あるべき男の生き方が変わった

掲載日:2017年7月14日

 男のあるべき生き方が変化しつつあります。かつては「男は仕事、女は家庭」の固定的役割分担意識があり、企業戦士となって家族を養う責任を果たすのが父親の務めでした。しかし、いまは‘イクメン’‘ケアメン’‘イクボス’で表される「新しい男の生き方」が注目される時代です。男性も育児や介護をこなし、仕事と家庭の両立に向き合うことが求められています。

 勿論、一家の大黒柱となって、粉骨砕身に働いている男性は今も沢山います。NHK総合テレビで放映していた「プロジェクトX」に登場した人物のように、家庭を顧みずモーレツに働くことを推奨する社会通念も未だに残っています。昔はよく、「会社が骨を拾ってやる」と言われたものでした。しかし、身を粉にして働いた末に過労死しても、いまどきの会社は骨を拾ってくれません。

 何のために働くのか?どのように働くのか? その答えは人それぞれであってよいのですが、「自分と家族が幸せになるために働く」に異論はないと思います。長時間労働で自分の健康を害し、家族との時間を犠牲にする働き方は、本末転倒というものです。

 私は36歳で長女が生まれたことを機に、働き方を変えました。親になるまでは仕事人間で、深夜残業する日々でした。しかし、子育てが始まってからは朝型生活に切り替え、定時帰宅するようになりました。職場で「18時に帰ります宣言」をしたのは、当時の私にとって最も重要な仕事が「娘をお風呂に入れること」になったからです。

 以前の私は仕事一辺倒の生き方で、プライベートより仕事を最優先するタイプでした。家族行事があった休日に急遽出勤する際、妻には「仕事だから仕方ない」と言い訳をしました。給料は「我慢料」と捉え、多少の不満があっても押し殺しました。そうやって会社に滅私奉公しながら定年まで勤め上げることに、特段の疑問もありませんでした。

 それが、子どもが生まれて優先順位がガラリと変わりました。価値観が転換したきっかけは、定年後の自分の姿を想像したことです。このまま「我慢料」を貰いながら働きつづけ、仮に60歳で定年を迎えたとき、24歳になっている娘から絶対に「イケてない親父」と見られるに違いない。そう思うと、いたたまれない気持ちになりました。

 定年後の自分の姿を想像したことがありますか? 20代であれば40年後、30代は30年後、40代は20年後の未来です。

 2016年のベストセラーになったビジネス書『LIFE SHIFT』では、「教育→仕事→引退という3ステージの人生は終焉した」と繰り返し主張されています。寿命が延びて人生100年時代に突入し、引退後の期間が長くなりすぎたからです。

 私たちの老後は、おそらく年金だけでは生計が成り立たず、定年後もずっと働き続けなければなりません。悠々自適な生活を願っても、よほどの資産家でない限り叶うことはないでしょう。超高齢化で介護等の社会保障費が膨大となり、高齢者になっても健康で活躍しつづけることを社会は期待しています。

 また、『LIFE SHIFT』は「定年まで同じ会社で勤めあげる働き方はリスクが高い」と述べています。社内でのみ通用する技術や人脈で仕事をしていると、定年後は世の中で通用しない市場価値の乏しい人材になってしまうからです。

 今、私は定年のない働き方をしています。複数の仕事をこなす「パラレルキャリア」で、研修講師・大学カウンセラー・市役所非常勤職員と三つの収入源があります。私はこれを「パルテノン神殿作戦」と呼んでいます。ギリシャの神殿のように柱が何本もあれば、仮に一本が倒れても建物は崩壊しません。副業を認める企業が増えており、人生を安定させるには良い流れだと思います。

 「男の100年ライフ」の観点で、働き方を見直してみませんか。仕事はもちろん重要ですが、会社で過ごす時間は20代から60代の40年程度に過ぎず、人生100年の全体からみれば半分に達しません。仕事以外のライフを充実させることが、人生全体の充実につながります。

 次号は、定年後を見越したワーク・ライフ・バランスのあり方について考えます。

(執筆:NPO法人ファザーリング・ジャパン理事 東 浩司 氏)

 

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