神奈川県内の家畜排せつ物の処理の現状

掲載日:2011年3月1日
本格施行まであと1年
個々の経営に見合った家畜排せつ物法対応を

○管理基準の適用について

    家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(家畜排せつ物法)は、家畜排せつ物の適正な管理と、資源として有効利用を図る目的で、平成11年に制定されました。
    その中で、畜産業者は、国が定めた「管理基準」に従って、家畜排せつ物を適切に管理しなければならないとされています。
 「管理基準」のうち、すでに、処理施設の点検や維持管理等の方法については平成11年11月から、発生量や処理方法等の記録については平成14年11月から施行されています。
    さらに、平成16年11月からは、処理施設の構造設備に関する基準が適用されます。この基準では、家畜ふん等の固形物の処理施設は、床を不浸透性材料で築造し、適当な覆い及び側壁を設けること、また、液状の家畜排せつ物の処理施設も、不浸透性材料で築造した貯留槽とすること、とされています。

表1  管理基準の適用猶予期間
家畜の
種類
対象となる
飼養規模
構造
設備
基準
管理の方法基準
施設
管理
定期
点検
修繕維持
管理
記録
10頭以上
100頭以上
2,000羽以上
10頭以上
                        ○は、平成11年11月1日から適用。
                        ●は、平成14年11月1日から適用。
                        ◎は、平成16年11月1日から適用。

○家畜排せつ物処理施設の整備状況

    家畜排せつ物法の本格施行が迫る中、農林水産省では全国農業協同組合中央会等と連携して、「畜産環境整備促進特別プロジェクト」を設置し、全国の畜産農家の施設整備状況の総点検を行いました。
    総点検は全畜産農家14万6千戸のうち管理基準が適用される規模の6万6千戸(45%)を調査対象として都道府県が全戸調査したもので、このうち4万2千戸が法対応済みで、残り2万4千戸(16%)が未対応農家となっています。(図1)

全国畜産農家数  14万6千戸(100%)
法適用対象
6万6千戸
(45%)
未対応
2万4千戸(16%)
対応済
4万2千戸(29%)
法適用対象外   8万戸(55%)

 牛10頭未満         鶏2,000羽未満
豚100頭未満         馬10頭未満    
神奈川県全畜産農家数  865戸(100%)
法適用対象
629戸
(73%)
未対応
 217戸(25%)
未対応:縮小予定等
47戸(5%)
対応済  365戸(42%)
(ふん尿の全量処理
可能な農家)
法適用対象外
236戸(27%)

図1  家畜排せつ物処理施設整備への対応状況


    未対応農家についてのこの結果をふまえて工程表が発表されました。その内容は平成15年度には施設整備5,800戸、簡易対応1,800戸、平成16年度には、施設整備7,800戸、簡易対応7,900戸となっており、期限ぎりぎりの整備を考えている農家が多いこと、未対応農家の半数が簡易対応を考えていることがわかりました。(表2)


表2    施設整備実績と今後の計画
12-14年実績15年度16年度合計
全国施設整備戸数14,3005,8007,80013,600
簡易対応戸数1,5001,8007,9009,700
神奈川施設整備戸数953298130
簡易対応戸数305787
注:簡易対応には将来的な施設整備のための緊急的な対応を含む

○神奈川県の状況

    県内畜産農家、約870戸のうち管理基準が適用される農家は約630戸で、そのほとんどにあたる約600戸は何らかの施設等で家畜ふん尿の処理を行っており、施設整備に対する意識の高さが伺えました。
    主な施設としては、ふん処理では、堆肥舎、乾燥ハウスや撹拌発酵ハウス、密閉型発酵機が、尿処理では、回分式活性汚泥浄化槽、連続式活性汚泥浄化槽等の浄化処理、尿だめの利用のほか、公共下水への投入も行われています。
    ただし、十分な処理施設をもち、家畜ふん尿の「全量」処理ができる法対応済み農家は365戸(42%)であり、規模縮小・廃業予定を除いた217戸(25%)が未対応農家となっています。
    また、法対応済みの農家割合を畜種別に見ると、養豚、養鶏で9割、肉用牛で7割であるのに対し、酪農では5割に達しない状況であり、酪農家の早急な対応が必要となっています。


○経営状況にあった対応を

    家畜排せつ物法は、河川や地下水汚染などの環境問題を引きおこす恐れのある「野積み・素掘り」を解消し、家畜ふん尿が施設等の外に流出したり、直接地下浸透しないように最小限の基準を定めたものです。
    県としては、飼養頭数が多く、今後も長期間経営を存続するという場合は補助事業等を活用した堆肥舎、浄化槽等の施設整備を推奨しています。
    しかし、必ずしも立派な処理施設を整備しなくても、経営状況にあわせて、様々な対応策を工夫することで、基準をクリアすることができます。
    例えば、園芸ハウスやパイプハウスを乾燥舎として利用する、既存施設(堆肥盤やバンカーサイロ等)を堆肥舎に改修する、遊休化した堆肥舎等を有効活用することも考えられます。このほか、堆肥バックや各種シート類で簡易対応する方法(図2)もあり、県で作成したアイデア集*や畜産研究所での実証展示も参考にして、できるだけお金をかけずに対応してはいかがでしょうか。

          パンフレット「家畜ふん尿処理方法の例と各種アイデア」はこちらへ

堆肥バック
図2-1  堆肥バック
遮水シートと被覆シート
図2-2  遮水シート(土中)と
被覆シート

   
    また、この法は堆肥化を義務づけたものではなく、十分な還元畑を確保し適正な施肥量で速やかに耕うんすれば、堆肥化されていなくても、いわゆる野積み・素掘りには該当しません。地域によっては施肥スケジュールにあわせた短期的なストック方法を考えることで対応可能な場合もあります。(ただし、臭気等の苦情を避けるため、作業時間・風向きへの十分な配慮は必要。)
    さらに今後は、畜産だけで考えるのではなく、家畜ふんを遊休農地や荒廃地に施肥し、農地や緑地としてリフレッシュしたり、剪定枝や生ゴミと合わせて堆肥化するなど、地域ぐるみで有機物資源のリサイクルを考えることも大切でしょう。

○堆肥の利用拡大のために

    家畜排せつ物法のもう一つの柱は利用の促進です。施設整備と同時に、堆肥の利用の促進についても考えていかなければなりません。
    そのためには、耕種農家のニーズを把握し、品質の良い堆肥作りを心がけ、看板やチラシ、あるいはホームページ等を活用して、積極的にPRしていく必要があります。

○おわりに

    環境対策は、畜産経営を続けていく上で避けては通れない問題です。
    家畜排せつ物法の本格施行まで使える時間はあと一年です。どのような方法をとるにせよ、準備期間を考えると、今すぐにも、自分の経営に見合った具体的な対応策を決め、行動をおこす必要があります。
    ここで腰を据えて環境対策に取組み、来年の今頃、安心して法適用期限を迎えられるようにしましょう。
神奈川県

このページの所管所属は 環境農政局 農政部 畜産課 です。