動に現わすことにより、周囲を変えていくことができるのも事実であり、部落差別の解消は、私たち一人ひとりの「不断の努力」によってこそ達成されるものです。その積み重ねにより、私たち一人ひとりの人権、お互いの人権が尊重される明るい社会が実現できるのです。


人権尊重の理念についての正しい理解がいまだ十分に定着していないのは、国民に、人権の意義やその重要性についての正しい知識が十分に身に付いておらず、また、日常生活の中で人権上問題のあるような出来事に接した際に、直感的にその出来事はおかしいと思う感性や、日常生活において人権への配慮がその態度や行動に現れるような人権感覚も十分に身に付いていないからであると考える。

―人権擁護推進審議会答申(平成11(1999)年7月)-

(3)行政、教育の役割

すべての国民に基本的人権の享有を保障している日本国憲法の理念等から、同和問題の解決に果たす行政と教育の役割は極めて重要です。

行政は、心の差別を解消するための啓発、生活実態の格差を是正するための住宅や道路などの生活環境を改善する事業、職業訓練に係る講習のための給付など同和地区関係者の自立支援に関する事業など、同和問題を解決するためにいろいろな施策を実施してきました。

これらの事業は、部落差別の解消をめざして、同和地区関係者の健康で文化的な生活を実現していくために行われてきました。

また、教育においては、学校教育、社会教育を通して、生涯にわたり積極的に同和問題に関する正しい理解と知識を身につけて、日常生活の中で態度や行動につながるよう、指導者の養成や指導内容・方法の研究、啓発用の冊子の作成等につとめてきました。

今後、同和問題解決の課題とされている、差別意識の解消に向けては、教育、啓発の積極的な推進とともに、県民の方々一人ひとりの理解と行動が求められています。

6 同和問題についての質問・意見から

質問1

「そっとしておけば、差別はなくなるのではないか」という人がいますが…

回答1

「そっとしておけば、差別はなくなる」という考えでは、同和問題は解決できません。

明治4(1871)年に「身分解放令」(太政官布告)が出されてから約130年、昭和22(1947)年、基本的人権の保障をうたった日本国憲法が施行されてから50年以上経過した現在でも、「差別をしてはいけない」とわかっているのに、いまだ差別が現存しています。それは、事実を正しく伝えてこなかったり、多くの人々が「できることならかかわりたくない」「傍観者でいたい」あるいは「そのうちに自然になくなるから…」などとして同和問題と向き合うことなく、避けてきたからです。その結果、偏見や間違った考えが人から人へと伝えられ、差別が繰り返されてきたのです。

私たちは、同和問題を正しく認識するとともに、一人ひとりの心の中に差別を許さない心をしっかりと育み、人権感覚豊かな生き方をすることが大切です。そして、いつも相手の立場に立って考え行動する姿勢を持ち続けることが求められます。


質問2

「同和問題は、自分には関係ない」という人がいますが…

回答2

同和問題は、同和地区に生まれたという理由だけで、根拠のない言い伝えや偏見によって差別されるという問題です。皆さんも日常生活を振り返ってみて、自分に責任のない理由で、つらい思いをしたことはありませんか。

現在、同和問題を含めてさまざまな人権問題がありますが、これらは差別される側の問題ではなく、差別する側の問題です。人権問題の解決に向けて求められているのは、自分が差別する人間にならないだけでなく、日常生活の中で差別を許さない行動をとることです。そのためには、同和問題をはじめとしたさまざまな人権問題を「自分には関係ない」と避けるのではなく、きちんと向き合っていくことが大切です。同和問題の学習をし、同和問題を正しく理解すれば、同和問題にかかわったときに差別を許さない態度をとることができます。またそれだけでなく、その学習の過程で厳しい差別の中で真剣に生きてきた人の姿にふれ、自分自身の考え方や生き方を考えることで、他の人権問題についても気づくようになります。同和問題を自分の問題として考えることは、皆さんの人生をより豊かにすることにつながっていくはずです。


質問3

「同和教育ではどのような力を育むことができるのでしょうか。」という人がいますが・・・

回答3

同和教育は、教育を通じて部落差別の解消をはかることを直接の目的としていますが、これを通じて、差別や偏見を見抜く合理的なものの見方、考え方を学び、差別や偏見を許さない実践力を育成してきました。

その結果、部落差別だけでなく、さまざまな差別を解消していくための取組みへと広がってきました。

同和教育で培った差別を許さない態度と人権感覚は、さまざまな差別を解消していくためにも活かしていくことができます。


質問4

「えせ同和行為」とはどのようなことをいいますか?

回答4

「えせ同和行為」とは、同和問題を口実にして、「同和問題はこわい問題であり、できれば避けたい」という人びとの間違った意識に乗じて、企業や官公署等に「ゆすり」「たかり」といった形で不当な利益や義務のないことを求める行為です。「えせ同和行為」は、同和問題に関する誤った意識を植えつける大きな原因となっています。


-えせ同和行為に対する具体的な対応の要点-

『基本的な態度』

● 不当な要求には、毅然たる態度で断固拒否しましょう。

● 同和問題への取組みを非難された場合には、「法務局に申し出て、今後どうすべきか法務局の処理に委ねたい」と伝え、法務局にも連絡しましょう。

● 窓口担当者のみに押しつけず、組織全体でバックアップしましょう。

● 具体的な要求を受けたときは、警察、法務局、弁護士会へ相談しましょう。

● 面談は、官公署や会社の管理の及ぶ場所で行いましょう。


『具体的な対応の要点』

● 対応者は必ず2名以上とし、幹部職員が直接対応することは差し控えましょう。

● 「上司に報告するため」などの理由を言って、できるだけ録音又は、できるだけ詳細な記録をとりましょう。

● 対応は、こわがらず、あわてず、ゆっくり丁寧にしましょう。

-出典 法務省人権擁護局発行「えせ同和行為を排除するために」-(一部抜粋)

『えせ同和行為に関する主な連絡先』

・ 横浜地方法務局人権擁護課 
   (045)641-7926
       全国共通人権相談ナビダイヤル 0570-003-110

・ 神奈川県警察本部刑事部暴力団対策課
   0120-797049 (ナクナレヨウキュウ)

・ (財)神奈川県暴力追放推進センター
   (045)201-8930 (ヤクザゼロ)
   (045)663-8930 (ヤクザゼロ)

・ 横浜弁護士会(民事介入暴力被害者救済センター)
   (045)211-7700 (総合法律相談センター)

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