更新日:2020年8月7日

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第14回県民フォーラム実施結果

第14回水源環境保全・再生かながわ県民フォーラムの概要です。

結果概要

 
日時 平成24年3月4日 日曜日 13時00分~16時00分
会場 県立相模湖交流センター
参加者 123名

主催者あいさつ
水源環境保全・再生かながわ県民会議座長 堀場勇夫

県では、水源環境の保全・再生を目的として、「施策大綱」と第1期の「実行5か年計画」を策定し、個人県民税の超過課税(水源環境保全税)を財源として、特別の対策に取り組んでいる。

第1期は今年度で終了し、来年度からは第2期の取組が実施される。第2期では、本フォーラムのテーマである相模湖・津久井湖に関係する事業として、県外上流域において水源環境保全税を活用した事業を、神奈川県と山梨県が共同して実施するなど、新たな取組が行われる。県民会議は県とともに車の両輪となって取組を推進していく。

堀場座長
主催者あいさつ 堀場座長

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基調講演「アオコが消えた諏訪湖に学ぶ」
信州大学山岳科学総合研究所教授 花里孝幸

諏訪湖では70年代からアオコが大発生していたが、その後の対策により今ではアオコが消えた。水質浄化に成功した初の事例である。

集水域から湖に流入する窒素・リンが湖を汚す要因となる。諏訪湖は湖面積13.3㎢に対し、集水域面積は532㎢と大きく、地理的に汚れやすくなる性質を持っている。相模湖も湖面積19.6㎢に対し、集水域面積は1,128㎢と圧倒的に大きく、同様の環境にある。

そもそも窒素・リンの増加はなぜ悪いのか。植物プランクトンが増殖するためには炭素を中心に色々な物質が必要になる。光合成により増殖する際にこれらの物質を取り込むが、必要な物質が不足すると増殖できなくなる。この不足する物質が窒素とリンである。しかし、富栄養化の状態では窒素・リンが供給され、さらに増殖することができる。植物プランクトンが死滅し分解される際に、酸素不足や硫化水素の発生を伴い、水は腐敗し臭くなる。

窒素とリンが湖に入らないようにすることが重要であり、そのためには集水域にある家庭や事業所からの排水が湖に入らないようにする必要がある。諏訪湖では79年に下水処理場を建設するとともに2本の導水管を敷設し、下水道の処理排水を湖に入れず天竜川に放流するようにした。下水処理場の処理排水のリンの濃度は、諏訪湖の全リン濃度の10倍以上になっているため、諏訪湖に放水してしまうと植物プランクトンが光合成により増殖し、水質悪化を引き起こす。

下水道の接続率の上昇に伴い、集水域から諏訪湖に流入する全リン量と湖水中の全リン濃度は減少し、2001年には環境基準の0.05mg/L以下を達成した。一方、アオコの発生量や湖面の透明度は下水処理場の建設以降20年ほどは大きな改善は見られなかったが、99年にアオコの発生が突然激減した。

アオコの発生量は、窒素やリンの濃度に逐一反応して変化しているわけではない。湖内には生態系のバランスが保たれていて、何らかのインパクトが起こるとこのバランスが崩れ突然環境が変化する。こうした変化をレジームシフトというが、これが99年に起こり諏訪湖のアオコは突然激減した。

諏訪湖での事例からわかるように、窒素・リンを減らす努力が必要であるが、すぐには結果が出てこない。10年・20年・30年と要するかもしれない。息の長い活動が必要である。

水質浄化による影響は必ずしも良いことばかりではない。諏訪湖でもワカサギの漁獲量の減少というマイナスの影響もある。環境問題には必ず「あちら立てればこちらが立たず」ということが起こる。諏訪湖というひとつの生態系を多くの人々が異なった目的(漁業、観光、水道水源地など)で利用しているため、望ましい諏訪湖の生態系の姿は異なる。それぞれの立場を理解し、相談し、妥協し、協力して行動する必要がある。そのためには、生態系変化の将来予測を行い、対策を立てる必要がある。

花里氏
基調講演 花里氏

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水源環境保全・再生事業の取組紹介と「第2期実行5か年計画」の説明

第1期の取組と成果をまとめたDVDの上映と、「第2期実行5か年計画」の説明を行った。

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パネルディスカッション

コーディネーター
埼玉大学大学院理工学研究科教授 淺枝 隆

パネリスト
信州大学山岳科学総合研究所教授 花里 孝幸
相模原市議会副議長 野元 好美
桂川・相模川流域協議会さがみはら地域協議会代表 有井 一雄
山梨県北都留森林組合参事 中田 無双

【ダム湖の水源環境をどのように捉えているか?】
(野元氏)
アオコの発生、ダム湖に浮かぶ流木やゴミなど、多くの課題がある。ダム湖の水源環境は私たち人間の意識や生活を映す鏡であり、これを変えることは私たちの暮らしを見つめ直すということである。
(有井氏)
相模湖・津久井湖の水源地は、上流域の山梨県にある。富栄養化の原因となる窒素・リンの多くも山梨県から流入してきたものである。
(中田氏)
相模湖に流れる水は山梨県から流れてきており、その水は山梨県の森林で育まれたものである。神奈川県民も山梨県の森林にぜひ関心を持ってもらいたい。これまで森林計画や制度など県境の壁があったが、これからは県境を越えて流域がひとつになって問題解決に取り組むべきである。
(花里氏)
下水処理場は完璧ではない。下水処理場で処理された水がアオコ発生の原因にもなる。できれば下水処理場の排水がダム湖に入らないような仕組みができると良い。

【ダム湖の水源環境に関する県の取組の成果と課題】

(野元氏)
水源環境保全税を活用した取組は、水源を意識させるカンフル剤の役割を果たしている。また、水源地域における直接的な問題の解消に大きな効果をあげている。しかし、アオコ対策には本質的な問題の解決が必要である。流域という考え方が大切であり、上流に位置する山梨県の対策が必要である。

(有井氏)
第1期の5年間における相模湖・津久井湖のアオコ対策はあまりにも不充分であった。また、エアレーション装置による対策は対症療法に過ぎない。直接浄化対策事業の効果も、相模湖・津久井湖では期待することはできない。アオコ発生の抜本的対策は県外上流域対策以外にはあり得ない。
(中田氏)
第1期での県外上流域の人工林調査結果により、約6割の森林が荒廃林であることがわかった。第2期では神奈川県と山梨県が共同して県外上流域の森林整備に取り組んでいく。山梨県でも4月から森林環境税が導入される。手入れの遅れた森林の整備について、県境を越え取り組んでいきたい。
(花里氏)
湖の環境改善のために何か実行すると、生態系が変わり、別のところで問題が生じるかもしれない。こうしたことを予測しながら、社会システムを変えていくことが必要となる。

【水源環境保全・再生への提案】
(野元氏)
流域を意識して生活することが必要である。子どもたちが流域を体感できる教育プログラムの作成、多くの人が山や水の再生に参加できる仕組みづくり、社会システムの変革が必要がある。
(有井氏)
神奈川県民が神奈川県民のために水源環境保全税を使い、県外上流域の生活排水対策として富士北麓浄化センターと桂川清流センターの高度化、高度処理型合併処理浄化槽の普及に努める必要がある。
(中田氏)
流域の森林から出てくる間伐材、流域材を積極的に消費してもらいたい。木を使うことが森を守る。木材を消費することにより持続可能な循環型社会を流域の中で作っていきたい。
(花里氏)
上流域の方々と相模湖周辺の住民の間で頻繁に話し合う機会を持ち、問題意識を共有し、お互いの立場を尊重しながら問題解決について取り組むことが大切である。

淺枝委員
コーディネーター(浅枝氏)
パネリスト
パネリスト(左から花里氏、野元氏、有井氏、中田氏)

<以上、文責は水源環境保全課。敬称略>

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このページの所管所属は環境農政局 緑政部水源環境保全課です。